第11話 近づきつつある俺達
何か恋愛描写を書くのって苦手です。
……それ言ったらお終いだけど。
「咲!?」
なんと俺の前に姿を現したのは咲だった。
「一体どうして!?」
「ちょっと事情が変わっちゃって……転入することになったの」
「そ、そうなのか」
美作グループに関することなのかな?
まあ俺には関係ないようだし良いか。
「……タイミング良すぎじゃない?」
さや先輩は疑惑のまなざしを向ける。
「分かりますか」
「マジなのかよ!?」
委員長の呆気ない肯定に俺はすかさず突っ込む。
「実は私達、カイさん達がバンドをやっていると耳にしましてね……それで生徒会を助けてあげようと集まった義賊です!」
「……へえ」
さや先輩は全然信じていないらしい。
確かに上手い話には裏がありそうだしな。
「まあいいじゃないですか。私達は何も要求しません。しかも無償で手伝います。これって良くありませんか?」
「……わかったわ。今回は折れてあげる。勘違いしないでね。私は貴方達を信用していないから」
「……」
さや先輩も随分と疑い深いな。
まあこの状況だし仕方が無いのかもしれないな。
「あのじゃあ俺は……」
「もう行っていいわよ。体に気をつけてね」
「フフフ……裏がある裏がある……」
最後にナナちゃんが何かを呟いていたが極力無視だ!
どうせろくな事では無いだろう。
生徒会室を出て俺は俊哉の家に向かった。
もちろん練習のためだ。
多分もうはなびと俊哉は来ているだろう。
ピンポーン
俺は桜子さんに連れられて敷地内へと入っていった。
「あの……みんなもう来てますか?」
「はい」
「そうか……」
やはり俺が一番最後か。
だからなんだという訳でもないんだけど。
そして俺はレッスンルームに入っていった。
「よう。来たか」
「遅くなって悪かったな」
俺はSteraにそう告げるとドラムセットのところに向かった。
「じゃあ音合わせするか」
俺達は普通に練習を始めた。
もちろん真剣にだが。
「お前、前より上手くなったな」
「そうか?」
Steraに褒められる俺。
「何というか……やっと素人になった感じ」
「じゃあ今まで何だったんだよ!」
「う〜ん……ゴキブリ?」
「ひどっ!ちょっとそれ酷くないっすか!」
俺達はこんなほのぼのと日常を送っていた。
はぁ……何気に今って幸せだな……
「あのー」
「ん?」
はなびが何か意見を言うらしい。
いや、エスパーじゃないけど、何となくそう思った。
「もうすぐ文化祭じゃない?それでさ、ライブを文化祭でやるってどうかな?」
「おう!」
「そうか!」
俺と俊哉が頷く。
確かにそれなら場所代もいらなそうだし楽かもしれない。
「う〜ん……部外者の俺がやってもいいのかな……?」
珍しくSteraが弱気だ。
「大丈夫だって!Steraの音を聞けば文句言う奴はいないって!」
「……そうだな!!」
「……調子良すぎだろ」
Steraのあまりの変わり身の早さに俺は少しため息を吐いた。
俺は次の日、さや先輩のところへと向かった。
「あの、さや先輩」
「何?」
もう仕事はあまり無いのか、暇そうにしているさや先輩が俺の方を見た。
「実はお願いしたいことが……」
俺は出来るだけ丁寧にしゃべった。
刺激をすると何かやばそうだ。
「文化祭のことなんですけど……」
「あのね、それはちょっと待ってくれる?文化祭の件は今度まとめてやるからそのときに言ってくれる?今はそれどころじゃないの」
ていうか暇そうにしてるのにダメなのか……
「それと……はい」
さや先輩から渡された何枚かのプリント。
「これを真里菜先生に渡しておいて」
「パ、パシリ!?」
「あのね、勘違いしないでくれる?あなたは生徒会の一員。私は会長。なら会長の言うことを聞くのは当然でしょ」
「そ、そうですね……」
まあどうせやるつもりでしたけど。
どうせ断れなかったけど。
俺ってこのまま流されるタイプなのかなぁ?
