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久々に戻った国は、激しい傷痕が見られた。
しかし、広大な農地も、鉱山も、大学も、浄水施設も、産業エリアも、比較的被害は少なかった。
大国はそれらを奪い、そのまま使うつもりだったのが幸いしたのだろう。
城に戻ると宰相が床につかんばかりに頭を下げた。元々細身であった彼は、枯れ枝のようにやつれ、声にも張りが無かった。
短いとは言え無い戦の中、良くぞ被害を抑えてくれたものだと感謝を述べると、顔色を紙より白くし、むしろ存在感を透明にして私に謝罪した。
私からの労いでは足りないらしい。あなたがいなければ、やはりどうも上手くいかない。
私はまたも、武無き英雄との神輿に乗る事になった。終戦には象徴が必要とのことで、あなたが見つからない今、私がその神輿に乗らざるを得ない。
けれどここに、私の居場所は無かった。
後程最終話をアップします。




