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第24話 ある家族の話(後編)

前編から間を空けすぎました。

申し訳ありません。


シャイニングラインレコードの業績は相変わらず芳しくありませんでしたが、男性は幸せの絶頂期にいました。

その理由は子供達です。

子供達が自分のために頑張っていてくれているからです。

それに勇気を貰った男性は自分も精一杯の努力を行ないました。

そして長男がとうとう作曲と作詞を手がけました。

このときまだ10歳。

しかもプロレベルでした。

まあ語彙の数はやはり大人と比べて少ないものの、充分でした。

そして男性は思いました。


「長男は15歳でデビューさせよう」


そして将来子供達が音楽界で活躍する姿を想像しては笑みがこぼれます。

天国にいる妻も喜ぶだろうと思い、さらに笑みがこぼれます。

長男のギターの腕はかなりのもので、デビュー直前の自分より上でした。

ただ、まだ手が小さくて子供用ですが。

妹はよく指揮棒と兄のギターを弄っていました。

そして妹にはすごい才能がありました。

幼い頃から兄と同じレッスンを受けていたので身につけたもの。

それは絶対音感。

なのでギターのチューニングなども若干7歳ほどで完璧にこなせました。

本当に才能に溢れる子供達でした。




とある日……

男性の元にとある情報が入ってきました。

兄15歳、妹12歳で、兄のデビュー直前でした。


「何だ一体」


そう、何とそれは妻の死についての情報だったのです。

元々飛行機自体に異常が無い、本当の不慮の事故なので、妻の死の真実とか何とか考えたことなんてありませんでした。


「妻は飛行機の事故によって死んだ。それ以上でも以下でも無いだろ」


男性はいらだちます。

今更そんなことを蒸し返されても腹が立つだけです。

今はそんなことより息子のデビューの方が大切だったのです。

しかし、男性はとある紙を渡されました。

そこに書いてあったのは驚愕の事実。


「何だと……妻は元々あの飛行機で帰る予定じゃなかっただと……?」


男性は目を見開きます。

そう、そこに書いてあったのは妻が乗った飛行機と乗る予定だった飛行機が違うということでした。

つまり、妻は1日早く飛行機に乗ってしまったのです。


「じゃあ何だ?妻が元々乗る予定だった飛行機に乗っていれば死ぬことは無かったといいたいのか」


男性は情報源の弁護士を睨みつけます。

頼んだ覚えの無い仕事をやられるのはかなりの不快だったのです。

しかし弁護士はたまたまと言うだけで仕事とは言いませんでした。


「それで?それが何だって言うんだ?妻の死は運が悪かったで済まされないのか?」


苛立つ声で弁護士にそう言う男性。

しかし弁護士は臆することなく頷いた。

そして耳打ちする。


「何!?」


男性が初めて動揺する。

それもそのはず、弁護士が言った内容は信じられないものでした。


【母がいなくて駄々をこねた長男が母の帰国を早めさせた】


そう、つまり自分の息子が妻を間接的に殺したことになるのです。

もちろんそれだけで男性は信じません。

当たり前、証拠も無く、信じられるものではなかったからです。

そう、それで終わる予定だった……そう、それで。

しかし、不安になった男性は電話を掛けました。

相手は当時の家政婦さん。

なぜなら4歳が電話を掛けるなんて到底無理な話。

だから電話を掛けたのは自然と家政婦さんということになるからだ。

そして答えは……Yesだった。





男性はその日、急いで帰宅して長男を呼びました。


「お父さん、どうしたんですかいきなり」


「……お前に訊きたいことがある」


父はいつになく険しい顔で息子に言う。

それを見て息子も真剣な表情になりました。


「はい、何でしょうか?」


「お前が妻を殺したのか?」


「お母さんのことですか?」


長男は当然のように疑問を浮かべます。


「いいから答えろ!!!!」


このときの父は完全に我を忘れていました。

そう、もはや今はただの般若であったのです。


「お母さんは飛行機事故で亡くなったと聞きました。俺は何も関係ないと思うのですが」


「お前が母を早く帰国させたんだろう!!!!」


「!?」


父の怒鳴り声にさすがにビクッとする長男。

