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13 魔騎士アリアンロッド

「彼女には遠距離からの攻撃術――【虚空刃】を食らわせて、仮死状態にしてあるわ。ふふ、反応すらできないなんて未熟ね」


 現れたのは、青い髪をツインテールにした美しい女だった。

 スラリとした長身に毛皮をまとい、手には巨大な騎乗槍(ランス)を携えている。


「威力を調整して仮死状態になるように抑えたけど、あたしがその気なら彼女は死んでいた」

「お前は」


 俺はティアを地面に横たえ、立ち上がる。


「アリアンロッド、だな?」


 状況からして間違いなさそうだ。


「俺は新たな魔王ディヴァイン。お前を我が配下として迎えに来た」


 俺は彼女に言った。


「新たな魔王……?」


 アリアンロッドが眉を寄せる。


「では、先代魔王様は崩御された? それとも跡目をあなたに譲ったということかしら」

「後者だ」


 俺はアリアンロッドに説明する。


「お前は先代魔王に仕えていたそうだな。引き続き俺に仕えてくれないか。我が軍にはお前の力が必要だ」

「お断りよ」


 即答だった。


「俺の力は、先代を超えていると自負しているが」


 ボウッ!


 俺は魔力を高め、全身にオーラをまとった。


 力がすべて、というオーソドックスな魔族の価値観を持っている奴なら、これを見て俺への服従を決めてくれるかもしれない。


 ……と思ったのだが、


「確かにあなたの魔力は異常に高いようね。だけど、あたしは先代の『力』に惹かれたわけじゃないわ」


 と、アリアンロッドは首を左右に振った。


「あの方は身寄りのないあたしを引き取り、育ててくださった。父も同然よ。だからこそ仕えたの。あなたがいくら強くても、それだけで仕える理由にはならない」

「つまり情と恩義が理由か」

「あなたには情もなければ恩義もない。仕える理由はないわ」


 アリアンロッドは淡々とした態度だ。


 仮に多額の報酬を提示したところで、この手の奴はなびかないだろう。

 メルディアのときと同様、力で屈服させるか……?


「魔王様、私が話をしてもよろしいですか?」


 ふいに声が聞こえた。


「ティア……!?」


 いつの間にか彼女が俺の側に立っている。


「【虚空刃】を避けられなかったのは、私の未熟。ですが、仮死状態ごときでいつまでも寝ている私ではありません」


 と、ティア。


「並の魔族なら永遠に目覚めないというのに……さすがに魔法防御も耐性も高いわね」


 アリアンロッドが感心したように言った。

 そんな彼女を一瞥してから、ティアが俺を見る。


「私は先代の娘です。その線から説き伏せてみたいと思います」

「分かった。やってみろ」

「はっ」


 うなずき、前に出るティア。


「アリアンロッド、確かにお前はこの方には恩義がないし、情もないだろう。だが、このディヴァイン様は父から――先代魔王ディルダイア様から、その力のすべてを受け継いだお方だ」

「ディルダイア様から……?」


 アリアンロッドが眉を寄せた。


「父が認めたのだ。次代の魔王はディヴァイン様だ、と。そしておそらく父は願っているだろう。ディヴァイン様の元にふたたび多くの幹部が集まり、この魔界を治めていくことを」

「ディルダイア様の力を継ぐ者――か」


 アリアンロッドは俺を値踏みするように見つめた。


「あなたがそう言うなら、事実なんでしょうね」


 と、うなずく。


「ではディヴァイン様、あらためておたずねします。あなたは魔王として、この魔界をどうなさりたいのですか?」


 相変わらず彼女の目は俺を値踏みしている。


 ただ、先ほどまでは『拒絶』だったのが、今は『場合によっては服従』にまで気持ちが変わってきているようだった。


 話し方からも俺への敬意が感じられるし、ティアの説明が功を奏したんだろうか。


 とはいえ、彼女が俺に忠誠を誓ったわけじゃない。


 ここからの返答次第でこいつを手駒として得られるかどうかが決まる――。


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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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