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作者: 西屋従禄


 事の起こりはこのようであった。

 そのようにはじめることができたらどんなにか楽だろう。何か話をするとき、順を追って説明していくのはまあ定石だし親切だ。私はそれは正しいと思っているし、概ねそれに倣ってきたと思う。ただ、だからこそ困惑しているのかもしれない。比喩でなくなにもない、ただの空白が延々と広がっているこの光景に。

 

 

 【中略】

 


 すると、空のあおが崩れだす。天頂から歪み、垂れ下がってくる。

 ぐにゃり、という表現がこれほど似合う状況もそうそうあるまい。場違いに呑気なことを考える。何分お天道様のなさることだ。こちとらどうしようもあるまい。それに考えてみるとあめ(・・)が降るにもあお(・・)が降るにもたいした違いが無いようにおもわれる。降ってくるなら仕方ない。

 そうやって眺めているうちに、とうとう耐えきれなくなったようで一塊のあおが降ってくる。ジャンボジェットよりなおも巨大なそれは、数十米離れた交差点に落ち、飛び散る。街路樹、標識、私、棒立ちのぼんくらどもが飛沫を浴びる。あおく濡れた頬からはセルロイドの匂いがするので指で拭って舐ってみると、これがどうして存外甘い。私は乳飲み子にでももどったように、夢中に指をしゃぶり続ける。

 どれ程そうしていたろうか、いい加減味もなくなってきたので唇を外す。吸いすぎたせいか味だけでなく、色も落ちて私の指は透明だ。さすがに色が無いままでは障りがでるので、どうしたものかと辺りを見回す。見回してみると困ったことに、周りも大方無色か崩れかけだ。こぼれた色が、地面にタールのように広がってはいるが、既に混ざり合ってどうしようもない。溢れた水はもうもとの器にもどせないのだ。

 私は途方に暮れ、地に膝をつく。ふとそのまま、混色を舐めてみる。甘味とえぐみ、その他色々混ざりあった味だった。

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