ダニー君と再会した時の話。
この作品には、ヒモの様な不愉快な存在や暴力的なイジメの描写が登場します。
御注意ください。
30年ばかり前の夏の話。
ダニー君は俺より15歳位歳上で、この話の5年位前まで、俺が良く行っていたバイクショップの常連だった人物だ。
当時のダニー君は、拾ってきた家出少女達を自分の家に住ませては風呂屋で働かせる、所謂ヒモだった。
最盛期は女の子を5人程抱えてハーレーとかドカッティとか、文字通りブイブイいわしてたんだが、再会したダニー君は、なんか見事な感じに落ちぶれていた。
「あれ?もしかしてダニー君じゃないすか?
どーしたんすかこんな所で?」
「あー!俺じゃん!
お前こそ何してんのよ?」
「俺はちょっと仕事頼まれて手伝いに。
つか、ホント働いてんすか?女の子達どしたんすか?」
「いやー、ちょっと身体壊したら女みんな逃げちまってよー。
いざとなったら冷てーもんよー」
(本当は、女の子関係でトラブった時、女の子達を守らず売り渡そうとして見捨てられ、逆に家を売り飛ばされた。と、後で聞いた)
「そーなんすか」
「しょーがねーから真面目に働いてんのよー」
「そすかー」
そんな話をしてたら、倉庫の責任者A君が俺を呼びに来た。
「俺さん、打ち合わせしたいんで事務室までお願いします。
XX(ダニー君)はさっさと働け!」
A君はいかにも
こないだまでヤンチャしてましたっ!
今は更正して真面目にやってますっ!
って感じの青年だった。
「俺さん、あんなんと知り合いっスか?」
「ええ、昔同じ店の常連だったんですよ」
「アレ、クズっスよ」
「はい、良っく知ってます」
「それならいっスけど…。
ところでダニーって何スか?」
「ああ、本人にはナントカいう映画のダニーって役者がソックリって事になってますけど、
本当は彼がヒモだったから、女にたかって血を吸うダニの意味です」
いきなりA君の顔つきが変った。
「俺さん!」
「はい?」
「ダニ虐めていいっスか?」
「いいすけど、どしたの?」
「自分、ヒモとか許せないんスよ!!」
A君は、お母さんがその手の男に引っ掛かったせいで人生がハードモードになっちゃった人だった。
その後は、まあ御想像通り だ。
ダニー君がちょっとでもサボる(実際すぐサボる)とA君がツッ飛んで来て跳び膝をブチ込み罵倒する。
叱られたそばからサボるダニー君の襟首掴んで引き摺り回す。
それでもサボるのを諦めないダニー君は、炎天下倉庫前に立たされる事になった。
「いいかXX、そんなに働きたくないなら働かなくていい。
金も払ってやる。
その代わり今日1日ここに立ってろ。
一歩も動くな!」
「は、はい…」
「座るなよ!」
そしてアイスを買いに行ったダニー君は冷凍倉庫(サボると死ぬ所)に放り込まれた。
翌日、仮病(本当に風邪だったかもしれんが)で休もうとしたダニー君は、窓を割って入ってきたA君に連れられて出勤した。
朝から片足で立たされてた。
そしてその夜。
夜逃げしようとしたダニー君だったが、荷物を纏めたところをA君に急襲され、倉庫近くのプレハブに引越を余儀無くされた。
(俺がチクった)
俺の仕事はその日で一区切りしたのでその後は不明だが、半月程して倉庫に寄ったらダニー君は失踪していた。
お終い。