出会い
ちょっと時間無くて無理矢理まとめた感あるかもです
「あーそうだ。そのあと結局迷ってぶっ倒れたんだっけか」
目の前にいるイッカクに注意しつつもここ最近を振り返っている。
「とりあえず、今からが勝負だな。勝てば官軍ってな」
ギィャャーー
2、30メートル離れたところからイッカクは真っ直ぐ走り出し俺に迫ってくる。イッカクの中でも強い個体なのかいつも狩っていたイッカクよりも素早い。
そのまま俺の首筋めがけて飛び込んできたーーーーー
あまり動けないため首を動かしつつ紙一重で躱す。
「痛っ!?…おいおい、もしかして痛覚まで感度上がってるってか?」
躱したが、イッカクの爪がジンの肩に掠り今まで感じたことがないくらいの痛みとなり襲いかかる。
今にも気絶してしまいそうな痛みだが唇から血が出るくらい噛み何とか持ちこたえる。
こんな状況でつい考えてしまう。俺がもっと今すぐに使える単純且つ強い才能だったら…
あいつらだったら…と。
「くそったれが…。これに賭けるか。なんだかんだ言ってこれが今の俺の一番の武器だしな。」
そう言い懐から一つの短剣を取り出しいつもの態勢をとる。
ジンの最後の賭けとは投剣だった。
普段のジンならこの距離なら確実に当てられるを。しかし、今のジンは手負いで気絶寸前。確率は良くて5割…といったところだ。
ジンは一つ息を吐くと目の前のイッカクに集中した。
ジンの感覚が研ぎ澄まされ今のジンが見ているのはイッカクへと当てるための道筋だけだった。
さっきまで諦めムードだったとは思えないほどの集中力だ。
普通なら震えるだけだ。開き直ったとしてもそう簡単に本能が死の恐怖から逃れることを許してくれない。
だが、ジンは精神力に関してだけは"異常"といえた。
それは必然的なことだ。幼い頃に両親が死亡。天涯孤独の身となり村で親切な人達から泊まらせてもらったことがあったとはいえ基本家に一人。近所から食べ物を貰っても底が尽きたら自給自足。
普通ならまだ6歳頃の子供がそんな生活をしていたら簡単に野垂れ死ぬか、どこかに引き取ってもらうだろう。しかし、ジンは頭の回転が早く、いつかは一人で生活をすることになることを悟った。
そのため、両親が死んでからいざという時は大人びた感じになってしまった。
「ギィャャャャ!」
イッカクがこれで決める!と言わんばかりに迫ってくる。どんどんジンに近づいていく。
ジンは短剣を投げる力だけは残しつつ、他は全て横にずれることに費やし、横に少しずれることが出来た。
そして横にズレ足が着地した瞬間、投げた。短剣を。
イッカクはジンをこれで終わらせるべく自身の全速力でジンに向かっていた。しかしここでジンが少し横にズレたためジンに合わせて同じように曲がってしまった。曲がった瞬間イッカクの瞳に映ったのは曲がるのが分かってたかのように向かってくる短剣だった。
「ふぅ…何とか勝てた…か」
何とかイッカクを倒し安堵するジンだが、一気に集中が途切れていった。
「うわ…何とかここを乗り切ったってのにこれかよ…あいつらだったらもっと簡単に倒せたんだろうな。」
悪態を付きつつも気力の限界だったジンは逆らえずに気を失ってしまった。
✱✱✱
「ん……いい匂い……!?」
眼を開けるともう太陽が沈みかけて夕暮れで色な空が映った。近くから鼻をくすぐるような香ばしい匂いを感じた。
「ん?おー坊主。やっと起きたか」
声がした瞬間背筋が凍りついたように寒気がした。
俺はその声が聞こえた方向に対峙するように後ろに飛んで下がりつつ立った。
目の前に映る男は腰に片手剣?を腰に携えたどこか軽く見えた。
「あんた誰だ?何でこんなとこにいるんだ?なぜ俺を介抱していた?」
