第16話 そしてまた繰り返されること
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俺達の青春が幕を開けた……
「次はぁぁっぁ……生徒会主催……ロックバンドライブだぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁ!!!!」
厚巻の声とともに拍手が響き渡る。
そして舞台の後ろにあるスクリーンにメンバー紹介と出た。
まずはドラム:Kaiとスクリーンに表示された。
少し恰好つけすぎだろうと思った。
ちなみにこの名前はSteraが勝手に付けた。
いかにも彼女らしいネーミングセンスである。
そして、それなりに俺は歓声を浴びて登場してドラムセットの所に座った。
さすがにさや先輩も椅子に細工などはしなかった。まあ当たり前か。
「ドラァァッァッァァッァァム!!カァッァァァァッァァイ!!」
いや、スクリーンに出てるからお前要らないよ。
でもまあ良いかと思ってしまう。
恐るべしライブ効果。
そしてスクリーン上にはベース:Toshiyaと表示されたいた。
「キャ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「うおっ!」
会場内の女の子の悲鳴に似た叫び声がすごかった。
厚巻の「ベェェェェェエェッェス!!!トシィィィィィッィィィヤァァァッァァ!!」というのが聞こえないくらい。
しかし俊哉は慣れているのか、特にいつもと変わらず。
そして……
「ギタァァァァッァァアッァ!!!!スッテッェェェェェッェェエッェラァッァァァァァアァ!!!!」
とうとう来たか。
サプライズゲストということでさらに歓声が大きくなる。
というか会場の奴らはSteraが女だということを知らない。
そのためか、男女問わずのすごい歓声だ。
「ヴォぉぉぉぉォォォォォカァァアァァァァッァル!!ハッナァァァァァァァァァァビィィィィィッィィィィィィ!!!!」
スクリーン上にはヴォーカル:Hanabiと表示されている。
はなびも歓声がすごかった。
Steraに負けないくらい。
はなびは心なしか照れているようだ。
そうして会場のボルテージは最高潮に達したようだ。
「……」
そのときSteraが厚巻に厳しい視線を送った。
そしてその厚巻の方へと歩みを進める。
しかし厚巻は間抜け面でSteraを見ていた。
そして……Steraは厚巻からマイクを奪い取ると、舞台の下へ蹴飛ばした。
「いつまで舞台に上がってんだ!!」
あ、厚巻ぃぃぃ!!
お前少しは空気読めよ!!
Steraは部外者が舞台に立つのを嫌う。
で、肝心の厚巻は蹴られたにもかかわらず笑っていた。
……この変態め。
「みんな……集まってくれてありがとう!!」
SteraのMCが始まる。
やはり経験者がやるのが一番だ。
「俺はこれまで中々自分に合うバンドが見つからなかったんだ。でも俺は見つけた。それが俺達……Beat of Soul!!」
俺達のバンド名を高らかに叫んだSteraは演奏を開始した。
この曲はSteraの曲の中でも随分と激しい曲だ。
イントロからすでにSteraの早弾きが始まっている。
俺はそれに合わせるようにドラムを叩く。
「Hey!Hey!カモ〜〜〜〜〜ン!!!!」
Steraの高い叫びを合図にはなびが歌い始める。
俺はそれを確認するとまた自分の作業に戻る。
俺に他の人のことを気にしている余裕はない。
そう、ただ力をつくすのみ。
自分の今やるべきことに。
はなびの声は会場に響き渡り、俊哉も自分の出来る最大限の事をした。
そして最後にSteraのギタソロが入り……
俺はシンバルを思い切り叩いた。
会場内がその後に静まり返る。
……しかしすぐに拍手喝采を俺達は受けることになった。
「……こんな拍手されたのって俺初めてだよ」
「俺もだよ」
俺と俊哉は笑いながら言い合った。
そして近づいてくるはなびとSteraにハイタッチを交わした。
「まだ1曲しか終わってねーからな」
「ああ。分かってる」
俺達は一応3曲ほどやる予定なのだ。
「じゃあ、次行くぜ」
こうして俺達はテンション最高潮のままライブを再開したのだった……
「終わってみると呆気ないものなんだな」
アンコールの2曲が終了し、俺達のライブ1日目が終了。
「でも中々良かったわよ」
さや先輩が俺達を笑顔で迎える。
まあライブは成功したといって良いだろう。
「この調子で明日も頑張ろう!」
「おう!」
はなびの言葉に俺も全力で答える。
「次の日も成功すると良いわね」
俺はさや先輩に手を振りながら控え室から出た。
「ふぅ……」
超緊張した〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
俺は胸を押さえる。
心臓の鼓動が再び高鳴りだす。
俺は枕を抱えながら自室のベッド上を転がり回る。
この高揚状態はなかなか収まりそうにない。
俺は目をつぶって思い出した
あのときの光景、歓声、興奮……
目、耳など五感で感じ取れたものが俺の中に甦ってきた。
今日は眠れそうに無い……
……
…
それはまずい。
翌日……
結局あまり眠れなかった俺はあくびをかみ殺しながら、はなびを起こして登校。
「アンタ、随分眠そうね」
「そういうはなびは昨日よく眠れたのか?」
俺はいつもと変わらぬ状態のはなびにそう返した。
「つ、疲れが興奮に競り勝ったのよ!!」
なんだその言い訳は……
別に眠気に負けることは悪くないと思うのだが俺は。
「とにかく!今日も頑張るわよ!」
「そうだな」
まだライブが終ったわけではない。
文化祭は2日ある。
つまり今日。
俺はあくびを殺しつつ控室へと向かった。
「ようカイ。眠そうだな」
「おう」
控室にはすでに俊哉がいた。
Steraはどこだろう?
「Steraは?」
「ああ。まだ来てない」
「そうか」
別に来ないのが珍しいわけじゃない。
ただ少しだけ違和感を覚えた。
いや、違和感じゃない。不安だ。
それが何に対するものなのかは分からない。
だから俺は特に気も止めなかった。
「じゃあ私たちだけで先に音合わせしない?」
「そうだな」
はなびの提案に俺と俊哉が賛成し、音合わせが始まった。
……やはり一番下手なのは俺という事実は変えることができないらしい。
「おっ。やってるわね〜」
その音合わせの最中に、さや先輩をはじめとする生徒会メンバーが俺たちの部屋に入ってきた。
「カイ先輩緊張して硬直しないで下さいよ〜」
「余計な御世話だ」
ナナちゃんの茶化しをさっと流して練習に戻る。
ズキッ
「うっ……」
「?」
「どうした?」
はなびと俊哉が俺のほうを見る。
「いや、何でも、ない」
俺は平静を装ってそう告げた。
またこの痛みか……
俺は頭を抱え込みたくなる衝動に駆られたが、周りに心配をかけたくないので踏ん張った。
その後すぐSteraが来て俺たちの練習に混ざった。
その際特に変わったことはなかった。
やはり俺の考えすぎか。
そんなこんなでとうとう2日目の1回目のライブの時間になった。
「今回も成功させるぞ!特にカイ。お前は気をつけろよ」
「お、おう……」
やっぱりこのバンドのアキレス腱は俺か。
そして激動の2日目が始まった。
これが俺とはなびの運命を分かつことになるとは俺達には知る由もなかった。
しかしこのときはただ、目の前のライブに集中することに精一杯だった。
島流し。
……すいません。自分でも意味分からないです、はい。