『異世界に行きたくない男』VS『異世界に行かせたい神』
この作品は「異世界に行きたくない男VS異世界に行かせたい神」の続きです。
目を開けるとそこは異世界だった。ファンタジーであったドラゴンが空を飛び、魔法が使える世界。
「チェンジで」
俺がそう言うと目の前の景色が変わり、san値が減りそうな物が沢山ある部屋にいた。
「なんでだよ~ 異世界of異世界の世界だよ」
「それが嫌だ」
どうも、正月に自称神様に異世界に連れていかれそうになった男です。
あの後、色々と肉体的に交渉した結果正月だけは家に帰して貰えた。なので、今は少し進んで三日だ。
どうやら、俺だけを喚べるという話に嘘はないらしく、本当に困りきった顔で土下座させたのは思い出だ。
「本当に行ってくれる?」
「ただし、俺が気に入る世界ならな」
「本当に行ってよ! 異世界に送ることが出来るのもう後1、2回ぐらいなんだから」
「は?」
「この世界なら気に入るかな……」
「いや、ちょっと待て」
自称神様が凄く気になる言葉を言って、再び俺は異世界に飛ばされた。
「ふふふ、神を侮るからそうなる。僕に誓ったのだから僕が正しいよね」
☆*†*†*†*†*†*☆
「ふざけやがって! せっかく異世界に行けなくなる限界を見極めてたっていうのに」
一応悪態をついた。あの男のことだから今頃高笑いでもしているかもしれないが……
どこまでも俺の事を舐めたまねをして、ただですむと思うなよ。
とりあえず周りを見渡してみた。今までの自然いっぱいの世界と違い、荒野のような荒れた土地が広がっていた。
しかも、人どころか生物すら見えない。
「あの野郎」
こんな所に降ろされても、生粋のインドア派には生きていく術はないと分からないのか。
「まあ、歩いてみるか」
幸いにも、俺が注文につけた三日は生きていけるセットがあれば何とかなるだろう。
「そういえば荷物は、どうやって出すんだ?」
持っているというのは知っているが、出し方を聞くのを忘れてた。
「えっと、確かこういうときは『ステイタスオープン』だったか?」
………
一瞬の沈黙が流れた。微かに吹いていた風さえ止まった。
「あぁん? 間違えたか?」
なんだか、気まずくなって頬を掻くが所詮一人。今まであの男がペラペラと喋っていたせいか急に沈黙が虚しくなった。
それにしても、本当に何もない。日本では見ることの出来ない地平線が見える。この世界も丸いということがわかった。
すると、ピロン♪ と音が頭に響いた。
「おっ、時間差か?」
よくあるゲームのような内容が書かれた透明な板が目の前に現れた。
しかし、持ち物欄がない。
「は? まさか忘れているわけではないだろ」
しかし、見返してもないものはない。あの男は本当に苛立つことをする天才かよ。
あの荷物があるなら探検ぐらいしてやろうと思っていたが、こうなれば別だ。
「よし、還るか」
俺は胸ポケットに隠し持っていた赤いボタンを取り出した。
これは、男に土下座させているうちに頂いたものだ。これには小さな文字で『魂戻し』と書かれている。これの効果は前に経験したからわかる。
「ははは! 俺を選んだことを後悔するが良い」
勢いよく赤いボタンを押す。ポチッと間抜けな音を立てて押す。すると、ボタンは火花を出して黒くなった。
「は?」
残念ながら風景は変わらない……
「は?」
思わずボタンを地面に叩きつけた。
「俺は還るんだ…… 明日から仕事もあるし…… なんでだよ」
思わず頭を抱えて座り込んだ。
「お主はなんて物をこの部屋から出してくれてるの? そのおかげでランクが下がる危機だったじゃないか。まあ、誤魔化したけど」
勢いよく頭を上げると、自称神様の男が目の前に立っていた。あの気が狂いそうな物が地味にある部屋にいた。
「もう、なんで還ってくるのさ。あの世界はあそこから動けば本当に不自由しない世界だったのに、お主は馬鹿だね」
どうやら還ってこられたらしい。
思わず、目の前の男を平手打ちしていた。
「いきなりなにをする」
しかし、あまり勢いが出なかったのかペチリと軽い音が鳴っただけだった。
「うん。俺には無理だ」
「それは今回で分かったよ。でも、僕のことを知っていられると困るから記憶を消して、元に戻してあげる」
「お前、俺しか喚べないんじゃないのか」
「うん? ああ。でも、もう僕の力じゃ異世界にもう送れないから」
「そうか」
「うん」
自称神様の男はゆっくりと俺の頭を撫でる。それは、あんまり嫌ではなかった。
しかし、それはその男が焦った声を出すまでだったが……
「やばい。記憶を消せない。ごめん。暫くここで暮らしてもらっても良いかな?」
「は?」
「いやー、ここまでならいけると思ったんだけどね~ 自分の力を過信しちゃった」
ペロリと舌を出す男の顔を拳で殴った。
「こんな正気度がどんどん減っていく部屋でお前と一緒とかありえねー」
こうして、隙があれば異世界を進めてくる神様と暮らすことになった俺は、家に帰ることを諦めない。
続く?