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第17話 苦悩と動き出す歯車

そろそろ終わりを見せたい頃です。

早いですか?


2日目のライブ……

俺の調子はすこぶる悪い。

緊張と寝不足のダブルコンボは、俺の集中力を切らすのに充分だった。

性格にはそれだけではないのだが、このままではまずい。

今までは何とか誤魔化せるレベルの間違いだが、大きなポカをしない保証も無い。

そして圧力。

俺が間違えるたびにSteraはちらりとこちらを見る。

それが俺に不安を生み出し……の見事な負の連鎖。

そのことに俊哉とはなびも気づいてはいるのだろう。

しかし彼らは自分のやることをこなすことに精一杯のようで……

結局、2日目のファーストライブはこのまま幕を閉じた。





「お前……一体どうした?」


Steraが出来るだけやさしめの言葉で俺に尋ねる。

俺を気遣ってくれているのであろうか。


「いや……寝不足と緊張かな……?」


いや、それだけではない。

先ほど……リハの頃に俺を襲った頭痛が未だに俺を苦しめている。

薬を飲めばいいのだが、生憎手元に無い。

そして、そういうときにはよく委員長が来て俺に薬を手渡してくれるのだが、今日に限ってそれが起こらない。

もちろん理由は知らないし、委員長が今日も現れるという保障も無い。


「ったく……昨日、興奮と緊張で眠れなかったんだな」


Steraがぶっきらぼうにそう言うとギターを弄り始めた。


「あの、さ……」


「別に気にすること無いわよ。初めてのライブだったんだし」


「いや、昨日やったけどな」


「細かいことはいいの!!」


はなびが俺の耳元で叫ぶ。

こいつもこいつなりに気遣いしてくれているのだろうな。

俺はこいつらにどれだけ救われているんだろう……


「じゃあ一応今寝ておけよ」


「そう、だな」


俺は俊哉の提案で仮眠を取ることにした。

しかしそんなものが頭痛で取れるはずが無いということは、俺が一番よく知っていた。

ただ今はこいつらに心配をかけさせたくない。

それだけだ。

俺は長いすに向かって横になると、来るはずの無い眠りを待って目を閉じた。




「さあっぁっぁっぁぁっぁあ!ラストォォォォォォラァァァァァァアァアァァッァイブゥゥゥッ!!」


厚巻の声が会場内に響き渡る。

泣いても笑ってもこれが文化祭での最後のライブだ。

そんな中、厚巻がメンバーの名前を読み上げ始めた。

もちろんバックスクリーンでも紹介されている。


「すごい盛り上がりだな……」


俺は会場の雰囲気に気圧されそうになる。


「何言ってんのよ。初めてのライブでもなかろうに」


はなびが俺を見ながら言う。


「いやまあそうだけどさ……」


「いつまで話してんだ」


Steraが俺達に突っ込む。


「悪い。すまん」


俺は自分の持ち場へと向かった。

しかしその足取りは重い。

緊張と寝不足と頭痛、それに今度は不安までも俺に襲い掛かる。

出来ることなら今すぐここから逃げ出したい。

でもそれではダメなんだ。

俺は、逃げちゃ、いけない。


「こいつらの……ラスゥゥゥッゥゥゥゥゥトラァァッァァァァイブッ!レッッッッツリッッッッッスン!」


俺はこいつの巻き舌に特に癒されずにドラムを叩き始める。

何とか出だしは成功した。

ここさえミスらなければ後でミスっても何とか誤魔化せるかもしれない。

……何弱気になっているんだ。

負けちゃダメだ。

ただでさえ足を引っ張っているというのに。

俺は……!




会場内の歓声は止むことがなかった。

一応ライブは成功したことになる。

Steraが大きな声で観客に何か叫んでいる。

俺はそれを聞き取る気力はなかった。


「ふぅ……」


俺はまず上を向いて深呼吸する。

そして呼吸を落ち着かせた。


「カイ、大丈夫だったじゃない」


「あ、ああ……」


俺は結局……ミスをほとんどしなかった。

どういう訳か、俺の気力が不安に競り勝ったらしい。


「俺も正直驚いている……」


俺は目の前のはなびと俊哉にそう言った。

しかし結果的によいので俺は満足だった。


「じゃあラストにでっかい拍手頼むぜ〜〜!!」


Steraの掛け声に拍手がいっそう大きくなった。

そして俺は舞台裏のナナちゃんに合図を送って幕を閉めてもらった。


「セェェェェェッェンキュゥゥゥゥッ!マイファミリィィィィズッ!」


最後に厚巻が意味不明なことを口走っていたが無視。

気にしていたら余計に疲れるぜファッキュゥゥゥッゥゥ!

あ、移った。


「まずは成功おめでとう」


さや先輩たちが舞台裏で俺達を出迎えてくれた。


「有難うございます。しかしこれはさや先輩たちのバックアップもあって……」


「そんなことは無いわ。結局一番頑張ったのはあなたたち4人なのだから。胸を張りなさい」


「はい!」


俺はさや先輩たちに心の中でさや先輩たちに感謝をした。

言葉にしないのは出来ないからでもある。


「あ、俺は少し席をはずすぜ」


Steraが俺達にそう言う。


「どうした?」


「いや、一応ここの校長先生とかにも挨拶しておかないとな」


「オイ。まだしてなかったんかい」


「いやあすっかり忘れちまって……」


「「「……」」」


俺達3人がジト目でSteraを見る。


「つうわけで言ってくる!」


「あ、逃げた」


Steraが一目散にこの場から去っていく。

つうかあの格好で学校を歩いたら目立つだろ。

……ていうか校長室の場所分かるのか?


