訓練3→感覚操作
俺の周りは立方体の結界に囲まれさらに強度も強く抜けられそうもない。
そして目の前には時折見せる真剣な表情のギンジ。
何か俺の意志というより外堀を埋められたような気がしなくもないが…ここまできたら覚悟を決めてやることにしよう。……どんな方法だろうが目標は一緒だからな。
「……とりあえず付けるといきますか」
俺は手元にある胡散臭さMAXな指輪を人差し指に嵌める
「こっからどうなる事やら」
俺は今、目の前の俺が囲った立方体方向を眺めている。
「……ぐっがぁぁぁぁ!」
「……っ!?始まったか……。さてさて何が出るやら、蛇が出るか?竜が出るか?それとも龍か?そらとも…化け物か」
立方体の中でジンが苦しみ始めた。
本能の指輪を嵌めたんだろう。【感覚操作】が100%つまり最大で発動したせいか、痛みのあまり喚いて気を失って…を延々と繰り返している。
「【感覚操作】か。感覚操作とはいったいどこからどこまでの事を指すのかね」
あいつの才能カードを見せてもらってからずっと考えていた。
そもそもだ。あいつらの世代はおかしすぎる。
サウンド村でまず3人S級が出ることも異例すぎる。
さらに王都の方でもS級が出たって話だ。
「S級のバーゲンセールかよ」
ついつい乾いた笑みと共に独り言を呟く。
それにだ。ジンの才能にも驚いた。
ジンの才能に出てる【感覚操作】も何年以上も出なかった才能だ。
もっとおかしいのは【魔眼】だ。
あれを見た時は目が飛び出るかと思った。ジンの手前頑張って表情を取り繕ったが。
【魔眼】なんて才能ここ何年どころじゃない。もう何十…へたすりゃ何百と出ていなかった才能だ。
あれはランクCなんて付けられているが…実質未知数といっても過言では無い。
「ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁっ!ぐっ!」
「おいおい…もう意識を保てるようになってきたのか…?」
ありえない…。
今あいつの感覚は【感覚操作】により身体全体が敏感になっている状態だ。【感覚操作】の範囲は分からねえが少なくとも身体内の触覚、視覚、聴覚、痛覚。
感覚なんてすごくあるが、俺の予想なら今のあいつなら最低、空気に当たるだけで激痛がはしるレベルにはなっているだろう。それをまだ何時間だ?
俺は魔袋から王都で購入した時計を取り出した。
始めた時間から6時間経っていた。
その時計の時刻を見て俺は冷や汗が出た。
「おいおい…マジかよ…?」
俺がつい呟いてしまっても仕方ないだろう。
あいつの精神は鋼かなんかで出来てんのか…?
「もともとアイツが耐え切る…もしくはギブアップするまで俺も起きとくつもりだったが、これは目が離せねえな」
ふっふっふ俺がシリアス何てキャラじゃねえな
1日目
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
何だよこれ!?空気が当たるだけでまるでナイフで刺されたかのような痛み、音からの情報で頭はもう既にパンク寸前、いやもうパンクしてるだろう。
どこを見てるのかが分からない視覚。
くっそが!これが【感覚操作】の100%かよ!
くそ!【感覚操作】の癖して操作なんて全く出来ねえ。
一つだ。まずは一つ、制御するぞ。
視覚を制御してやる。
まずは1点に集中だ。
くそギンジの顔を眺めて笑ってやる。
ギンジの顔、ギンジの顔、ギンジの顔…
見ーーーーーぇた…………
最後に視線に入ったのはギンジの顔の髭の剃り残しだった…
「ぐぁ!」
痛みにより気を失っていた意識が急激に覚める。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
くっそが!相変わらずいてえなこのやろう!
だが、始めに比べたら痛みは多少マシになった
もう1度だ、視覚を操作してやる。
………よし。とりあえず100%でもギンジを視認することが出来た。
ギンジ意外と剃り残し多いよ……
次だ、次は8割、5割と操ってやる。
そんくらい出来ないとあいつらには追いつけねえ!
「がっ!?がぁぁぁぁ!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
くそ…集中だ。集中しろジン。視覚を操る。
どうすれば操れる?眼の精度を下げるか………
どうしたら…眼を悪くするイメージならどうだ!?
