第1話 その音は俺を惹く
はなび編はほのぼの調です。現在ユニークアクセス2位
夏休みはまだある。
もちろん宿題もまだある。
そしてやる気は……ない。
「もうニートでいいや」
完全ダメダメ生活を送りそうな雰囲気です。
というかもうダメダメ生活している。
朝起きて飯食って寝て、音楽聴いて寝て、携帯やって寝て……
こりゃダメだ〜。
ピンポ〜ン
「は〜い」
誰だよ俺のダラダラ生活を邪魔するのは!
俺はそう思いながらドアを開いた。
「おはよう」
「お、おはよう……」
そこにいたのははなびだった。
「アンタ、夏休みの宿題終わって無いでしょ?」
「な、何だよいきなり……」
俺ははなびの発言にビクビクしていた。
別に疚しいことなんて無いのだが、相手がはなびだとついこうなってしまう。
「わ、私も終わってないんだ〜」
「は?」
「だ、だから!二人でやったほうが効率がいいと思うのよ!」
俺ははなびの真剣そうな目を見た。
「……じゃあお前何で手ぶらなんだ?」
「あ……」
はなびの顔が真っ赤に染まる。
全く照れちゃって可愛いんだからハハハ。
笑いが出そう……こ、堪えるんだ!
また蹴られちまうぞ!
「は、はは……」
堪えられなかった。
「……ドジで悪かったわね!!」
ゲシッ!
「だあっ!」
俺の脛に衝撃が走った。
脛はヤバイ!脛はヤバイ!脛はヤバイ!
「え、えーと……とりあえず上がれよ」
「……分かったわ」
こうして一応家には入れた。
でもね……この家にはPS2とかもないから暇なんだよな〜。
「お茶入れるよ」
俺は立ち上がってお茶を入れることにした。
まあ動いて無いと落ち着かない。
俺は冷蔵庫を開けた。
「やべっ。お茶切れてる……」
俺はため息を吐いた。
はなびが俺をじっと見つめている。
「ちょっと俺、飲み物買ってくる!」
「え!?ちょっと!」
はなびの声が後から聞こえる。
「すぐ戻るから!お前は待ってて!」
俺は急いで外に出た。
もちろん行き先はコンビニ。
ったく……ニート生活なんてするんじゃなかったぜ……
俺は小さくため息を吐いた。
そして走ってコンビニに向かうのだった。
「いらっしゃいませ〜。あ!カイじゃん!」
「瀬川先輩」
どうやら今日は瀬川先輩がファミリアマートでバイトしている日だったらしい。
「ちゃんと毎日ご飯食べてる?」
「何ですかその親みたいな質問は」
「ちゃんと寝てる?」
「そりゃもちろん……」
何で俺がこんな質問に返さなきゃいけないんだよ……
と、思いながら律儀に返す俺って……
俺はお茶を探しながら答えた。
「ちゃんとお風呂入ってる?」
「当然です」
「毎日勉強してる?」
「い、一応……」
「毎日トイレ入ってる?」
「当たり前です!」
「毎日Hな本読んでる?」
「そりゃもう……って!」
目の前の瀬川先輩がニヤニヤした顔をしていた。
「ふ〜ん……」
「せ、せこいぞ!誘導尋問だ!」
俺は瀬川先輩に反論した。
ていうか店の中で従業員と客がこんな会話するなよ。
「じゃあ何でそりゃあもうって言ったのかしら?」
「ま、毎日は見ていない!」
「じゃあ時々なら見ているんだ」
「う……」
墓穴を掘った。
俺はエロに全然興味が無い、白馬の王子様だと思っていた俺のファンの方々ごめんんさい。
……意味不明。
「さ、さっさと会計済ませてください!」
俺はお茶の2リッターペットボトルをレジに置いた。
「は〜い、300円よ……」
「嘘をつかないでください」
俺は187円を支払って店を出た。
全くもって運が悪い。
さすがにこのお茶持って走れないので、俺は歩いて家に帰ることにした。
ポロン……
「あ、この音は……」
俺は無意識に音のするほうへ足を進めた。
するとやはり公園だった。
そこのベンチにはやはり帽子を被った少年がアコギを弾いていた。
「あ」
そして俺がそれを見てるのが分かるとすぐにまた止めてしまった。
「な、何でやめるの!?」
「……」
少年は片づけをし始めた。
「君の音をもっと聞きたいんだけど、ダメかな?」
「……僕の音って……何?」
少年が俺に訊いてきた。
「そ、そりゃ君が弾いているギターの音だよ」
「それはギターの音であって僕の音じゃない」
少年は立ち去ろうとした。
「待って!どうして帰っちゃうの!俺のこと嫌い?」
「……初対面の人のどこを嫌うんですか?」
「ま、まあそうだけど……」
少年は見かけによらず結構言う方だった。
「でも俺は君のギターの音を聞きたいんだよ!」
「……僕はギター、好きじゃないですから」
「え!?」
そのときの少年の顔は妙に儚さを持っていて、俺はそれを美しいと思った。
……違いますよ。
美しい雰囲気だと思っただけでホモ的なものはありませんからね!
って誰に言い訳してるんだよ。
「どうして君は!」
プルルルル……
突然携帯が鳴った。
「だ、誰だよ……」
「じゃあ僕はこれで」
「あ!」
少年はそのまま行ってしまった。
誰なんだよ一体……
「もしもし」
俺はイライラしながら電話に出た。
「遅いっ!!!!」
「はなび!?」
そういえばお茶早く持って帰らないと!
俺は無理に走って家に帰るのだった。
Toshiya SIDE
「やってるな……」
俺はライブハウスに来ている。
音楽仲間の誘いだ。
「今日来るんだって」
友達の一人が俺に言う。
「誰が?」
俺は質問した。
「知らないのかよお前。インディーズで超人気のSteraだよ!」
「ああ!あのロックギタリストか!」
Steraというのはロック界ではかなり名の知れたギタリストである。
そのギターは魂の叫びと言われるほどの音を出す。
人の心を熱くするのだ。
「でも何でバンド組まないのかな?」
「何だか魂の叫びが一致しないんだって」
「何だよそれ」
ロックの魂ね……
「まあ顔がいいから大抵声掛けるやつがナンパや体目的という噂だし」
「ありえるありえる」
「男なのにか?ハハハ!」
俺は仲間の会話を聞きながら考えた。
音楽、か。
昔カイと一緒にやってたこともあったな。
カイの奴はドラムやってたけどすごく下手だった記憶がある。
「ま、そんなことはどうでもいいか」
俺はその魂の叫びを早く聞きたかった。
そんな夏の夜のこと。