俺は今すぐ思いつく疑問を片っ端から尋ねる。
「おいおい、最近のご時世の餓鬼はこんな警戒心強いのかね…?」
目の前にいる男は独り言をぼやきつつ今も燃え盛っている焚き火へと手を伸ばし持ち上げる。
「あ…それ…」
「俺は冒険者だよ…ま、とりあえずお前が倒したコレ…食おうぜ?」
男が持ち上げたものは俺が倒したと思われるイッカクのこんがりと焼けた肉だった。
イッカクをこんがりと焼いた肉はとてつもなく美味かった。村でも食べたことはまあまああったけどさっきまで腹が減りすぎていたこともあってとてつもなく美味しく感じた。
食事の一番のスパイスは空腹だな…
食べ始めは食べることに集中していたせいで気にならなかったが何故か俺の横にいるおっさんが友好的だ。
「ははは!もっと食え坊主!もっと食って大きくなれよー!」
「おいおっさん。そろそろ教えろよ。あんた誰だ?」
俺が険しい表情で聞いてもおっさんは豪快に笑っていた
「俺はなー、ギンジってんだ!ちなみに何で俺がここにいたかというとだなーある村に向かってたんだがなたな…途中で迷っちまったんだよ!」
ギンジはそう言いのけてまた豪快に笑う。
「おっさん。もしかしてそのある村ってサウンド村のことか?」
ここら辺にある村といったらサウンド村たわろうとジンは思いギンジに尋ねる。
「おう!そーだ!サウンド村だよ!そこにいるレンってやつに会いに来たんだよ!いやー、10年振りに親友に会うんだよ。何だ坊主。お前サウンド村出身か!それなら案内してくれよ!」
さっきまでずっと騒がしかったギンジは親友の事を話す瞬間優しげに話し出した。
「俺は坊主じゃない。ジンっていう親からもらったれっきとした名があるよ!…おっさん…あんたレンに会いに来たって言ったか…?」
目の前にいるおっさん…ギンジはレン…という言葉に素早く反応した。
「そうかジンかー。で、ジンお前レンを知ってるのか!?」
「知ってるも何も…俺の父さんだよ」
「は!?はぁぁぁぁぁ!?」
俺がそう言うとギンタは途端に固まり、奇声をあげて叫んだ。
「…で、なんかその…証拠とかはあるか?」
さっきまで初対面の癖に馴れ馴れしかった男とは思えないほど慎重だったため俺はつい目を丸くしてしまった。
「父さんから俺の名前聞いたことない?」
「いや…確かにジンとは言ってたけどよ。もしかしたら他のやつがいるかもしれねーからな」
「…分かったよ。ほら」
比較的小さな村に同じ名前のやつが2人もいるとは思えなかったがこのままじゃ平行線だったため俺は証拠として出す。
「これ…は、レンがいつも大事にしてたじゃねーか!てことはお前…マジでレンの息子か!?」
「だからさっきからそう言ってたじゃん。」
ギンジは俺がレンの息子だと分かると先程まで感じていた小さかった警戒の色が完全に無くなりさらに馴れ馴れしくなった。
「ちょっ…なんだよ。ほっぺつねんなって。……で、おっさんは父さんの何なんだ?」
急に俺に近づいたと思いきやほっぺを引っ張ったりと身体のあちこちが触られる。
そろそろ離れてほしいと思った俺は話題を変えて尋ねた。
「俺か?俺はそうだな、レンが…お前の親父さんが冒険者だった時の戦友兼親友やってたんだよ!」
俺はギンジの言葉を聞いて耳を疑ってしまった。
「父さんって…冒険者だったの…?」
俺が訝しげに聞くとギンタは何を当たり前なことを…とでも言いたげな表情をしながらも答えてくれた。
「ったりめだろーがよ。あいつは冒険者の中でも高ランクのAランク冒険者でしかも二つ名…『黒影』と呼ばれてた男だぜ?」
冒険者…世界に幾つもあるダンジョンを冒険したり依頼書を受けてそれを解決する職業だ。
お父さんが冒険者…?ならもしかしてお母さんも…?
