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第27話 父と娘のbeat of soul

残す山は後一つになります。

目の前には一人の男が立っていた。


「久しぶりだな。美月みつき、いや今はSteraか。そして初めまして蛟刃カイ君」


俺達はそのシャイニングラインレコードの社長と対面した。

Steraにとっては親子の再会……

これからどうなるのか全く予想できなかった。


「とりあえず座ってくれ」


社長が着席を促したので俺は座る。

Steraもしぶしぶといった感じで座った。


「それでえーと……」


「待て」


俺が何か言いかけるのをSteraが止める。

そしてSteraの目が細まる。


「アンタが俺に話をしたい理由が分からん。まずそれを話せ」


Steraがかなり強く言う。

肝が据わってるというのかなこれ。


「それはお前の兄の話だ」


「アンタが自殺に追い込んだ?」


Steraはすごく挑戦的な言い方をする。

少しだけ怖いような。


「それについては語弊がある。僕は追い込んではいない。むしろ逆だ」


「何が言いたい?」


「私は確かに彼を殴ったし、怒りを持った。でも死ねだなんて思ってない。そんなこと……妻だって望んでいない」


社長は過去を懐かしむような目をする。

それにしても俺から見るこの人はSteraの言うほど悪い人には見えない。


「私は彼に生きる道を与えた。生きて償え、そして思いっきりヒットしろ、それがお前の母が望んでいることだ、とな」


「信用できるか」


「酷いな。まあ無理もない話か。この件については置いておこう。ではこれは知ってるか?」


社長の顔が厳しい顔に変化する。


「有名レコード会社社長弁護士、ライバルレコード会社に多額の報酬を受け取る」


「何だそれ?」


そして社長はSteraにとある記事を見せた。


「これってまさか!!」


「ああ。あいつを私の弁護士が自殺に追い込んだのだ」


「どういうことだよ!?」


Steraが興奮して席を立つ。

そして詰め寄る。


「我々は嵌められたのだ。ライバルのレコード会社に」


そして彼は話し始めた。

そのことを……





その夜、僕は息子を自分の部屋に呼びつけた。

その日は自分の弁護士から信じられないことを聞いた日だった。

要約すると「息子が妻を殺したこと」だ。

私は信じなかったし、ガセネタだと思おうとした。

しかし当時の家政婦に電話した後、状況は一変。

信じるに値する内容になってしまった。

だが私はこの部分で後悔すべきことがあった。

何故彼女の恩師の元に電話しなかったのだろうか、と。

それは置いておき、まず私は息子に問い詰めた。

しかし私は大人気なく怒りがふつふつ湧き上がりとうとう生まれて初めて息子を殴ってしまったんだ。

しかし私も少しずつ落ち着いてきた。

だから私は言ったのだ。


「お前の罪は確かにある。しかし子供の頃の罪をいつまでも引き摺るのは酷な話。だからお前、絶対有名になれ。そうすれば母も喜ぶ」


「……お父さん……」


そう、私はもう何も失いたくはなかったのだ。

しかしその後、息子が忘れ物を取りに会社に向かったことが悲劇の引き金だった。

私の弁護士が息子に自殺を促したのだ。

私の弁護士は他のレコード会社と繋がっていた。

そしてこう密約したらしい。


「シャイニングラインレコードの期待の新星を潰せば大量の報酬を受け取る」


私はそれに気がつかなかった。

案の定その弁護士は大量の報酬を受け取った。

しかも殺人ではないから罪が軽い。

こんなことが許されてたまるか!?






「私は陰謀で息子を失っただけじゃない!お前までも!娘のお前までも失ったんだ!!一体私の何が悪いって言うんだ!!私が何したって言うんだ!!」


いつの間にか社長は声を張り上げて感情的になっていた。


「しかも何だ!!家政婦もグルで、実際息子はそんなことは言ってないときた!!一体どうしてこんなことになったんだ!?」


「え?お兄ちゃんはお母さんを殺してないの?じゃあお母さんは何で……」


「その次の日が私の誕生日だったからだよ」


社長が悲痛な顔で言う。

Steraもいつの間にかエレキSteraじゃない。

正直突然こんなどんでん返しのような話をされても普通は信じないが……


「信じないのならそれでいい。ただ、お前にはもう迷惑はかけない。だから……」


「……私をなめないで。何年あなたの娘をやってきたと思っているの!?お父さんは嘘はつかないって知ってるに決まってるじゃない!!」


ノーマルSteraの声が響き渡る。


「私……本当は……」


Steraの声に嗚咽が混ざる。


「美月……」


社長はそう言ってSteraの頭に手を乗せて撫でる。

そしてそっと抱きしめた。


「私の罪を許す必要は無い。ただお前に真実を知ってほしかった。お前の音は怒りと悲しみで構成されている。そんな音色をいつまでも奏でてはいけない」


「お……父さん……」


俺はそれを見て真実の親子を見たような気がした。

そして正直それが羨ましかった。

するとSteraがエレキを手に取った。


「罪を許してやる代わりに条件がある」


「条件?」


「俺と契約しろ。ただし給料は兄の分も合わせて2倍貰うからな」


「Stera……!!」


Steraは恥ずかしそうにそう言った。

俺は彼女の変化が嬉しかった。


「いいのか……?」


社長が戸惑いがちに訊く。


「だから給料は2倍って言ってるだろ」


「ああ!いいとも!2倍でも3倍でも!」


社長は喜びを隠せないようだ。

Steraと契約したことより元の親子関係に戻ったことの方が嬉しいらしい。

いい父親を持ったな……

そして今、Steraのわだかまりが全て消えていく気がした。


「カイ、お前の魂の叫びすごかったぜ」


エレキSteraが俺に向かってそう言う。

怒りの感情が消えた今、エレキSteraは消失する。


「格好いいところ、あったよ」


今度はアコギのSteraが俺に言う。

悲しみの感情が消え、アコギSteraも消失するのだ。


「お前ら……」


「今、私達は一つになる」


こうして新たなSteraが完成された。

元に戻ったわけではない。

悲しみと怒りを乗り越えた新たなSteraになったということだ。


「お前達のことは忘れないさ」


消えていくSteraたち。

そして生まれる新たなStera。

俺は今、生命の神秘、不滅の愛をこの目で見たような気がした。






――後は、俺の問題だ。








予想以上の疲労で大変です。


文章力がさらに落ちた気が……

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