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第21話 そしてお約束





修業は3日目に入った。

サバイバル生活にも少しは慣れた。

しかし未だに食料は上手く確保できないのだが。

そしてSteraはまたエレキを所持している。


「おい。何でエレキを持ってきているんだ?」


「練習するため」


「へ?」


そういうとSteraはアンプを荷物の中から取り出した。

おい、おまえの荷物には何が入っているんだよ。

しかも多すぎだし。


「ていうかアンプの電源はどうすんだよ!?」


「ああ。これはバッテリー式だから」


「あ、そうなのか……」


思えばこいつはどこでも音楽の練習をしているな。

やっぱり音楽を愛しているんだな。

俺はそんなことを思った。


「じゃあ俺は少し山に入るよ」


「気をつけろよ」


「ああ」


今度はヘマはしない。

俺はそう誓うと山の中へ入って行った。





相変わらず食料は上手くとれないが、それでも努力が実って少しずつ入るようになった。


「……」


「なんだよ」


Steraが俺の顔をジッと見ていた。


「いや、こんな奴のどこがいいのかと思っただけ」


「はぁ?」


なんだか知らんが馬鹿にされている気分がした。

だが気にしないようにして俺は目の前の焼き魚を食した。


「そろそろ……次の段階に進むとするか」


「え?」


「この山の裏側にな、松茸が生えているんだ」


「ま、マツタケェェェェェ!?」


俺は驚愕した。

でもそこまでのものじゃないと思う。山だし。秋だし。


「それをお前が取りに行くんだ」


「い、行くぜ!俺は行くぜ!」


食べ物につられて俄然やる気がみなぎってくる。

そういえば独り暮らししてからマツタケなんて全然食べてない。

ああ……考えるだけでお腹が減ってくる……


「おっと忘れるなよ。ここは山だ。毒キノコも生えているぞ」


「へ?」


「だからサンプルとしてこれを持って行け」


そう言って松茸を一つ俺に渡した。

まさか昨日のうちに取ってきたのだろうか。


「と、いうわけで頑張れよ」


「おう!」


俺は駆け足で山の裏へと行った。


「……」


Steraは俺がいなくなったのを確認して携帯を見る。

そしてどこかへと電話をかけた。





マツタケ探しはかなり困難だった。

山の裏手は予想以上に広く、身も心も弱っていた。

そんな俺を駆り立てているのはひとえに食欲だけ。

何せマツタケだ。

頑張らないほうがおかしいだろう。

俺はすでにマツタケの香りを、感触を、味を想像している。

なのに実物にお目にかかれないというこのお預け感。

非常に不愉快極まりない。

だが俺は諦めない。

たとえ些細なことでも諦めちゃいけないんだ……!


「俺はやる!やってやる!」


決意を新たにした俺はさらに奥深くまで入り込む。

もう何度も見た森という風景がさらに広がる。

そして目の前で行われている食物連鎖。

これも何度も見た光景。

自然界では強きものが生き残る弱肉強食の世界。

そのような体験すべてが俺の心にインプットされていった。

そして自分でも気付かぬうちに俺は、逞しくなっていったのだった……





その日の夜、俺は寝付くことができずにいた。

もちろん今日食べたマツタケのせいではないと思いたい。

まあその興奮もあるかもしれないが。

俺は寝付けないので水浴びしに滝へと向かった。





「はぁ……」


「ん?」


滝の近くまでやってくると何か声が聞こえた。

誰かこんな場所に来てるのかな?

人のこと言えないけど。

俺はそっと近づいてみた。


「ふう……」


滝の中に確かに人がいた。

しかしまだよくわからない。

純粋な興味が俺を突き動かしていた。


「やっぱり今は冷たいなぁ……」


この声を察するにまさか……女!?

俺は足を止めようとする。

でもまだ女だと決まったわけじゃ……

しかし俺が目を凝らしてみた姿はまごうことなき美しい女性……いや、美少女だった。

しかも水浴びの最中なので裸。

流れるような長い銀髪が特徴的だった。

ていうか俺の行為は単なる覗きじゃね!?

そのことに気がついた俺は急いで元来た道を戻ろうとする。

しかしお約束というのは必ずあるもので……


ガサッ


「誰!?」


つい大きな足音を立ててしまった俺と美少女の視線が合う。

俺は純粋に綺麗だなとか思っていたが、美少女の顔が徐々に赤くなっていくことに気づく。

そして重大なことに気が付く。


「こ、これはごか……」


「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」


「す、すいませーーーーん!!!!」


美少女の大声に俺は急いで元来た道を戻って行った。

結局誤解も解けずに……ん?誤解か?

少し疑問だが。

しかし結局彼女がどうしてここにいるのか分からずじまい。

少女一人でこんな所にいたら危ないだろうに。

俺は駆け足でテントに戻る。

そして寝袋に戻る。

……少女の裸体がちらついて当分眠れそうにない。

結局俺が寝たのは少し空が明るくなってからだった。





朝起きると俺はとある異変に気づいた。

空が妙に明るいのだ。

確かに俺が寝たのは遅かったけど、Steraが起こしてくれるのでそんなに遅い時間にならないはずだ。

俺は寝坊でもしてるのかな?と思ったので、Steraのテントの前までやってきた。


「Stera!いるか?返事しないと入るぞ〜」


しかし返事がない。

仕方ないので俺はSteraのテントの中に入ることにした。


「おーい。もう朝だぞーって……いない?」


そこには寝袋一つあっただけでSteraの存在はなかった。

どうやらもう起床はしているらしい。


「……俺のことを起こさなかったのか?」


俺はそんなことを考えながらテントから出た。

一応Steraを探さなければいけない。

そんな俺にあるものが飛び込んできた。


「これは……」


「それ」は俺宛の手紙だった。

なぜかおれのテントに張り付けられている。


「Steraからか」


俺は手紙の内容を読むことにした。

何々……今日は山奥で一人でギターの練習をするから一人で頑張れ……


「ええええええ!?」


なんか知らないがSteraは今日、俺と会う気がないようだ。

でもまあギターの練習なら仕方ないか……とも考えた。

俺は気楽に考え、伸びをしてかなり遅い朝飯を作ることにする。

が、もちろん材料はないので現地調達だ。


「昨日置いておけばよかった。飯」


誰もいないせいか、独り言が多くなる。

そして俺は腹ペコの状態で川に行く。

川魚のヤマメなどが俺の狙いである。

まあそう上手くいかないのが人生だ。

……ちょっと悟ってみた。





俺は精神修行をはじめとする様々な修行を積み重ねた。

そうして夜になった。

そのとき、Steraが帰ってきた。


「よう。練習ははかどったか?」


俺は軽くSteraに挨拶してみた。

しかしSteraはこっちをチラッと見たかと思うとすぐに視線を逸らした。

何か様子がおかしい。


「どうした?何かあったのか?」


「……今日は疲れたから寝る」


Steraにしては妙にボソボソしたしゃべり方だった。

何か変だ。

しかし俺は敢えて詮索はせずに「おやすみ」と言っておいた。

返事は無かったが。










―???のレポート―


秘密レポートNo.021


最近入ってきた新入りについて



顔がいい。

才能がある。

会社からの全面的バックアップ。


以上3点が今回の議題。


これについて私は何かしらの行動を起こしたい。

同志を募る。

諸君らの参加を心待ちにしている。




















     








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