「えっと…じゃあもしかして、お母さんも…?」
俺は母さんも冒険者だっかのかもしれないと思いギンジに尋ねてみた。
「ああ、アカネのことか。あいつも冒険者で確かA級寄りのBだったぞ。」
両親が両方とも冒険者でしかも高ランク冒険者だった事に驚きを隠せなかった。
「家ではそんなそぶり全く無かったのにな…」
ギンジがいるにも関わらず少し暗い顔になっていた。
そんな俺に驚いたのかギンジは少し慌てて話題を変えてきた。
「ま、まあ!そんなことはともかくな。レンやアカネは元気か?」
「死んだ」
「は?」
ギンジは俺が言った言葉が分かっていないかのように呆けたよあな声を出し聞きおしてくる。
「死んだよ…7年前に」
俺の表情がどんどん無になっていってるのが分かる。
そうだ。父さんも母さんも死んだんだ。
出荷しに行って運悪く事故にあったって…
自分で言っていて何かつっかえる。
何だ?幾ら考えてもわからない。でも頭の中のどっかが何かがおかしいと告げている。端的に言えば直感だった。
ふと、ギンジの言葉が思い浮かぶ。
父さんも母さんも高ランク冒険者だった…
冒険者…しかもAとBもの高ランクの人がただの事故で死ぬのか?
そこまで考えて頭の中がスッキリとしたような感覚に陥った。
俺は一つの結論に至った。
ただの事故じゃない…どこかに人為的な何かがあったんだ。と
そこで何かの泣く声が聞こえた。
顔を上げてみると、ギンジは溢れんばかりに泣いていた。
「何でだよ!?っくそったれ!…くっそがぁ…」
そうだ。ギンジだって辛いに決まっている。
10年ぶりに会いに来たと思ったら知らぬ間に亡き人になっていたんだから。
俺は少しの間下手くそだが少しでも気持ちを吐き出せるように気配を消してできるだけ見ずに待った。
俺だったらこんな泣き崩れてるのを他人には見られたくないからな。
それでも俺は少し頬が緩んでしまった。ここまで両親の事で悲しんでくれて嬉しかったから
何十分、何時間か過ぎたかは分からないが落ち着いてきたのかギンジは泣き止んだ。
「気い遣わせちまって悪かったな。もう大丈夫だ。ジンは今何歳だ?」
「12歳だよ」
「レンたちが死んでからはどこかにひきとってもらったのか?」
「いや、して貰ってない」
そう答えるとギンジは少し険しそうな表情になる。
「何でだ?」
「……どうしてもあの家が良かったんだ。父さんと、母さんと暮らした、あの家が。それに、生活にも苦労はしたけど村長とか近所の仲の良かった人にもすごく助けてもらったから」
俺は全然大丈夫だった。と分からせるために大げさに胸を張ってまでするとギンジは少し安心したかのような表情になった。
「………そうか。所でジン、お前何でこんな所にいたんだ?」
ギンジが両親の為に泣いた時からそれまでにあった警戒心とかが俺からは無くなっていた。
だから俺は全部話した。
神の天啓前でのパーティーのこと、神の天啓後のこと、俺以外はみんな王都にある学園に行ってしまうこと。
ギンジは話を聞き終えると俺を近くに来いと合図してきた。何かよく分からなかった俺はとりあえず指示通り近くに向かう。するとギンジは俺に抱擁をしてきた。
「な、何すんだよいきなり」
「ジン。とんとん拍子に話が進んじまって急に独りになるってなっちまったんだな。大丈夫だ。俺がいる。」
ギンジは再度優しく俺を抱きしめた。
俺はさっさとひっぺはがして否定しようとした。
けれど力が出なかった。気づけば涙が1粒2粒と出てき、やがて溢れんばかりの涙がとなっておらの頬を伝って流れ出てきた。
ギンジは何も言わずそっと俺が泣き止むまで抱擁し続けた。
文章力を上げたい…