プロローグ
とても下手くそで素人くさい文ですがそれでも皆さんが楽しめられたらなと思います!
「ここは…どこだ?」
辺りを見渡すと見えるのは、木、木、木…しかない。
とりあえず立ち上がろうとすると力が入らずまた座り込んでしまう。
なんでか分からず考え込んでいると
ぐぅ〜〜
と気の抜けたような音が出てくる。
その音を聞いて何で俺は力が出ないのかが分かった。
空腹のせいだった。
何で俺がこんな目に……
「はは…自業自得か…」
自嘲するような笑いとともに掠れた声が出た。
ガサガサッ
「!!……何だ、何も無いのか…」
力が入らなくても生命の危機のせいか感覚が機敏になっている。そのせいか、僅かな音でも反応してしまう。
僅かな音といっても30mも離れた位置の…だが。
「何であんな離れた位置の微かな音が聞こえたんだ…?」
その理由はまさにジンがこうなった理由…神の天啓により携わった才能の一つ…【感覚操作】の派生スキルの一つ…【聴覚強化】のせいなのだが、まだ12歳という年端もいかない子供な上、生命の危機な状況のためそこまで思い至らなかった。
「な、なんだよこれ…やめろ!入ってくるな!頭の中に声が響いてくる…なんだよこれ…」
聴覚強化を認識したせいかジンにはまだ扱えていない聴覚強化が勝手に強化されこの瞬間に8割近くまで強化された。
その範囲は広く、半径数キロ近くまで広がってしまった。今、ジンの耳には魔獣たちのうめき声、どこかの街の子供たちの声や大人の笑い声、木を切る音、馬車を引く音…その全てがジンに情報となり頭の中に入ってくる。
「あ、頭が!?…うぁ…ゃ、ゃめろ…いたい…なん…で…なんで…ぉれがこんな目に…」
その時、頭の中に村にいたライトたちの声も一瞬きこえてきた…ような気がした。激しい痛みによる幻聴だったのかも知れないが今の状態でそんな判断はジンにはつけられなかった。
ライトの声、ミルルやソフィアの声…それは楽しげにそれでいてどこか物足りなさそうな声色だった。
だが今のジンには余裕はなく、楽しげな声のようにしか思えなかった…………
「こい…つらのせぃ…で…」
ジンはこいつらのせいでこんな目にあったとその言葉にありったけの言葉を乗せ言い放った。
その瞬間その周りからは音が消えたような…そんな状態になった。
実際はライトたちのせいでは無いが、今のジンは誰かに責任を押し付けないと頭がパンクしそうだったからだ。
3人への感情が憎しみへと変わりそうになったが、変わる直前にある言葉が思い浮かんできた。
『ジン、いいか?これだけはよく覚えとけよ?どんな時でもな友達を見捨てる、裏切るような奴には絶対になるなよ?』
『いい?ジン。あなたが友達の事を考えてるように友達だってあなたの事を考えてるのよ?』
それはジンが5、6歳の頃父と母から言われた言葉だった。その直後にお父さんとお母さんは一緒に畑で育った作物を出荷しに行く!と言って出荷しに行き、そのまま亡き人へとなってしまった。
「そう…だよな。よくよく、考えれば…いっ!?…あいつらも俺のために言ったのかもしれないもんな。いや…多分そうだよな。」
あいつらはそんな仲間外れなんて外道な事いつだってすることが無かったもんな…
そんなことを考えると自然と憎しみなんてものがなかったかのように消えていった。
そして…段々と頭に声が響かなくなっていった。
「あれ?いつの間にか痛いの無くなったぞ?何でだ?」
何故急に頭が痛いのが無くなったのか…理由が分からないがジンは「ま、いっか」と軽い調子で言った。
「俺もう死ぬのかなぁ。死亡理由が空腹はないって…。なんていうか逆に清々しくなるレベルだよなこの状況。まだ冒険だってした事ないのにな…」
先程までとは違いジンからは絶望的な状況とは裏腹に柔らかく明るい声が出ていた。
「さて…ととりあえず少しでも生にしがみつくために抗ってみせますかね…」
ジンは再度立とうと試みる。
さっきまでは全く立てなかったのに考えが変わったからか生への執着が強まったからなのかなんとか立ち上がることが出来た。
とりあえず何か食べるものでも…と辺りを散策使用とすると