「じゃあ頼んだわよ」
「……はい」
俺は生徒会室を出て真里菜先生のところへ向かった。
はぁ……あまり二人で会いたくないんだけどな。
ガラガラ
「失礼します」
俺は教員室に入った。
「真里菜先生」
「おおカイじゃないか!私に会いに来てくれるなんてもう感激しすぎて悶えてしまうぞ!」
真里菜先生が体をくねらせてやって来た。
だからアンタ男だって。
いくら女の外見をしていても男なんだって。
だからちょっとキモイ。
とか心の中で矢継ぎ早に不快感が流れてきた。
「プリントです。生徒会長から」
俺はプリントを真里菜先生の机の上に置いた。
そして背中を向けようとした。
「待て」
「何ですか?」
しかし真里菜先生が俺に後から抱きついてきてそれを阻止する。
……って俺は今男に抱き付かれているのか!?
「放してください!」
「嫌だ!絶対に放さない!」
「いやいや放せよ!」
俺はジタバタもがく。
しかし中々離れない。
さすがに力は男ということか。
「ていうか他の先生達も見てないで助けてよ!」
しかし他の先生は俺に目を向けない。
というか目の前の光景から目を逸らしているようだ。
「アンタらそれでも教師かよ!」
しかし教員室には俺の虚しい叫びが木霊するだけ。
「真里菜先生。どうぞ自由にこの教室を使ってください」
「ありがとうございます。教頭先生」
教頭を始め、真里菜先生以外の先生がぞろぞろと教室から出て行く。
ていうかこの教室で何をするの!?
自由に使うって何を!?
「さあカイ。やっと二人きりになったね」
「うわあ!!!!本気で止めて!!!」
俺はもがく。
もがき続ける。
「無駄だぞ。教員室には鍵が掛かっている。ここから出ることはできない」
「そんな……」
俺は絶望した。
これはマジで危ない。
「フフフ。さあまずはどうしようか……じゅるり」
「う……この人もうダメだよ……」
俺の顔が引き攣っているそのとき、扉の鍵が開く音がした。
カチャカチャ
「!」
真里菜先生が一瞬気をとられる。
「今だ!」
「しまった!」
その隙に何とか真里菜先生の腕から俺は抜け出した。
本当に間一髪だった。
ガラガラ
「やっぱり」
「はなび!レイ!」
教員室に入ってきたのはレイとはなびだった。
多分レイがピッキングしてくれたんだろう。
「むむ。いいところだったのに」
真里菜先生は不満顔だ。
「全く男にレイプされかけてどうするのよ」
「レイ、言わないでくれ……」
何だかそれを言われるとへこむ。
「カイ、行くわよ!」
「あ、ああ……」
はなびが俺の手を引いて廊下に連れ出した。
「……ライバルは幼馴染か。ふむふむ」
最後に後で変な呟きが聞こえたが、気にしないことにする。
ていうか気にしたら負けだ。
「ちょっとそんなに引っ張るなよ!」
俺ははなびに強引に引っ張られていた。
何か怒っているようだ。
「何怒ってるんだよ!」
「カイが先生に鼻の下伸ばしてたからでしょ」
「伸ばすわけねーだろ!!」
レイが俺をおちょくる。
「は、はなび?」
「……私……」
「え?」
何かはなびがこっちを向く。
何か少し泣きそうだ。
「男に負けるところだったのよ……」
「え?何の話?」
「バカ!それぐらい分かれ!」
「ええ!?」
何かはなびから理不尽にも怒鳴られたのだが……
俺はかなり困った。
「……そんなことより……あなたたちいつまで手を繋いでるの?」
「「うわああ!!!!!!」」
俺達は急いで手を離して距離を取った。
何か恥ずかしい。
「……結構お似合いだと思うわ」
「何が!?」
最後にレイが俺達にそんなことを言って去っていった。
「……行こうぜ」
「う、うん……」
この日、俺達はまともに顔を合わせられなかったのだった。
どうしてなのかは……後で知る事となる。
もうちょっと何とかなりませんか?
私の文才。