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第2話

玄関を出ると内側から鍵が閉められ、2人はエレベーターへ向かう。

 その途中で空のスマホが鳴る。


 「...もしもし」

 『もしもしー』

 「なんで電話かけて来てんの?」

 『言ったじゃん朝晩4回って』

 「あれマジだったのかよ...」

 『エール欲しいな〜』

 「はぁ...午前中おつかれさま!午後もお仕事がんばって!」

 『うん!がんばる〜!ありがと元気出た!じゃあね!』

 「おう」


 通話を切り、エレベーターに乗る。

 地下にある駐車場まで降りると香織の車に乗り、制服を販売している店へ向かう。


 「うぅ...」

 「我慢だよ〜我慢〜危ないからね〜」

 「うぃ...」


 半泣きで運転する香織を助手席で宥めながら目的の店へ行く。

 目的の店は大通りから一本入ったところにある洋風な外観の服屋だ。


 「いらっしゃいませー。お?香織さんじゃないすか。お久しぶりっす。どうしたんすか?」

 「久しぶり。今日はこの子の制服を作りに来たの」

 「え...かわいい〜!お名前なんていうの〜?ほっぺぷにぷにだ〜」


 店員の女性は中腰になって手で空を包む。


 「空だ。離せ葵」

 「は?」

 「てか早苗さんいる?制服作るから採寸して欲しいんだけど...おーい。葵ー?」


 空は葵に話しかけるが反応がない。


 「早苗さん呼んできて」

 「無理〜空から離れられないから〜」

 「はぁ...行くよー」

 「お〜」


 空と香織は手を繋いで店の奥へ向かった。

 店の奥では一人の女性が作業机に突っ伏したまま眠っていた。


 「早苗さーん...寝ちゃってら。別の店にする?」

 「大丈夫だよ〜起こすから〜」


 香織は女性の頭を思いっきり叩く。


 「っいっっった!起こし方雑!」

 「私たちが来てるのに寝てるのが悪い」

 「それでも起こし方ってもんがあるやろがい...」


 早苗は頭を押さえたまま香織を睨む。


 「そいで?何用?」

 「あんたにはこの子こ制服作って欲しいの」

 「へいへい。どこの?」

 「聖桜」

 「ほーん。じゃあキャロル家のお嬢さん関連か...え?空くんが当たんじゃなかったの?」

 「その空がこの超超超絶美少女なんだけど」


 詩織は空の顔を見て固まったが、すぐに気を取り直す。


 「まぁ、香織が変なのは昔っからだし。空くん...でいいんだよね?」

 「うん」

 「わかった。採寸するから服脱いで」


 空は下着姿になり、香織と手を離そうとしたが、許可されず、手を繋いだまま採寸をして早苗に文句を言われた。


 「5日でできるから。1週間後に来てね」

 「ん」

 「それじゃ」


 早苗が空を撫でていると香織は空を抱き寄せてからすぐに店を出ようとした。


 「独占欲強すぎじゃない?」

 「うるさい」

 「怒らないのー」

 「はーい」

 「じゃあね早苗さん。また1週間後」

 「それじゃあね空くん。香織、これ」


 早苗は香織に紙切れを渡す。


 「あ?...助かる」

 「いいって。その分追加でもらうし。さてと、さっさと作っちゃいたいから私は戻るよ」

 「うん。がんばって」

 「ありがと」


 早苗は車に乗った2人を見送ると「よし!やる気でた!」と言って店へ戻った。



 「はいあ〜ん」

 「...あー、ん」

 「えへへへ〜かわいい〜」


 カフェのテラス席で2人はケーキを食べている。

 空がチーズケーキ、香織がチョコレートケーキで、香織の要望であーんをしていた。


 「あー」

 「なにやってんの?」

 「一口ちょーだい」

 「...あーん」

 「あー、む...むふふふおいひ〜」

 「そりゃよかった」

 「食べ終わったらお洋服ね〜」

 「うん。思ったんだけどさ、詩織さんの店で買ってもよかったんじゃない?」

 「だめだよ〜今日は私が選びたいんだから〜」

 「へいへい」


 空はアイスティーに口をつける。


 「どこ買いにいくの?」

 「ん〜?希望があるの〜?」

 「いや特にないけど、ミニスカはちょっとなーって」

 「えぇ〜...絶対似合うのに〜」

 「流石に恥ずい」

 「ぶー」

 「はいはい」


 唇を尖らせる香織をあしらった空は最後の一口を食べる。


 ショッピングモールへと来るとまず、ヴァリクロというブランドの店に入り、いくつか服を購入した。


 「次のお店行こ〜」

 「まだ行くの?」

 「うん。下着に靴に色々買わないとだからね〜」

 「...そういうことなら」


 香織の言った通り、下着と靴を買ってショッピングモールから帰った。


 「ただいまー」

 「ただいま〜」

 「おかえりなさい。遅かったわね」

 「うん。靴とか下着とか色々買ったから〜」

 「そうだったの」


 開封作業をしてから服類は洗濯機に入れ、汗をかいていたこともあり空と香織は一緒に風呂に入ることにした。

