技能
【感覚操作】を一応制御できてからは1度睡眠をとり
起きてからは午前はランニング。ランニングを終えると昼食。昼食を終えると【感覚操作】のより綿密な操作、という日々が続いていた。
ランニングはくそしんどい上に後ろからの猛烈な斬撃を躱すことに必死でランニングが終わると必ず気絶するし【感覚操作】はまだ操れても時間が短く少しやるとすぐに朦朧とする。
そんな日々が1週間2週間と続き人間窮地に立たされると慣れやすくなるのか俺もランニングなどにも慣れてきた。
「慣れてきた…けどもっとてっとり早く強くなりたい」
ならばどうすれば良いのか…?
考えて俺が出した答えは……ランニングに慣れてきたならランニングに並行して【感覚操作】を操作する事だ。
それが出来れば戦う時に並行して【感覚操作】を操作できるようになる上ランニングにもより負荷がかかるため一石二鳥だ。
次の日にランニングに並行して【感覚操作】をすることを試みてみた。
後ろからはギンジが猛烈な速度で迫ってくることを聴覚を強化し感じ取る。
しかし聴覚を強化していると脚を動かすのが疎かとなりギンジに反応する前に転ばされてしまう。
「…?ジン今日お前調子悪いのか?いつもより動きがにぶいぞ」
「…すぐに悠々と躱せるようになってやるよ」
次の日も次の日もランニングと並行して【感覚操作】をしギンジから躱す訓練をする。
ギンジには初めは心配されたが俺は毎回何でもないと答えていた。実際何かあったわけじゃないしな。
ギンジは俺の目を見て嘘じゃないと分かったのか途中からは聞いてくることは無くなった。
来る日も来る日もランニングをしては気絶をして昼まで起きずギンジに叩き起されるを繰り返してきた。
そしてランニングと【感覚操作】の同時並行を始めて3ヶ月が経っていった。
同時並行を始めてから1ヶ月半経つ頃には同時並行をしながら以前の俺の状態まで仕上げることが出来た。
そこまで同時並行を出来るようになると【感覚操作】で自然とギンジがどこにいるのかが分かるようになりギンジが手加減してくれるレベルでの斬撃なら比較的簡単に避けれるようになった。
そこからは走ってる中での視野を【感覚操作】で広げられないか試行したり逆に瞳を閉じながらでも最後まで斬撃を受けずに走りきれるようにできるか試みたりと試していく内にさらに1ヶ月半が経ちいつの間にか以前の俺とは比べ物にならないくらいの動きが出来るまで運動能力が上がっていた。
ランニング距離もどんどん伸びていく中、ランニングが終わりいちじ休憩に入り午後になる。
いつもは午後は【感覚操作】の操作訓練で俺が操作していく中でギンジは俺が暴走しないかを確認していた。
しかし、今日はいつもとは変わりギンジはいつも操作訓練をする場所の真ん中で訓練時のギンジの表情で立っていた。
「ギンジどうかしたのか?いつもは隅っこで寝ながら時折俺が暴走してないか確認してるのに」
「わははは!何だ、まあお前がこの3ヶ月ちょいで【感覚操作】も見てる限りでは大分コントロール出来るようになってきていたし、ランニングも距離を変えても俺を躱しながらも完走出来るようになってきたからな。今日からは次の段階へ行こうと思ってな!」
「次の段階って?」
「ああ、今までは【感覚操作】とランニングを別々にしつつこなしてきただろ?今度はそれを同時並行しつつ俺からの妨害を躱すのが目標だ」
ギンジからは次はそれで決まっているのか早速始めようと準備をし始める。
が俺は逆に頬に汗が伝ってきていた。
さすがにこれはびっくり仰天だぞ。
あんなにやる気出すギンジを見ていたらすごく言い難い。
同時並行はもう既に出来る……なんてこと。
「あ、あのさーギンジ」
「ん?どうした?さっさと準備しろよー!」
「そ、そうじゃなくてさー!」
「…どうした?」
「じ、実を言うとさ。ランニングと【感覚操作】の同時並行もう…出来るんだよね」
「は?すまん。俺の聞き間違いかもしれん。もっかいたのむ」
「…ランニングと【感覚操作】の同時並行もう出来るんだよね…」
そこからはギンジが驚きのあまり普段あまり出さないような声を上げた。
うんうん。これが聞きたかったんだよ!
