第3話 その少年は熱い魂を
はなび編なのにはなびが出てきません。
でもヒロインははなびです。
俺は信じられない光景を見た。
例のアコギの少年がライブハウスに入っていく瞬間を。
そして俺は引き付けられたかのようにライブハウスの中へと入っていった。
俺は例のアコギの少年を探してみたが、ライブハウスの中は随分と混んでしまっており、探せる状態ではなかった。
俺はキョロキョロ見渡すが、全然分からない。
「すいません、通してください」
俺は人混みを掻き分けて、前へと進んだ。
途中でいろいろ何かを言われたものの、俺は無視して進んだ。
すると何だか前方から音楽が聞こえはじめた。
どうやらライブが始まったようだ。
俺はライブに聞き耳を立てながら前方に目を凝らした。
すると、とあるバンドが舞台上で盛り上がっているのが見えた。
もちろんそのバンドに見覚えはない。
「今日の特別ゲストだ!」
「ん?」
そのとき、突如会場が湧いた。
何かすごい盛り上がり方だ。
「Steraだ〜〜〜〜〜〜!!」
「!?」
俺はその言葉に過敏に反応した。
確か俊哉の言っていた有名なギタリスト……
「イェーイ!盛り上がってるか〜!?」
突如舞台に派手な格好をした美少年が現れた。
俺はそれを見て気が付いた。
あれ?あの人って……アコギの少年!?
そう、そっくりだった。あのアコギの少年に。Steraが。
いくら化粧をしていても俺は分かってしまう。
「な、何で……?」
俺は首をかしげて唖然とした。
いや、待てよ。他人の空似と言うこともありうる。
俺は凝視した。
「じゃあノっていこうぜ!!」
Steraはそう言ってエレキギターを弾き始めた。
そう、彼はアコギを弾いているはずだ。
でもこの光景はどうか。
エレキギターを弾いているStera。
普通に考えて同一人物ではない。
でも同じなんだ。声が。顔が。雰囲気が。
何故かこの間とは性格が全然違うけど、俺はそう思った。
ライブが終わりかけた頃、俺ははっとした。
いつの間にか彼の音に聞き入っていたらしい。
「こんなことをしている場合じゃない!一体何が何なのか確かめなければ!」
俺は外に出てSteraを待ち伏せることにした。
「……今の俺の行動ってストーカーと大差ないよな……」
俺は自らの行動にそっとため息を吐いた。
ガチャッ
「!?」
そんなとき、突如扉の裏口が開いた。
そして男達何人かが出てきた。もちろんSteraも含めて。
「絶対俺達のバンドに入った方がいいって!」
「後悔させないからさ!」
「……」
どうやらやはりSteraは誰ともバンドを組んでいないらしい。
そして今、男達はSteraを自分達のバンドに誘っているのだろう
「だからさ……」
「違えんだよ」
「あん?」
今まで黙っていたSteraが口を初めて開いた。
「お前らとは魂の叫びが違えんだよ!」
「は?」
みんな呆気に取られているようだ。
まあ確かに言っていることが良くわからない。
「ようするにお前らのロックの魂は俺とは違うんだよ!」
「な……!!」
さすがにこの言葉にはみんな驚くようだ。
でもしかしあのミステリアスなアコギの少年の顔でそういうこと言われると少し変な感じがする。
「テメエ……ブッ殺されてえのか!?」
「ああ!?」
今度はSteraが脅迫してくる男達にガンを飛ばした。
「オラァ!」
そう言って男達はSteraに殴りかかった。
「危ない!」
俺は叫んだ。
しかしSteraは全然動揺せずに全てのパンチを空振らせた。
「何!?」
もちろん俺も驚いている。
「お前!」
「え?」
何か突然俺はSteraに呼ばれた。
「ここで殴っても正当防衛だよな?」
「あ、ああ……」
俺は突然話しかけられたことで適当に返事を返してしまった。
というかどんな質問をしてきたかも覚えていない。
「少林寺拳法をなめんじゃねえ!!」
「うがぁ!!!」
そして結局Steraは男共みんなを蹴散らした。
見たところかなり強い。
俺は今日すごい光景ばかりを見ているようだ。
「おい!」
「え?」
そして呆然としている俺にSteraが話しかけてきた。
「警察が来たときは証言を頼むぜ」
「あ、ああ……」
「じゃ、行こうぜ」
「あ、ああ……っえ!?」
俺はSteraに無意識についていこうとしていたが、すぐに意識を取り戻した。
「どうした?」
「いや、どうしたも何も……」
公園にあった少年とはいくらなんでも違いすぎる。
俺達は初対面のはずだ。
それともロッカーはみんなこんな感じなのだろうか。
「ああ。なるほど。俺はStera。お前は?」
「カイ」
「ああカイか。じゃあこれからカイって呼ぶ」
「あ、ああ……じゃなくてっ!俺達どこかで会いましたっけ?」
話を勝手に進めるSteraを止める俺。
「は?思いっきり公園であっただろ」
「え?公園?でも彼はアコギの……」
俺が思いつくのはアコギのミステリアスな美少年であって、目の前にいる人ではない。
「ああそうか。俺とは会っていないんだっけか」
「へ?」
何かおかしい口ぶりだ。
自分じゃない何かについて語っているような感じ。
「俺は多重人格者だから」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
俺は雄たけびを上げることになった。
これが俺とSteraの出会い。
そしてこれが俺とはなびの運命を変えることになることに俺は気が付かない。
更新スピードはこれが限界……