こんな父を彼は見たことがありませんでした。


「俺が……?」


「お前の当時の家政婦がそう言っていた。妻はもっと遅い便に乗る予定だったんだ!!」


「そんな……俺がそんなことを……?」


長男は泣きそうになっていました。

なぜなら今、彼は父親に母殺しと言われているのですから。


「泣きたいのはこっちだ!どう責任を取るんだ!?ええ!?」


男性の叫びは居間にも聞こえていました。

そう、居間には妹がいました。

妹は父の尋常じゃない様子に聞き耳を立ててしまいます。

すると鈍い音が聞こえるようになりました。

妹は隙間からその様子を眺めます。

すると、兄が父に殴られているのが目に見えました。

兄は抵抗する様子も無く、殴られ続けていたのです。

妹は急いで部屋に戻って泣きました。

そして、妹は二度と兄と会うことはありませんでした。

なぜなら兄は翌日、自殺したからです。





兄は遺書を書いていたようです。

遺書にはこう書いてありました。

「母殺しの罪は死んで償います。お父さん、妹を立派な音楽家にしてあげてください」

最後まで妹のことを考えた兄は立派でした。

しかし妹は別のことを考えたのです。

「あのとき父が殴らなければ兄は死ななかった」

その頃、まさか死ぬとは思っていなかった父親は放心状態でした。

そこに妹が現れました。


「この兄殺し!お前なんて一生許さない!」


妹はそう言って家を出て行きました。

父はそれを止めることはしませんでした。

そして現在、父は今も「シャイニングラインレコード」の社長をしており、妹は今この場であなたにこのお話を話しています。








……


「……」


気がつくと涙を流していた俺。

何て悲しいお話なのだろう。

悲劇が悲劇を生み、さらにとんでもない悲劇を生み、結局みんなばらばらになってしまった。


「これがシャイニングラインレコードを嫌いな理由。僕は悲しみから作られた人格。エレキの方は怒りから作られた人格なんだ」


どうやら家を出た直後に行なった精神修行の際に人格が二つ生まれたようだ。

それが人格が3つしか無い理由のようだ。


「確かにアイツは音楽家としては素晴らしい、だが親としては最低だ。確かに兄の罪は許されることではないが、自殺に追い込むのはやりすぎだ」


確かに。

一体何をすればあそこまで人を追い込むのだろう。


「……あれ?ということはシャイニングラインレコードの現社長って……」


アコギSteraはアコギを手放した。


「うん、私の父よ」


「そう……だったのか……」


これでSteraが名刺を破った理由も明らかになった。

Steraの気持ちも分からんでもない。


「エレキSteraが言うには、今はそんなことより大事なことがあるって」


ノーマルSteraが俺に向かって話す。


「何だ?」


「洞窟に入りなさい、だって」


「……は?」


俺は混乱した。

だって訳が分からん。


「あなたの最後の修行は自分を見つめなおすこと」


そう言ってノーマルSteraが歩き出した。

俺はそれに急いで付いて行く。

そしてどれくらい歩いただろうか。

ノーマルSteraは急に立ち止まった。


「この洞窟よ」


「え?」


そこにはただ一つの洞穴があるだけだった。

ここに入れ、と?


「私もここに入ったわ。エレキSteraが言うにはここで答えを見つけろ、だそうですよ」


「……」


何か少し胡散臭いのだが、俺は一応中を覗いて見た。


「真っ暗闇なんですが」


「……そういうものだわ」


「……」


何だかノーマルSteraって予想以上にノーマルではない。

俺は無言でSteraを見てそっとため息を吐いた。


「分かった。どれくらいいればいい?」


「答えが出るまで」


「……」


どうやら無期限のようだ。

俺は諦めて最後の修行に取り掛かるのであった。






???SIDE


秘密レポートNo.023


新人の反応について



まだ全然堪えていないみたい。

これはまだまだ傷を負わせる必要があると思う。

よって攻撃段階を2レベルくらい上げることをお願いいたします。

皆様のご協力をお願いいたします。



実は現在かなり苦悩しています。

思ったとおりに話が進みません。

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