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第19話 精神修行は突然に

新章突入!


Steraの過去が明らかになる章でもあります!

朝、目が覚めると決まって俺はすぐに支度をする。

でも何故か、ダルい。

学校に行きたくなかった。


「ん……」


隣から声が聞こえた。

……姉さん!?

俺は重い体を強引に起こす。


「……すっかり忘れてたぜ……」


俺はフラフラとした足取りで台所に向かう。

さすがに姉さんの分の朝ごはんは作らなくちゃな……

俺はエプロンをつけ朝食の準備をし始める。


「……だるい」


何か体が必要以上に重いしどういうことだろう?

俺は強引に体を動かして朝食の準備をする。


トン……トン……


俺は危なっかしい仕草で野菜を切る。

ヤバいなこれは。

マジで指切るぞ。

俺は意識が薄れていくのを感じた。


「や……べ……」


俺は急いで包丁を台所に投げた。

それと同時に体が傾く。

頭にすごい衝撃を感じたのはそのすぐ後のことだった……




何だか体がふわふわしている感じ。

懐かしいけどどこか寂しい感じ。

そんな感じを俺は味わっていた。


「死んだみたいだな」


俺は味わったことの無い感覚をそう例えた。

いや、死ぬ感覚なんて知らないけどね。

俺は辺りを見回す。

しかしどこをどう見ても真っ暗闇にしか見えない。


「……」


俺は異常なその空間に身体を緊張させる。

何が起きるか分からない。

俺は今そんな不安な状態に陥っていた。


「ん?」


この時俺の近くに何かを感じた。

しかもいい感じではない。

俺は周囲を見渡しながら前へと足を進める。


「来たか……」


「!!」


そのとき突如前方から声が聞こえた。

それと同時に俺は身を構える。


「誰だ?」


「クックックッ……俺は……」


そのとき俺の身体が突然上に引っ張られた。


「え!?」


「また会えるときが楽しみだよ、カイ」


「何故俺の名を……」


そこで俺の意識は途切れた。




「……イ!…イ!」


遠くから何か聞こえる。


「…イ!カイ!」


俺の名前か!

何故か全身を包むだるい感じがするが、俺は目を開けた。


「姉…さん」


「カイ!大丈夫なの!?」


どうやら声の主は姉さんだったらしい。

それにしても……


「すごい熱よ!」


「え?」


姉さんは俺に体温計を見せてきた。


「38度5分」


俺はそれを読み上げる。


「いや、そこまでの熱じゃ……」


「何言ってるのよ!絶対安静よ!」


姉さんは俺を強引に寝かせると、キッチンへと向かった。


「……ってオイ!!」


俺は熱よりもこれから出る料理の方が気がかりになったのだった。




「うぃーす」


翌日、俺はいつもどおり学校に行った。


「どうした?昨日は?」


俊哉にそう質問される。


「あ、昨日は熱があって休んだ」


俺はありのままを正直に話した。


「……そうか。それならいいんだけどよ」


俊哉は妙に含みのある言い方をした。


「何だよ?」


「あなたを心配してるってことでしょ」


「あ、レイ」


すると隣からレイの声が聞こえた。


「はなびを送り出したこと、後悔していない?」


「……ああ」


俺は自分の気持ちを押し殺して嘘を吐く。

どうせ2ヶ月なんてすぐだ。

ああ、すぐだよ。

だからすぐに戻ってくるから心配ないよ。


「ま、それより今は……次の数学の小テストの勉強しようぜ」


「そうだな」


俺は俊哉に言われて自分の席へと戻っていった。




「遅いな」


俺は家の中で一人そんなことを思っていた。

ちなみに何が遅いのかと言うと、姉さんの帰りが、だ。


「電話ぐらいしてもいいと思うのだが」


俺は隣に放ってある携帯を見つめた。

それは微動だにしない。


「……久しぶりに電話してみるか」


俺は携帯を手にとって開いた。

そして電話帳から「はなび」を選択してコールした。


「お掛けになった電話番号は電波の届かないところにあるか、電源が切られています」


「……アイツも忙しいんだろうな」


俺は目を瞑っていろいろ回想し始める。


「ああダメだダメだ!とりあえずいつ姉さんが帰ってきてもいいように夕飯の準備だけしておこう!」


俺は立ち上がって支度をし始めた。

まだはなびがいなくなってから一週間も経っていないっていうのに。

何だか腑抜けた感じ。

全く……情けないったらありゃしない。

このままだとはなびに蹴られちゃうな。

俺は頭をブンブン振って雑念を排除した。




今日は日曜日。

俺は俊哉の家にいた。

理由は簡単。

バンド活動だ。


「何かはなびが抜けたと同時に気も抜けたみたいだな〜」


俺は何気なくそういう。


「気が抜けてるのはお前だけ。俺達は腑抜けてない」


Steraがギターピックを弄りながら言う。


「別にたかが2ヶ月。我慢も出来ねえのか?」


Steraがさらに俺を責める。

そんなこと言ったって、はなびを行かせたのはお前じゃないか。

俺は少し恨みの篭った視線をSteraに向ける。


「あのな、最終判断はお前に委ねられてたぜ。そのお前が了承したんだから行ったんだろうが」


「でもあれはそういう空気だったし……」


俺は言葉が少しずつちいさくなる。


「ん?お前、今何て言った?」


「え?」


珍しくSteraが俺に怒りの表情を向ける。


「お前、そんないい加減な気持ちであいつを送り出したのか?」


Steraの言葉に力が入る。


「違う……けど」


俺はその視線に耐えられなくなり、自然と目を逸らす。

まずいぞ。空気が悪くなってきた。


「ま、まあこの話は後にして、今は練習だろ?」


俺がSteraに出来るだけ笑顔で言った。


「いや、こっちの方が重要だ。お前はあいつの契約についてどう思った?」


「まあすごいな…と」


「それだけか?」


「他に何かあるか?」


「……いや……」


Steraが少し考え込む。


「お前とはなびが離れ離れになるとは思ってたか?」


「……まあ少し」


何でこんな歯切れの悪い回答しか返せないのか。

自分が嫌になりつつあった。


「それで、お前の気持ちは?」


「え?」


「お前ははなびを送り出したことについてどう思っている?」


「お、俺は……」


後悔はしていない。

果たしてどうか。

何度も考えたこの問い。

俺の中の気持ち。

自分で自分がわからない。


「後悔はしてない。俺は自分の判断であいつを送り出した」


俺は一応それっぽいことをすらすらと言った。


「……今のお前に必要なのは音楽の才能でも練習でも無いな」


「はあ?」


突然Steraが謎なことを言う。


「お前に必要なのは……精神修行だ!!」


「……え?」


俺は首をかしげる。





これが最後に思わぬ結果をもたらすことを俺は知らなかった。

そして始まる精神修行……




伏線の回収スタートと言う感じですね。

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