 2人は体を洗い終えると湯船に浸かる。


 「はぁ〜...」

 「ん?どうしたの?」

 「んー?幸せだな〜って」


 香織は空を抱いている手に力を入れる。


 「じゃあこれから毎日幸せだね」

 「そうだね〜。えへへへ、好き〜」

 「俺もだよ」


 風呂から上がった2人はリビングにいた。

 休んでいると空のスマホが鳴る。


 「どうしたの〜?」

 「これから一緒にゲームしないかだってさ」

 「誰から〜?」

 「裕翔」

 「あー裕翔くんか〜。やるの〜?」

 「んー...やりたい気持ちもあるなーって」

 「じゃあやっていいよ〜」

 「いいの?」

 「うん〜」

 「ありがと」


 空は立ち上がり、コップに入っているお茶を飲んでからリビングを出て行った。


 「へーやーあーつーいー」


 空に香織がついてきて、空の部屋に入ると空のベッドに座り、足をパタパタさせて文句を言う。


 「エアコンつけてー」

 「はいはい」


 壁にかけてあるエアコンのリモコンを取り、電源をつけ、エアコンのリモコンを持ったまま空はゲーミングチェアに座り、PCの電源をつける。


 起動したPCでまずはじめに通話アプリを開き、マイクとイヤホンとコントローラーを繋げる。


 「よう」

 『...ひまりちゃんか?』

 「俺だよ俺、空だ。忘れたか?」

 『いや...は?』

 「薬で女なったんだ気にすんな」

 『いや気になるが』

 「気にすんなお前も女にすんぞ」

 『OKボルテックスやるか』

 「おう」


 バトルロワイヤルFPSの、ボルテックスを開き、パーティを組んでとりあえずエイム練習をする。


 「うし。やんぞ」

 『おう』


 エイム練習の終わった空と裕翔はゲームをはじめる。

 はじめて5分ほど経ったころ、香織が机の下に潜り込む、空に抱きついた。


 「うお」

 『どした?』

 「あー...いやなんでもない」


 右手をコントローラーから離し、香織の頭を撫でる。


 「なんかエッチだね」

 「そう感じてんの姉さんだけだよ」

 『敵敵敵!』

 「おけ!」


 香織の頭から手を離し、コントローラーのスティックを握る。香織は手が離れたことで不満げな顔をし、右手を引っ張る。


 「むぅ!」

 「ちょっと!」

 『どした!』

 「こっちの話!...っけ!ワンダウン!」

 『ドラウグ割りかけ!』

 「了解!」


 パーティを倒し切り、相手の物資を漁る。


 「引っ張んないで」

 「そいつぁできねぇ」

 「はぁ...」

 「んふ〜!」


 諦めて右手で香織の頭を撫でる。

 その後、回復する間もなく、2度の漁夫により2人はゲームオーバーになった。


 『ナイファイナイファイ』

 「あー...コントローラー調子悪ぃかも」

 『マジで?』

 「あん。ゲーミングマウスに変えるわ。あと水持ってくる」

 『いってら』


 マイクをミュートにして、コントローラーからゲーミングマウスに変える。


 「これで右手だけでできるようになったよ」

 「最初からやってよ〜」

 「こうなるって思ってなかったの。水取り行くよ」

 「はーい」


 2人は空の部屋から出て、ダイニングに行ってお菓子とペットボトルのお茶を2本冷蔵庫から持って部屋に帰った。


 「帰った」

 『遅かったじゃねぇか』

 「悪りぃ。菓子の選別に時間かかっちった」

 『なに食うんだ?』

 「ポテチ。あ、すまねぇエイム練習少しさせてくれ」

 『おう』

 「さんきゅ」


 少しエイム練習をしてから試合に入る。


 「っしゃおらァ!」

 『4タテナイスぅ!』


 今度は最後まで生き残り、空は雄叫びを上げた。


 「はいお茶〜」

 「ありがと」


 未だに机の下から空を抱く香織にストローの刺さったお茶をもらう。


 「暑くないの?」

 「んー...全然?」

 「無理しないでよ?」

 「あは〜妹がイケメンすぎる〜」

 『...誰と話してんだ?』

 「今姉さんに抱きしめられてゲームしてんだよ」

 『どういう状況だよ。てか話聞かれてたか?』

 「いや、話は聞こえてないと思う。裕翔がなんて話してたか聞こえてた?」

 「聞こえてないよ〜」

 「だそうだ」

 『そうか...ならよかったわ。いや、よくはねぇんだがな』

 「あ、そうだ。はいこれ。使いな」

 「わーありがと〜」


 空は机の隣にある棚に置いてあったハンディ扇風機を香織に渡す。


 『そんな仲よかったか?』

 「家では割とこんな感じぞ」

 『あー...そうなのか。勝手なイメージだけど香織先輩て誰とも馴れ合わないイメージが勝手にあるんだよな』

 「わからなくねぇわ。外だとかっこいい人って感じだもんな」

 「ん〜?おねーちゃんのこと〜?」

 「うん。姉さんのこと」

 「えへへ、ありがと〜」


 香織を撫でる空に香織はにへらという擬音が似合う笑顔を見せる。

 

