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プロローグ その音は心に染みる

はなび編スタート。

4作同時更新のため、更新に時間がかかります。

ご了承ください。

まだセミが鳴いている頃、俺は一人のギタリストに出会った。



その出会いが俺の運命を変える……





「ああ暇だ!!」


嘘。暇じゃない。

まだ夏休みの宿題が終わっていない。

ただ現実逃避しているだけ。


「う〜ん……よし!俊哉に電話をしてみよう!」


俺は俊哉に電話をかけた。

プルルルル……


「お掛けになった電話番号は電波の届かないところにあるか、電源が入っておりません」


「つ、使えない!」


俺は電話をベッドに放り投げた。

そして仰向けに寝転がって天井を見る。

もちろんこんなことをする意味など無い。


「……はなびにでも電話しよう」


俺ははなびに電話することにした。

プルルルル……

ガチャッ


「もしもし。どうしたの?」


はなびが電話に出てくれた。


「ちょっと今ヒマ?」


「……ヒマだったら?」


はなびが俺に質問し返す。


「少し遊ばね?」


「……それってデート?」


「いや、違う」


「……」


途端に黙り始めたはなび。

俺は正直に言ったぞ。

それにはなびをデートに誘うと何だか蹴られそうだし。


「あのさ……」


答えの無いはなびが心配だったので、声をかけた。


「いいわよ。どこで待ち合わせる?」


「あ、そうだな……駅前でよくない?」


「わかったわ。今すぐ?」


「あ、ああ……でも別に急ぐ必要は……」


「すぐ行くから!」


ガチャン

ツーツーツー


「何アイツ慌ててんだ?」


俺は突然切られた電話をジッと見つめていた。

そして……俺も着替えるか。




俺はすぐに着替えて駅前に行った。

はなびとの待ち合わせに遅れてしまったら大変だ。

しかし何とかはなびより先に着くことが出来た。


「ふう……」


俺は息を少し吐いた。

何せ走ってきたから。


「カイ!」


「ん?」


俺は声がしたほうに目を向けた。

するとはなびが走ってくるのが見えた。


「おう、はなびか」


「は、早いじゃない……」


はなびが少し息を切らしてきた。


「そうか?お前が準備に時間をかけすぎなんじゃねえ?」


俺ははなびのお洒落な格好を見ながら言った。


「そ、そんなんじゃないもん!この服はたまたま近くにあったから着ただけなんだから!」


「そ、そうなのか……」


俺ははなびの勢いにたじろいだ。


「アンタこそこんなに早く来るなんて……楽しみだったんじゃないの?」


「楽しみと言うか……遅刻したらお前に蹴られそうだから……ってやべっ!」


俺は急いで口を塞いだ。

しかし時遅かったようで、はなびにはしっかりと聞こえていた。


「ア〜ン〜タ〜ね〜!!」


「悪かった!悪かった!」


俺は両手を合わせてはなびに謝った。

確かに言い方が悪かった。


「そ、そんなことより行こうぜ。時間無くなっちまうし」


俺ははなびを促した。


「……そうね。早く行くわよ。たっぷりと奢ってもらうんだから」


「げ」


はなびは俺に腕を絡めて歩き出した。


「ちょっ!この格好は……」


「うるさいわね。早く行くわよ!」


「あ、ああ……」


で、結局抵抗できずに俺は引き摺られたのだった。




「は〜!楽しかった〜!」


「……俺は疲れた」


「何か言った?」


「何も」


俺ははなびに振り回され続けた。

そのせいかもう疲労困憊だった。


「さすがに帰らね?」


「そうね」


結構な時間まで遊んでしまった俺達は帰ることにした。

もう辺りも暗くなっていることだし。


ポロンポロン……


「ん?何か聞こえないか?」


「え?」


俺達が約束の公園の近くを歩いていると、何か公園のほうから音が聞こえてきた。


「ギターかな?」


「アコギのこと?」


「ああ」


多分アコースティクギターだろう。

俺は自然とその音のほうに近づいていった。


「ちょ、ちょっと!」


「見るだけなら大丈夫だろ」


「もう……」


はなびは俺に付いて来た。


「あ」


俺達はベンチで一人の帽子を被っている美少年がギターを弾いているのを確認した。


ポロンポロロン……


そのメロディはどこか寂しげで儚い感じだった。

俺は素人ながらこの人のギターの腕は相当なものだと感じた。

人にここまで感情をギターで表すなんてすごい……


ポロロ……


不意に演奏が止んだ。


「え?」


美少年はこっちをジッと見ていた。


「あ、いや、その……綺麗な音色だったよ」


何言ってるんだ俺は。

まず感想を俺は述べた。


「……そう」


少年はギターを片付けてしまった。


「あ、ゴメン……邪魔だったよな」


俺ははなびと帰ろうとした。


「僕のギターは人に聞かせられるようなものじゃないよ。だから少し恥ずかしいんだ」


少年は淡々とそう告げて俺達に背中を向けて歩き出した。


「えーと……」


俺が挨拶するのを躊躇している間に少年は去ってしまった。


「行っちゃった……」


「アンタがモタモタしてるから……」


はなびが悪態を突く。


「お前だって何も言わなかっただろ」


「だって知らない人だもん……」


「お前は小学生か」


俺ははなびとそう話しながら家に帰った。



不思議なギタリストと出会ったそんな夏のある日のことだった……




何かやってしまいました。

すいません。

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