でき…………た。いける。操れた。
この調子で他も…………。
痛みに脳が耐えきれなかったのか俺の意識は闇へと落ちていった。
2日目
「はっ!?」
またもや肌、いや身体全身に刺すような痛みがはしりジンは痛がりながらもそのやや鋭い目付きの瞳を開ける。
しかし、身体が慣れてきたのか身体全身への刺すような痛みは最初の激痛に比べると大分マシになってきていた。
それでも普通の精神の持ち主なら1分持てばいい方の激痛だが。
意識を失う前に成功した視覚操作を再度試みてみると1度成功したこともあってか先程よりスムーズに操作することが出来た。
「ぐッ!?」
身体への痛みはだんだんと慣れてきても頭への情報がどんどん入ってきていることは変わりないためジンの頭の中はどこまでの距離から拾ってきたのかさえ分からない程の距離の情報まで届けられ常に頭がパンク寸前だった。
「ッッ!?つ、次だ、次。聴覚…を何とかしないと…」
口では言えてもいざ行動に移そうとすると何をどうすれば聴覚を操れるのか考える暇もなかった。
そしてまだ何も思いつかないまままた意識は闇へと落ちていった。
3日目
これで何度目の目覚めだろうか?
何度も何度も聴覚の操作を試みるも痛みにより考えがまとまらず行動に移す前に気を失っていた。
しかし人間は環境の変化に適応し変化していく生き物である。
何度も何度も肌への痛みや頭のパンク寸前という普通の人間なら直ぐに廃人と化してもおかしくない状態でもジンは何とか耐えてきた。
そのためか意識が戻るたびにどんどんと頭の痛みも減っていき、肌への刺すような痛みも和らいできているような気がする。
大体20回目の意識の目覚めでジンは聴覚の操作を成し遂げた。
そしてそのまま触覚の操作も成し遂げ、取り敢えずの基本的な感覚は操作できるようになったのだった。
「もう感覚を身につけたのか?」
【感覚操作】をしっかりとコントロールできるようにするための訓練が始まり三日目が経ったところだった。
今日もかかさずジンへと目を向けるがその成長速度は目まぐるしいほどだった。
「くっはははははははは」
思わずギンジは声を大にして笑っていた。
「おいおい、マジかよ!あいつの言っていたことには基本【操作】系の才能持ちはそれをしっかりと身につけるのに最短でも1ヶ月はかかるとか言ってなかったか!?」
そう。俺の知り合いによると【操作】系の才能持ちはそれに身体を適応させるために時間がかかりそれ相応の時間がかかるとギンジは言われておりそれだけの時間がかかる事の覚悟もしていた。
しかしいざやって見るとまだ三日目にも関わらずもう普通に立ってやがる。
これを見ちまったらもう笑うしかねーじゃねーか!
俺は上機嫌になりながらその光景を見ているとジンが結界の壁をコンコンッと音を立ててここを開けろ!と訴えかけてきた。
「何だ?もう出ても大丈夫なくらいにはなったってか?」
「解!」
結界を叩いて意思表示が出来るまでコントロールが出来たのだろうと俺は思い結界を解除した。
「ギンジ。けっこう時間がかかったが何とか出来たぞー」
時間がかかった?
はは!また俺は笑みが浮かび上がってきた。
こいつは自分の異常性を理解してねぇ!まるで俺は凡人とでも言いたげな表情をしてやがる。
「わはははは!随分早く終わったじゃねーーーー」
「ーーーっ!?は、は、鼻が!?や、やばいやばいやばい嗅覚とかそんなん分かるかぁぁぁ!」
「か!ってはい?」
俺がジンを褒めようと声を掛けるとジンは突然鼻を抑えながらまたもや気絶していった。
「ああ…嗅覚か。そう言えば結界内は匂いとか全然ないもんな…」
鼻を抑えていた事で嗅覚の部分だと気づけた。
嗅覚の事は全く頭の中にゃ入ってなかったなー!
自分の頭に少し反省しながらも途中勇ましく見えたジンは今や見る影もなくだらしないジンになっていた。
わははは!…締まらねーなージン。
その後もジンは目覚めては鼻を抑え気絶…の繰り返しを延々と繰り返し15回目でやっと制御に成功したのだった。
もっと上手く文章書けるよう頑張ります!