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第20話 そして始まるサバイバル!

久しぶりの2話連続更新です。


ザー……

ザバー……

ザバザバーーー……

ザッバーン!!


「うわああ!!」


俺は滝に打たれていた。

理由はもちろん先日の精神修行の話だ。




「……今のお前に必要なのは音楽の才能でも練習でも無いな」


「はあ?」


突然Steraが謎なことを言う。


「お前に必要なのは……精神修行だ!!」


「……え?」


俺は首をかしげる。


「いや、だから精神修行」


「そりゃそうだけど!一体何でだよ!」


俺は突拍子も無いSteraの発言に突っ込む。


「お前は精神が脆すぎる!そんなんで音楽なんて出来るかっ!!」


Steraが熱く語り始めた。

こうなったらもう誰にも止められない。

先ほどから空気化していた俊哉は優雅にお茶なんて啜っている。

しかもメイドの桜子さんとほのぼのと談笑なんてしている。


「オイ!話を聞いているのか!?」


「分かった分かったよ!それで具体的なことを話してくれるか?」


「そうだな……」


Steraが少し考える仕草をする。

おいおいまさか何も考えていなかったとかは止めてくれよ。


「おっ!」


何かを閃いたようだ。

しかし少しだけ心配でもある。


「あそこにすれば……そうするか」


なにやらブツブツ呟いている。


「まあ死にはしないだろうしな……」


今何か不穏な単語が聞こえたのですが。

気のせいっすよね?

誰に話しかけてるかなんて知らないけど、言いたくなった。


「よし決めた!俊哉!しばらく音楽活動は中止な!」


「え?」


どうやら俊哉は何も聞いていなかったようで、はてなマークを頭に浮かべていた。


「ちょっとカイを連れて旅に出る」


「旅か……って旅ぃぃぃぃぃぃぃ!?」


俺は絶叫した。

何だよ旅って。

意味分かんねえし!

学校もあるし!


「そうか。じゃあ頑張ってくれよ」


俊哉は右手を軽くヒラヒラと振る。

ってお前も平然と見送るな〜〜〜〜〜!!


「学校はどうすんだよ!」


「そんなの生徒会長さんに何とかしてもらえよ」


「他人事だと思って!さや先輩を説得するの大変なんだぞ!しかも何かされることを覚悟しなきゃいけないんだぞ!!」


「そんなの知るか」


勝手なSteraの言い分にそっとため息を吐く。

気持ちは察してくれよ。


「じゃ早速明日な」


「ちょっ!明日から学校だっつうの!!」


「じゃあ今から生徒会長さんに電話しろ」


「勝手な奴め……」


しかし結局俺は携帯電話でさや先輩の携帯にコールした。







「さて、行こうぜ!」


翌日の早朝、いつもの帽子をかぶったボーイッシュな格好のSteraが元気よく言った。

俺は全然元気が無い。


「……お前、元気だな」


「お前は元気じゃないのか?」


「そんな訳無いだろ!勝手に予定を決められ!さや先輩に頼んで出席停止にしてもらったり!バイト先には土下座して頼んで休みにしてもらったり!挙句の果ては泣きながら引き止めた姉さんを強引に説得してきたんだぞ!しかもさや先輩からは次会うときは楽しみに待ってなさいって言われるし!」


「いいじゃないか。楽しめよ」


「楽しめるか!!」


Steraはさや先輩のことをよく知らないからそんなことが言えるのだ。

まず生徒会メンバー全員のお土産を買わされるだろう、そしてさや先輩のパシリを多分任期終了までやらされるだろう。


「うわああああああ!憂鬱で死にそうだ……」


俺がそんなことを言っている間にもSteraは先を歩く。


「ていうかどこに行くんだよ!?いつ帰るんだよ!?」


「う〜ん……一応生存可能な場所だ。多分1週間経てば帰れるだろう」


「はああああああああ!?」


俺は元気が無い割りにテンションが高かった。

いや、高くないとやっていけないのかな?


