8 圧倒的な力で魔王城に侵攻する2
俺たちは最上階に向けて進んだ。
途中、騎士や魔術師型の魔族が何度も立ちはだかったが、最初の要領で脅すと、すぐに道を空けてくれた。
魔界は『力こそすべて』の世界――その原則通り、圧倒的な力を持つ『魔王』の俺の前に、立ちはだかる者はいない。
労せずして最上階にたどり着いた。
廊下を進み、その最奥に部屋までやってくる。
巨大な扉の前で俺とティアは足を止めた。
「ここが魔王の間だな?」
「はい。扉の向こうから強大な魔力を感じます。おそらくメルディアかと」
俺の問いに答えるティア。
「メルディアはどんな魔族なんだ? 俺が奴を無力化した場合、おとなしく配下になると思うか?」
「そうですね……メルディアは基本的に『武人』です。魔界最強と謳われる剣技の持ち主で、己の実力には絶対の自信を持っています」
ティアが言った。
「ですから――ディヴァイン様に打ちのめされ、そのお力を知れば、従う可能性は十分にあります」
「なるほど……なら、基本的にはその方針で行こう」
俺は扉を開いた。
まっすぐに伸びる赤じゅうたんの先に玉座がある。
その玉座には一人の騎士が悠然と座っていた。
白銀の甲冑に長大な剣、そして髑髏の顔。
スケルトンの眷属のようだった。
「我はメルディア」
髑髏の騎士が玉座から立ち上がる。
外見のイメージとは裏腹に、そいつはおどろおどろしい声ではなく、澄んだ美しい声をしていた。
「この城の主であり、新たなる魔王である」
「お前に魔王の座を譲った覚えはないぞ、メルディア」
俺は一歩ずつ歩み寄った。
「俺に従うか、反逆者として俺に殺されるか――選べ」
「お前に従う、だと? はっ。お前からは大した強さを感じぬ」
メルディアが笑う。
「かつて我はディルダイア様に敗れた。ゆえに従った。あの方は我より強者だったからだ。だが、今――ディルダイア様はいなくなってしまった。今、この魔界でもっとも強いのは我だ」
メルディアが朗々と告げた。
「ゆえに、この我が新たな王となって魔界を統治する。単純な理屈であろう?」
「お前にとって『力がすべて』ということか?」
「当然だ。それが魔族だろう」
メルディアが吠えた。
「納得いかずば、力で来い! 我は受けて立つ」
「なるほど、そういうシンプルなのは嫌いじゃない」
俺はニヤリと笑った。
「俺の名は魔王ディヴァイン。さあ、玉座から失せろ」
「いくぞ、ディヴァインとやら!」
玉座から続く階段を降りたメルディアが、腰の剣を抜いた。
奴は見たところ剣士タイプだ。
対する俺は、人間自体は戦士だったが、今は魔法が主体の戦闘スタイル――つまり魔術師タイプといっていい。
剣士対魔術師の戦いはシンプルだ。
剣の間合いの外から、魔術師が攻撃呪文で撃ち殺すか。
剣士が魔術師の懐まで入り込み、斬り殺すか。
勝負を決めるのは――間合い。
間合いに侵入されれば、俺の負け。
侵入させなければ、俺の勝ち。
「【影の道】」
その瞬間、メルディアの足元の影が一気に伸びた。
「これは……!?」
影の先端が俺の足元に到達する。
同時に、その影の中からメルディアが現れた。
「影を使った移動術か……!」
「そういうことだ! さあ、死ね!」
俺の間合いにやすやすと侵入したメルディアが剣を振るう。
ばきんっ。
振り下ろした剣は、俺に触れる寸前で折れ飛んだ。
「えっ……!?」
メルディアが立ち尽くす。
髑髏の顔だから表情はないし、内心を読みにくいが……それでも奴が動揺していることは明らかだった。
「馬鹿な……我が剣は不滅のはず……! なぜ――」
「そもそも、だ」
俺はメルディアに淡々と説いた。
「俺とお前では魔力の桁がまったく違う。俺が無意識に垂れ流す魔力は常に防御結界を生成しているのだ。俺自身が意識しないレベルでな」
「無意識に、こんな高度な防御結界を……?」
「この結界を斬れない、ということは、つまりお前が俺にダメージを与えることは不可能ということだな」
俺はニヤリと笑った。
「こ、これが『魔王の力』――」
「じゃあな」
右手を突き出す。
奴は『不滅』のアンデッド。
「だが、その『不滅』すらも滅するのが、魔王の力……!」
ごうっ!
無詠唱で唱えた一撃が、奴を直撃した。
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