12 魔騎士の森へ
「今、話に出たアリアンロッドを俺の陣営に引き入れたい。彼女はどこにいるんだ?」
「彼女は魔王城近郊の森で鍛錬していることが多いです。先代に仕えていたときも、しばしば軍務を放棄して修行に明け暮れていたほどで……」
と、ティア。
「軍務を放棄?」
「アリアンロッドは何よりも己の武を優先します。先代魔王様に仕えていたのも、軍よりも己の修行を最優先するという条件を呑ませてのものだったとか」
「自分の力を磨くことが一番大事ということか」
「ですね。ストイックな性格で、メルディアとは正反対です」
ティアが言った。
「むむむ……ボクは真面目一辺倒より、これくらいふざけていた方がリラックス交換があると思ってるだけだもん!」
メルディアが抗弁した。
「だいたいアリアンロッドなんかと同じ訓練しても、あいつ以上にはなれないよ、きっと」
やっぱりメルディアとは馬が合わないらしい。
「その修行場はどこにある? 案内してくれ、ティア」
俺はティアに連れられ、魔王城から数キロ離れた森にやって来た。
しばらく進むと前方に半透明の壁のようなものが現れた。
「結界か」
「アリアンロッドは修行中に他者が入ってこないよう、常に結界を張っているそうです」
ティアが説明した。
「邪魔だな」
俺は結界を見据え、
「破壊するか」
「いえ、この結界はあらゆる攻撃を跳ね返す強力なものです。簡単には――」
「問題ない」
俺はティアに言った。
「魔王の攻撃を止められる結界など存在するものか」
魔力を、集中する。
体の中で練り上げ、増幅させ、瞬く間に俺の右腕に黒い光球が出現した。
「【冥帝黒導波】」
ごうっ!
俺が生み出した黒紫色の光線が結界を直撃する。
周囲にすさまじい衝撃波が吹き荒れた。
無数の閃光が千々に散らばる。
「思った以上に威力が高いな」
俺は周囲を見回し、苦笑した。
「念のために出力を抑えておいてよかった……全力で撃ったら地形が変わりそうだ」
「これほどまでとは――」
ティアは呆然と俺を見つめている。
「先代魔王様の攻撃魔法の威力をはるかに上回っています」
「じゃあ、俺には魔法の素質があるのかもしれないな」
実際、転生前は戦士が本職だったというのに、初心者同然の魔法でこれほどの威力を生み出せるとは驚きだ。
本格的に取り組めば、もっと強力な魔法だって操れるだろう。
「結界を破るとは……何者なの、あなた?」
突然、どこからか声が聞こえた。
「きゃあっ……!?」
次の瞬間、ティアが悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちる。
「ティア!?」
倒れた彼女の側にしゃがみこむ俺。
その背中が大きく裂け、血が流れ出ていた。
「息をしていない――」
ぞくりとした。
一瞬で、ティアが殺された……?
「――いや、違うな」
「そう、仮死状態よ」
茂みの向こうから誰かが歩いてきた。
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