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第22話 脱ぎ捨てた鎧の中を曝け出す

核心に入っていきます。

最近のSteraはおかしい。

俺と目を合わせるとすぐに外すし、会話もほとんど無い。

携帯電波は通じるので、俺は俊哉に相談することにした。


「なあ俊哉、最近Steraの様子がおかしいんだ」


「Steraが?」


久しぶり聞いた俊哉の声。

特に感慨深いことは無い。


「ああ。何か目も合わせてくれないし、いつもの覇気が無いしな」


「……お前、Steraに何かしたか?」


「俺が?特に何もしていないけどな」


俺の記憶の限りではSteraには何もしていないと思う。


「……それは難題だな」


俊哉が結構切羽詰った声で言う。

どうしてここまで親身になってくれるのか、昔は不思議だったこの感じを今は普通だと受け入れている自分がいる。

つまり、今は人に頼りすぎなのかもしれない。


「まあこの件は何とかするよ。お前はお前で頑張れ」


「何を?」


「ハハッ。何だろうな。じゃあ切るから、またな」


俺は電話を切って考えることにした。

Steraの異変について。

とりあえず一度話し合ってみる必要がありそうだ。

思い立ったが吉日、俺はSteraがいるであろう山の裏手に行くことにした。





森の奥からギターの音が聞こえる。

どうやらこの奥にSteraがいるらしい。

俺は木々を掻き分けて先に進む。

すると帽子を被った見た目男性の女性がギターを弾いていた。

もちろんその姿はSteraである。


「Stera!」


「!?」


Steraがビクッとしてこちらに顔を向ける。


「少し話したいことがあるんだけど……」


「……今日は忙しい」


Steraはそう言うとまたギターを弄り始めた。


「……」


これは絶対何かある。

そう確信した俺は構わず話し続ける。


「何で俺のことを避けてるんだよ」


「別に避けてねえよ」


といいながらSteraは目も合わせない。

ようするにいつものSteraじゃない。


「避けてるだろ!俺が悪いんだったら謝るからさ……だから頼むよ」


この取り残された感じは二度と味わいたくない。

俺の人生の中でもっとも苦い記憶が甦りそうだから。


「……!」


Steraは少し考えていたが、こっちを見て目を見開いた。


「横に跳べ!」


「はぁ?」


俺はSteraの言葉に間の抜けた返事をする。


「いいから!跳べ!」


仕方ないから左に飛ぶ。

すると俺の目に蛇が映った。


「たあっ!」


すると次の瞬間にSteraはギターを蛇に投げ付けた。


「うわっ……」


俺は身震いする。

またSteraに助けられてしまった。

なんと情けないことか……

そんな俺の目に映ったものは壊れてしまったエレキギター。

叩き付けたときに岩に当たったらしく、ポッキリと折れてしまっていた。


「あ……ギターが……ゴメン」


俺はSteraに謝った。

しかしSteraは蛇の近くまで寄っていった。


「ニホンマムシ……毒蛇ね」


「え?」


Steraの雰囲気が変わった。

何か纏っている空気が柔らかくなった。


「Stera?」


「あなたの知りたいことはこういうことだよね?」


そしてSteraは帽子を外した。

するとそこから長い銀髪が飛び出した。

その光景に俺はハッとなる。


「まさか……」


「そう。私がSteraの真の姿……です」


「え……じゃあ君が……」


「……今まで隠しててごめんなさい」


「いや……」


俺的には今までのSteraのイメージとのギャップが激しすぎて何とも言えない。

しかし問題なのは何故今、俺に自分の姿を明かしたのか、だ。


「えっと……どうして君は俺に自分の正体を明かしてくれたの?」


「私の中のもう一人……アコースティックの私が私に言ったの、もういいじゃないか、って」


「どういうこと?」


「今までの私だったら……あのときエレキギターを投げずにいたかもしれない。私、人とあまり関わりたくないから」


Steraは頑張って話している。

何というか話すること自体が久しぶりみたいだ。


「でも……そんな小さな我儘より大切なことに気がついたの。それはエレキのSteraが教えてくれた」


Steraがまっすぐ俺を見る。

曇りや淀みが一切無い目。

俺はその瞳が少し羨ましく感じた。


「何?」


「仲間……。あ!ごめんなさい!今まで正体を隠してた私なんかがそんなこと言ったらダメだよね。失礼だよね……」


「そんなことはない!俺が仲間だと思っているのは君達Stera自身だ。それに……いつか俺達の前に現れてくれると信じていたし……」


「気づいてたの?」


Steraが意外そうな目をする。

あれ?これって暗に鈍感といわれているのと変わらないんじゃ……

俺はそれに気がつかないフリをして話す。


「まあな。最近だけど。エレキもアコギも持ってないSteraってどうなのかな?って思った」


「あと……その……えーと……」


Steraがこっちをチラチラ見て挙動不審になる。

一体どうしたのだろうか。


「お、一昨日……滝で……」


「あ」


俺は一昨日のことを思い出した。

そういえば俺、ちゃんと謝っていなかったかも。


「ゴ、ゴメン!悪気は無かったんだ!」


「う、うん。悪気があったらそれは死刑だよ……」


「え……」


何かこのSteraはオドオドしている割に結構毒舌だな。


「あ、あとね……アコギを持ってきてくれる?」


どうやらもう限界のようだ。

かなり赤面している。


「あ、ああ!」


俺はSteraに言われてアコギを取りに戻ったのだった。





その後、エレキSteraがどうしてここに俺を連れてきたのかをアコギSteraが説明してくれた。

Steraははなびを送り出したのを少し後悔しているようだった。

だからその侘びとしてここに連れて来たらしい。

というか侘びになっているのか? これ。

そしてどうやらSteraもここで精神修行したことがあるようだ。

その際に人格が3つになったという。


「じゃあそれまではあのSteraだったわけ?」


「……そうだよ」


アコギSteraの言葉と音にはところどころ悲しみが含まれているのが少しだけ気になった。


「何で精神修行しようと思ったんだい……?」


「……!!」


アコギSteraの目が変わった。

あまり触れたくない部分のようだ。


「……」


「いや、やっぱりいいよ」


「……ううん。僕も乗り越えなきゃいけないから話すよ……」


そしてポツリポツリと語り始めた。

Steraが自分の過去を。







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