「ま、俺は控え室に行って休むぜ」


「ああ。俺も行く」


「私も」


俺とはなびと俊哉は控え室へ行くことにした。

正直後片付けは後でやりたい。

俺達はまっすぐ控え室へと向かった。




俺達が飲み物などを飲んで休んでいるとき……


コンコン


「はい」


俺は突然聞こえたノックに返事をして、疲れた体を無理矢理起こして扉に向かう。


ガチャッ


「俺が鍵を開けてドアを開いた」


「カイ。別に面白く無いわよ」


そこにいたのはレイだった。

しかもネタはスルー。


「どうした?」


「何かあなたたちに会いたい人がいるらしいわ」


「へ?」


レイの言われたことに思考をめぐらすも、何も思い浮かばない。

というか俺達に好き好んで会いに来る奴なんているだろうか。


「何だかレコード会社の人みたい」


「ええええ!?」


俺は廊下で絶叫する。

無理も無い話だろう。


「どうした?」


「どうしたの?」


騒ぎを聞きつけた俊哉とはなびが俺の方へとやってきた。


「何だかレコード会社の人が貴方たちに会いたがっているみたいよ」


「「ええええ!?」」


「反応同じだなオイ!」


はなびと俊哉もかなり驚いている。

それはもうイ○ミ君並に。(古)


「それでどうするの?通すの?」


「あ、ああ。一応何の話か分からないから聞いてみるだけ聞いてみるよ」


俺は少しどきりとしながら答える。

まさかの展開に緊張してしまう。


「分かったわ。控え室で待ってて」


俺達3人は控え室に戻ってじっとして座った。

会話が何のが少し気まずい。


コンコン


その空気を変えたのはドアをノックする音だった。





Stera SIDE


「やべえやべえ」


Steraは廊下を彷徨っていた。

彼女には少し後悔があった。


「校長室の場所訊いておけばよかったな」


彼女はフラフラ彷徨っていたが、一人の女子生徒を捕まえて校長室の場所を聞き出した。

女子生徒は的確に答えてくれたので、Steraは感謝の言葉を述べ、その場から立ち去った。





Kai SIDE


「はい」


俺はドアの方へと足を進めた。

そして俺は扉を開けた。


「初めまして。私達はこういうものです」


扉を開けた途端男二人が挨拶をしながら名刺を見せてきた。


「シャイニングラインレコード……」


「はい。私達二人はシャイニングレコードの者です。貴方たちにお話があるのですが……」


「あ、はい!どうぞ」


俺は二人を中に招きいれた。


「どうぞ」


俺は彼らにソファーを勧めて俺もその反対側のソファーに腰掛ける。


「どうぞ」


はなびが二人にお茶を差し出した。

予め準備をしていたらしい。


「有難うございます」


2人のうち、年上だと思われる方が言った。

それに続いてもう一人の方も言った。

多分上司と部下で、年上の方が上司なのだろう。


「さて、早速本題に入りたいのですが……もう一人の方は?」


Steraのことか。


「今は席を外しています。すぐに戻ってくると思います」


「そうですか。ではまず貴方たち3人にお話いたします」


俺達は唾を飲み込んだ。

こういう場合って大抵アレだよな……


「私達の会社と契約する気はありませんか?」


やはりそう来たか。


「あ、それはSteraが戻ってきてからではないと……」


彼女の許可なしに勝手に契約するのはマズイだろう。


「ああいえ。言葉が足りませんでした。契約のことに関しては水島さん。あなただけです」


「え?」


「はい?」


俺とはなびが顔を見合わせる。


「水島さん、あなたは私達の会社と契約する気はありませんか?」


「わ、私!?」


はなびはかなりテンパっているようだ。


「それってどういう……」


「カイ」


俺の発言を俊哉が止める。


「私はその……」


はなびがチラリと俺を見た気がした。


「今すぐ決めなくても構いません。じっくり考えて答えを出してください。ただ、貴方の才能は常人の域を超えています。必ず成功するでしょう」


「え、えっと……」


はなびはかなり困っている。

えーと、今までの話をまとめると、契約の話ははなびだけ。

つまり俺と俊哉には無い。

まあ妥当だろう。

俊哉はベースを始めて少ししか経ってないし、俺にはそんな才能は無い。

だからこうなることは納得できる。

しかし……


「えーと、すいません。はなびは今はウチのメンバーです。だからメンバー間でも話し合わなければ決められないと思います」


「そ、そうです!少し待っててください!」


俺の発言に便乗したはなび。

何とか助け舟は出せたかな?


「分かりました。あと、契約の話はギターのSteraさんにも……」


「俺がどうかしたって?」


「あ」


そのとき、エレキギターを背負ったSteraが現れた。


「丁度よかった!Stera、この方達はレコード会社の方々だよ」


「レコード会社!?」


Steraが面食らっている。

そりゃそうだろう。

まさかここの文化祭にレコード会社の人達が来るなんて夢にも思わないだろう。


「Steraさん、私達はこういう者です」


そしてSteraは彼から名刺を受け取る。

そして名刺を見る。


「シャイニングラインレコード……だと?」


Steraの顔が紅潮する。


「ふざけんな!!!!」


ビリリリリ!!


「ああ!!」


Steraが突然名詞を破きだした。

何だか知らないがかなり怒っていた。


「帰れ!お前らに話すことなんか無い!」


Steraの怒鳴り声が控え室内に響く。

Steraがここまで怒るのを見たのはこれが初めてだった。

一体Steraはどうしたのだろうか……!?







まあとりあえず少しだけ余裕が出来た作者です。

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