そしてギンジに本当に出来るのかと訝しげな表情をされたので実際にランニングに行き同時並行を行った。
そして俺が本当に出来ることが分かったギンジはまたまた驚いていた。
「い、いつから同時並行の訓練をしていたんだ?」
「3ヶ月前くらいかな?」
「てことは、お前の動きが鈍くなってた時か…」
そう言うとギンジは考え込んでいたが「もう遅いから寝ろよー!」と促されたため俺は眠っていった。
翌朝、何時も通りまだ日が昇ってない時間帯に起き、ギンジとランニングを始める。
もう既に全速力でランニング距離全てを走れる位まで体力はついていたため、楽に終えることが出来た。
それでランニングが終えると暇だったため何となくジンは周りを視覚強化し見渡していた。
周りの森の深くには強そうな魔獣も多く、それを、さらに抜けると貴族らしい家が立っていたり、街が見えた。
見たことないような物ばかりでジンは目を輝かせてそれを見ていた。
しかし、一方向だけは森しか見えなかった。
「いつもなら【感覚操作】の訓練だが、もうそれはお前は充分出来てきた!だから次の段階へ行こうと思う!」
「次の段階?」
ギンジはそう言うやいなや魔袋からなんの変哲もなさそうなカードを取り出した。
あの魔袋は何でも入ってるな……これからギンジの事は便利おじさんとでも呼ぼうかな?
などと冗談めかしたことを考えていると
「これは技能カードってんだ!この世界には才能だけじゃなく技能もあることは知ってんな?」
俺は頷く。
「このカードはその技能の有無が分かり技能を会得するとそれが刻まれるんだ」
ギンジは俺にまだ何も書かれていないまっさらな技能カードを渡してきた。
「魔力をそこに流してみろ」とギンジに言われ、まだ魔力の魔の字もやってないのにそんな無茶な…と思いながら適当に自分の中からこのカードに流れ込むイメージをする。
すると手元のカードが光り輝いた。
目を手で隠しながら光が収まるのを待っていた。
光が収まるとカードには文字が刻み込まれていた。
カードを見てみると
《気配察知》
《逃走》
《精神耐性》
《痛覚耐性》
《投術》
《自然回復能力強化》
《並列思考》
《短剣術》
これが凄いのかもよく分からなかった俺はギンジにこのカードを見せた。
するとギンジは驚くような何か企むような顔をして
「お、おお…お前その年でもう耐性2つもあんのかよ!ぷぷぷ。た、耐性なんて相当辛い思いしない限り付かねえのに…辛い思いしてるんだなお前」
「…その一端はあんたが担ってるんだよぉぉぉ!」
急に哀れむような表情をするギンジに俺は耐えられなくなりつい叫んでしまった。
ギンジは意外そうな顔をして「え?俺?」などとほざいていたので容赦なく言ってやった。
いつものランニング最中の斬撃、【感覚操作】中に不意にくる斬撃、そして【感覚操作】を操るために使った才能を強制させる指輪。
俺も予想以上にギンジの言葉に苛立っていたのか愚痴愚痴言うとギンジも心当たりがあるのか目線をそらしこれでもかと言うほど強引に話題を変えてきた。
「えーとだな。まあ取り敢えず、技能カードに書かれてる技能は増えれば増えるほど便利だ。だが、、技能が多いからと言って相手より強い、とは限らない」
「え?技能が多い方がより攻める幅が広がるしより強いんじゃないのか?」
ギンジが真面目に話していたので俺も真面目に話す
「技能カードには技能が載ってるだけだろ?カードではそれ以外は分からない。つまりだ。見えない部分で差が開いてるってことだ。例えば、ジンが今持ってる《短剣術》の技能持ち同士が戦うとどうなるか?答えは簡単。《短剣術》の技量が高い方が勝つ。つまりだ。技能にはカードで見えない部分…技量が戦いではモノを言ってくる」
有無を言わさない説得力がギンジにはあった。
確かにそうしないと同じ技能持ち同士では決着がつかないからな。
「これからお前には技能の技量を高めるのと最低限必要な技能を覚えさせる。これからは午前はランニングに筋トレも増やす。そして午後には技能を高めると同時に増やしていく」
「分かったな?」と聞いてくるギンジに俺は元気よく返事をした。
次からは話を、展開させていきます!