 『くっ!声は百合なのに相手が空だと思うと憎しみすら湧いてくる!』

 「ふっ!ざまぁ!」

 『うぜー!てかレディー押せよ』

 「あぁ、すまん」


 その後1時間ほどゲームをやって解散となった。


 「空ー香織ー夕飯できたわよー」

 「あ、もうそんな時間か。行くよ」

 「うぃ〜」


 パソコンの電源を切って、2人は部屋を出る。


 「わーオムライスだー」

 「運んで」

 「ん」


 オムライスの乗った皿を渡され、ダイニングテーブルへ運ぶ。


 「「「いただきます」」」


 3人はオムライスに口をつける。


 「あ、そうだ。はいあーん」

 「...あー、む」

 「えへ、えへへ」

 「おかえし」

 「あー、む!むふふ」


 並んで座った空と香織は食べさせ合う。


 「本当に仲いいわね」

 「まぁ、やらないと機嫌悪くなるし」

 「なりません〜」

 「言ったね?じゃあもういいね」

 「それは違うじゃんよ〜」

 「なんで?」

 「むぅ〜....」

 「はいはい」


 香織は不満げな表情で空の方に倒れ込み、抱きつく。


 「危ないよ」

 「危なくない」

 「起きて」

 「起きない」

 「ご飯食べよ」

 「食べない」

 「あーんいる?」

 「いる」

 「それはいるんだ...はい起きて〜あーんできないよ〜」

 「ん」


 香織は起き上がり、口を開け、空がスプーンで取ったオムライスを食べさせる。


 「んふふふ」


 夕食を食べ終わり、シンクに皿を置き、空と香織は空の部屋へと戻った。

 部屋へと戻った空は机の上に置いてあるスマホを手に取った。


 スマホには一件の不在着信が入っていて、ため息をついてかけ直す。


 『そーらー!』

 「うっさ」

 『なんで出てくなかったのー!』

 「夕飯食ってたんだよ」

 『スマホ持ってってよ!』

 「へいへい」

 『言ったね?!明日もかけるからね!』

 「わーったよ。で?エール送ればいいの?」

 『うん!』

 「はぁ....夏海、今日一日お疲れ様。お夕飯食べてお風呂入ってゆっくりしよ?」

 『する!』

 「ちな夕飯なに?」

 『支給された弁当』

 「悲しいな」

 『うん...空の料理食べたい...』

 「帰ったらな」

 「長い!」


 空が通話していると香織は空からスマホを取ると通話を切り、スマホを机に伏せて置いた。


 「かまって!」

 「はいはい」


 ベッドに移動した2人は、香織の膝の中に空が収まる。


 「ちょっと昔を思い出すね」

 「ね〜」


 2人はエアコンの音、遠くの外から聞こえてくる車の音を聞きながら過ごしている。

 静かな時間を過ごしていると空のスマホが鳴った。

 2人は目配せをして、香織が腕を緩める。


 「ありがと」


 香織の腕の中から出た空はスマホを取り、電話に出る。


 「なに?」

 『おやすみもほしいな〜って』

 「おやすみだけでいいんだぁ」

 『う...うぐぅ...煽り声良すぎぃ...』

 「おやすみ夏海」


 通話を切る前にリップ音を鳴らしてから通話を切った。


 「エッチすぎだよ。夏海あっちで死んでんじゃない〜?」

 「かもね」

 「おねーちゃんにもして〜」

 「はいはい。ちゅ」

 「ん〜〜〜!」


 香織は手で顔を覆った。


 「自分からしてって言ったのに」

 「はかいりょくやば〜...」


 顔を覆う香織の横に座ってSNSを見ているとチャットが送られてきた。


 「ふっ」

 「そ〜ら〜」


 香織は空を抱きしめてベッドに横になる。そのとき香織は空のスマホの画面が目に入った。


 「わたしにもして」

 「する必要ある?」

 「夏海だけとかズルいもん!」

 「一緒に寝るだけじゃだめ?」

 「許す!」

 

 空は夏海にモーニングコールをしてほしいというチャットに了承の旨の返信をした。


 「じゃあ、もうちょっとしたら寝よっか」

 「うん!」


 その後数十分駄弁ってから2人は眠りについた。

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