第4話 その出会いは青春の序曲に
またはなびが出てきません。
これから目立つ……はず!
Steraは俺を連れて何かカラオケに入っていった。
まずSteraがフリードリンクフリータイムを注文する。
そして……
「飲み物はビールで」
「え!?」
俺はSteraの注文に驚いた。
しかし店員は気にせず注文を受け入れた。
「お前もビール飲むか?」
「いや、俺は未成年だよ!」
俺はSteraの常識外れの行動にタジタジするだけだ。
ていうか店員は目の前のこんな会話を注意しないのか?
「そんなのは分かってるよ。お前はどうするんだ?」
「分かってるのかよ!……俺はウーロン茶で」
「はい。お部屋は3番で〜す」
店員はおれとSteraを3番部屋に案内した。
「どうぞごゆっくり」
バタン
店員がいなくなるのを確認して、俺はSteraに話しかけた。
「おいお前。歳はいくつだ?」
「18だけど」
あっけらかんと答えるStera。
「いや、何普通に酒を飲んでんだよ」
「いいだろ別に。好きなんだし」
「……」
俺はそんなSteraに何も言えずにいた。
いや、正確には何も言わなかっただけかもしれない。
こういう人には何を言っても無駄っぽい。
「で、どうして俺をカラオケに連れてきた?言っておくが俺は金ないぞ」
元々俺は買い物をするために外に出た。
なので必要最低限のお金しか持ってきていない。
もちろん買い物の後なので、その必要最低限のお金もほとんどなくなっているが。
「俺が奢る。お前は奢られろ」
「……」
何か調子狂うな。
いくら多重人格とはいえ……ん?
「そういえばお前は多重人格とか言ってたな」
「ああ」
Steraは酒を飲みながら答える。
「じゃあ公園で俺はお前と出会ったことになるのか?」
「ああ。その通り」
Steraは酒を飲みほした。
そして電話で酒を追加注文する。
「多重人格ということは人格が変わるんだよな?」
「そういうことになるな」
Steraはゴソゴソポケットをいじり始めた。
「じゃあどういう時に代わるんだ?」
「ギターだよ」
「ギター?」
俺の連続質問にSteraはポケットを弄るのをいったん止めて俺の方を見た。
「つまりだな。俺はエレキギターの人格。あいつはアコギの人格だ」
「……」
よく分からなかったので。俺は無言でSteraを見る。
「……俺はエレキギターを持つと表に出てくるんだ。そして」
「ああなるほどもう一人はアコギを持つと表に出てくるんだね」
「そういうことだ」
一通り説明し終わり、Steraはポケットの中から煙草を取り出す。
そして煙草を一本、口にくわえて火をつけた。
「……未成年だよね」
俺は静かに注意しておいた。
「お前も一本どうだ?」
「華麗に流さないでください!」
俺は俺の忠告を軽く流したSteraにツッコミを入れた。
しかしSteraは突っ込まれたことをなんとも思っていないようだ。
「ふぅぅ」
そしてSteraは軽く煙を一回吐き出した。
部屋にたばこの煙が充満する。
……帰ったらもう一度シャワー浴びないとな。
「そうそう、ありがとな」
「へ?」
思考中の俺に突然感謝をしてきたStera。
もちろん俺には何の事だか分らない。
「俺の……いや、あいつの音を褒めてくれただろ」
「え?」
俺は公園での出来事を回想した。
「あ、ああ!あれか!」
「そうそう。あいつちょっとそっけない態度とってただろ?」
「いや……」
確かにそんな態度だったような……
でも口には出さない。
「だからまあ代わりに俺が感謝するわけ。あいつちょっとギター嫌いで……」
「え?」
「いやいや、何でもない」
Steraは突然言葉を濁して話を打ち切った。
「とにかく、あいつの音は俺も好きなんだよな」
何だかこの話をさっさと打ち切って欲しそうだ。
俺は会話のネタを変えることにした。
「ねえ。君ともう一人以外に人格って存在するの?」
「さあな。エレキとアコギしか持ってねえからな」
Steraはそう言いながら吸った煙草を灰皿に捨てる。
「そんなことより、せっかくカラオケに来たんだ。何か歌おうぜ」
Steraはカラオケのリモコンをいじり始める。
「お前も次何か入れろよ」
「へいへい」
俺はあまり乗り気がしなかったが、断ったら面倒くさそうだ。
だから返事はしておいた。
「じゃあ行くぜ!第一曲!」
「お飲物お持ちいたしました」
Steraが威勢良く歌おうとしていたところに店員が酒を持って部屋に入ってきた。
何と間の悪い店員か。
しかし店員はそんな空気に気付かずに気にせず自分の仕事を全うする。
「どうぞごゆっくり」
バタン
そして店員は結局マイペースに外に出て行った。
「……気を取り直して行こう!」
「もう曲始まってるけどね」
「……」
Steraがその後同じ曲を入れ直したのは言うまでもない。
「おい。もうすぐ朝なんすけど」
「あん?」
俺はSteraに忠告しておいた。
何せ現在の時刻は午前3時。
なぜこんな時間までここにいたのか?の答えはSteraである。
「お前徹カラ知らないの?」
「は!?徹カラ!?」
俺はSteraの発言に驚愕する。
だって聞いてない。
「お前明日何か用事でもあるのか?」
「そうじゃないけど、一応学生だからさ」
「あ、そうか。一般的なお前の年齢のやつは学校行ってるんだったな」
Steraは首を縦に振りながらうなずく。
ちなみにそんな彼はビールをかなり注文して飲みきっている。
相当酒に強いらしい。
ていうか……
「お前は学生じゃないの?」
「ああ。中退中退」
「あ、そうですか」
何か理由があって辞めたのだろう。
そうでなければ……成績不振……ありえる。
「ん?何だ?」
「何でもない」
何か目ざとくSteraが俺の変化に気付きそうになっていた。
何とか誤魔化したが……
「あのさ、俺もう流石に帰らないと」
俺は本心を言った。
何せ服はかなりタバコ臭い。
「ああそうだな。はい」
「え?」
Steraは帰る準備をする俺に何かを手渡した。
「これって……」
「俺のケーバンとメルアド。まあ一応もう知り合いだしな」
「あ、ああ」
俺はそれを受け取ってポケットの中にしまった。
「じゃあ」
「ああ」
こうして俺はSteraと別れた。
そしてこれから俺達の青春が始まったのである。
出会い編<完>
まだ終わりじゃないです。
次回からははなびを出し……たいです。