ガサガサッ
音が聞こえその方向を見てジンは苦笑いを浮かべた。
「ここでイッカクかよ…俺ってば今日に限って運悪すぎねぇ…?人生ハードモードにでもなった気分だよ」
草陰からイッカクが出てきた。
ジンは村の習慣の狩りでよくイッカクを狩っていたがそれはあくまで4人パーティーだったからだ。
4人で役割を果たすからこそ比較的楽に仕留めれた。
だが今は一人、しかも空腹であまり動けない状態だった。
見逃されるという線もない。イッカクは可愛らしい姿に見えて肉食だ。獲物が弱っていてしかも一人なら遠慮なく襲いかかってくるだろう。
「はは…あいつらがいたら楽勝なのにな」
ジンはそんな言葉と同時に最近のことを思い出していた。
✱✱✱
ガサガサと森の中を走る音が聞こえる。
「ジン!そっちに行ったわ!」
「ジン!そっち行ったぞ!」
「おう…まかせとけ」
そう言って俺には脇目も振らず逃げようとする頭部に一本の角が生えたうさぎ型魔獣…イッカクの脳天に一寸の狂いもなく突き抜け、イッカクは絶命した。
「相変わらず、頭おかしいくらい正確な投術だよな」
「ほんとにね…私なんて全く当たらないのに…」
「それのお陰で楽できるんだから感謝しろよ…」
「はいはい。3人ともそのへんにして早く村に戻ろうよ」
絶命した一角の周りに立つ4人。
一人は俺ことジン。俺の隣の金髪でいかにも爽やかそうなイケメン男がライト。俺とライトの正面にいるさっき文句を言っていた青髪で肩くらいまで伸ばした髪に整った顔をしている美少女がミルル、その隣にいる麻生色の長髪で整った顔をしている美少女がソフィアだ。
俺たちは全員同じ村に住んでいて同年代の子供も少なかったため自然と仲良くなった。
村の習慣で子供は12歳になると森の浅い所で4人1組で狩りをすることが義務付けられている。
「さて…じゃあ誰がこれを担ぐ?」
俺がそう言うと4人一同がある一点…カゴいっぱいに詰められたうさぎ型魔獣の死骸を見た。
「こういう時こそやっぱり男の子の本領だと思うのよ」
ミルルは俺とライトに向かって言う
「それこそ差別って者じゃないか?男とか女とかそんなこと気にしてるから男女差別なんて問題が出るんじゃないか?」
「それはそもそも男が女だからって軽視して冷遇するからそんなことに発展したのよ。
だから少しくらい男は女を気遣ってもいいと思うの。」
「はん…お前を女なんて意識したことねーよ。意識されたいならもうちょい服装に気を使ったらどーだ?」
俺とミルルの口喧嘩はヒートアップしていく。
「はいはいはい。二人とも落ち着いてって。ここは公平にジャンケンで決めないか?」
俺とミルルの本気の喧嘩が始まる前にライトが止める。ここまでがいつも通りの日常である。実際俺もミルルも止められればすぐに止めるくらいの口論で止めてるし。
「おーーーい!みんなー!早く戻ろーよーー!」
「「「わかったー」」」
ソフィアにそう言われ3人は急いで森を抜けるために追いかけていく。
森を抜け村に戻る途中、俺たち4人は歩きながらあることについて話していた。
「…そろそろあの時期だよね?楽しみだねー!」
「ああ…神の天啓だよな?どんな才能貰えるんだろーなー」
「あはは…みんなきっと役に立つ才能を貰えるよ。きっと。」
「…才能を貰おうが私達は変わらず仲良くいたい」
いつも表情にあまり出さないミルルがそう言う事を言うとは…
俺も驚いているがライトたちも驚いているようだった。
ミルルも恥ずかしいのか少し顔を赤くしてそっぽを向いている。
そんなこんな俺たちはそれぞれの才能について話しつつ、十日後に迫った神の天啓に想いを寄せていた。
俺たち4人が欲している才能はそれぞれ違うけれど、それでも一つだけ考えていることが同じことがあった。
それはこれからもこの4人誰一人欠けることなくパーティーを組みいつかは王都にあるダンジョンで探索をしたい…という子供ならありがちな…でも夢に溢れている事だった……。誰もがそれをいつかできると信じて疑わなかった……
絶対にそれが出来るという確証も保証も無いのに…だ。
とりあえず次は回想ですかね。