「とりあえず電車に乗るぞ」


どうやら移動手段は電車のようで、俺はSteraに付いていって「光芒町」駅に入った。


「あ、そういえばお前、お金持ってきたか?」


突然Steraが俺を振り返る。


「まあな」


一応どこ行くのか分からないので、お金は多めに持ってきた。


「そうか」


そしてSteraは一番高い切符を買って……


「ええ!?お前はどこに行くつもりだよ!?」


「山だよ」


「アバウトすぎだろ!」


しかし俺もSteraと同じ切符を買って、改札に入った。


「……もう好きにしてくれ」





結局俺はこの後に乗り換え乗り換え……バス乗車……そして歩き……

などを繰り返していたら、すっかりもう山まで来た。

しかも夕方。

もうすぐ夕飯の時間だ。

しかしまあ何となく嫌な予感がする。

まあその予感は当たりそうだ。


「なあStera。一応訊くが、夕飯はどうするんだ?」


「そこらへんにあるものとかを適当に」


「……やっぱりか」


サバイバル生活なんてしたことがない俺にとってはきつい修行になりそうだ。

というかこの人はやっぱり常人の思考とはかけ離れている。


「はぁ……でも何だかんだで付いて来た俺も普通じゃないか……」


「何か言ったか?」


「何も」


俺は暗くなる前に食材確保をするべきと思ったので、山奥に向かおうとした。


「おっといい忘れていたが、熊や蛇が出るから気をつけろよ。だからかならずここのテントの周りで料理や洗濯をしろよ」


一応旅すると聞いていたので、着替えとテント、寝袋を持ってきた。

まあそれは正しい判断であったようだ。


「……分かった」


幸い、川の近くにテントを張ってあるので、水には困らなそうだ。

俺は警戒しながら山奥へと向かった。




「……ってどれが食べれて、どれが食べられないのか分からねえじゃねえか!!」


俺は雄たけびを上げる。

無理もない。

何せサバイバルは初めてだから。

ていうかSteraのアドバイスなしだと何も分からない。


「とりあえずキノコは危なそうだから避けて……」


俺はそこらへんに生えている雑草を見る。

どれもこれも心配で食べれそうにない。


「……魚を釣るか!」


俺は急いで元来た道を引き返してSteraの元に向かう。

そのとき、後からカサカサ音がする。


「何だ?」


俺は後ろを振り返る。

そして俺は熊と目が合った。


「……」


「……」


黙り込む俺達。

というか俺は足がすくんでいる。

正直逃げられないだろう。


「ガアアア!」


するといきなり熊は吠えて俺に襲い掛かり始めた。


「!!」


俺は死を覚悟する。

油断していた。

警戒心が足りなかった。

後悔なんて死ぬほど残っている。

俺は自然と頭の中にはなびの笑顔を浮かべた。


「危ねえ!!!」


しかし突然隣から声がする。

Steraだ。

Steraは勢いに任せて跳び蹴りを熊にかます。


「ガアアア!!!」


熊は吠えながら倒れる。

さすが少林寺拳法。

しかも熊は起き上がる気配が無い。

相当の威力だったようだ。


「ふう……」


Steraは額の汗を拭う。

そしてこっちを見る。


「危なかったな」


「あ、ああ。ありがとう。お前がいなかったら俺は今頃死んでたよ。本当にありがとう」


「……ま、これもいい経験だ。かくいう俺もここで死に掛けたしな」


「ここってお前が昔精神修行した場所なのか?」


「ああ」


俺の質問にSteraが首を縦に振って答える。

どうやらSteraの武術は少林寺+野生のようだ。

まあこのSteraだから戦う姿はそこそこ似合うが、アコギのSteraが戦う姿は想像できないな……

俺はSteraを見る。


「何だよ」


「いや……」


「お前は魚でも釣っていろ」


「そうする」


俺は山奥に行くSteraとは対照的に川に向かうことにする。

それにしてもどうしてSteraは精神修行なんてしたのだろうか。

う〜ん……気になる。

俺はそんなことを考えながら川に向かったのだった。




もう完全に日が落ちた。

魚は少ししか釣れなかったので、Steraに食料を分けてもらった。

そして今日お世話になった……命を救ってくれた恩返しの一つとして手料理を振舞った。

Steraはまあまあ満足したらしく、機嫌がよかった。


「じゃあさっそく本題だな」


「ひょ?」


俺はつい変な声を出してしまった。


「精神修行といったら一つしかないだろ」


「……まさか」


「そのまさかだ!精神修行といったら……滝だろ!!」


「……もう何でもありなんすね」


俺は特に驚かずにSteraについていくことにした。

そして今に至るわけである。




「……冷たい」


もう9月が終わって10月になろうとしている。

つまりもうすぐ冬なのだ。

夏に水浴びはさぞ楽しいであろうが、一応そろそろ肌寒くなっていく頃だ。

Steraはどっか行く、と言ったきり戻ってこないし。

そういえばSteraはどんなときもエレキギターを持ち歩いていた。

……ん?

何でSteraはギターを持ち歩いてんだ。

そもそも俺は何か勘違いをしているみたいだ。

エレキのSteraとアコギのStera。

どちらもSteraであることに変わりはないのであるが、特別な条件が必要なのだ。

そう、エレキギターを持つと、エレキSteraになり、アコースティックギターを持つと、アコギSteraになる。

なら本当のSteraはどっちだ?

いや、俺が言いたいのはそういうことじゃない。

ギターも何も持たない真のSteraがいる。

俺が知らないだけで必ずいる。

そう、俺はそのSteraに未だに会ったことがない。

極度の恥ずかしがり屋なのかどうか知らないが、ひとつ分かったことがある。

俺はSteraのことを何も知らない。




滝の冷たさのおかげか、妙に頭が回る。

そして妙によく考えてしまう。

精神修行がうまくいっているかもしれない……

そう思った今日だった。




Hanabi SIDE


「ほらそこ違う!」


また注意された。

最近の私は少しホームシック。

でも頑張らないといけない。

カイが自分に期待してくれているから。


「すいません!」


「まったく……顔はいいのにね〜」


厭味ったらしく言うコーチ。

少しむかつくけど我慢我慢。

私は一人だけれど……がんばってるから。

と、もう連絡も何も出来ない携帯に向かってそう言ってみたのだった。






最近は少し調子がいいみたいです。

いろいろと。

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