11月11日は○○の日イィィ!!
色々とお気に染まない部分があるとは思われますがサラリと流して下さると有難いです。
地下鉄を出ると大通りには人が溢れていた。ショーウィンドウを覗いて歩く人や歩道でパフォーマンスをする若者達を夕日が赤く染める。
「そっかぁ土曜日かぁ。」
就職活動と称して遊び歩く大学生の修平には曜日の感覚も失われて久しい。何せ新卒者は減る一方だ。景気が回復しても人手が足りず、就職戦線は超売り手市場なのだ。三流大を卒業する修平自身内定を複数得ることが出来ている。
それにしても普段より人が多い。特に前方では群衆が車道まで溢れ出している。大通りのど真ん中には高台に上り、何やら演説を振るう人影とその周りで整列する黒ずくめの集団。‥というか戦闘員?
そう、戦闘員。演説しているのも何とか将軍(名前何だっけ)だ。幼稚園のバスを乗っ取ったり町中で暴れ騒いだりするあの人達。昔は毎週末ごとに派手に悪さをしてお茶の間を騒がせていたそうだが修平達の世代には馴染みが薄い。極々たまにニュースで見かける程度で、あまりの衰退振りに
「不景気で潰れたんじゃね?」
とか言われながらも思い出した頃に何かしている。
以前見たニュースより明らかに顔色の良い何とか将軍が一際声を張り上げた。
「そう、11月11日は良い戦闘員の日!」
「「「イィィィ!」」」
戦闘員が将軍の台詞に合わせてポーズを取りながら奇声を上げる。
「我々は君たちの力を求めている!そこのひ弱な青年!戦闘員になればマイク・タイソンにだって勝てる!」
‥誰だよそれ。
「そこのヨボヨボの老人!改造手術を受け怪人となれば背筋は伸び関節痛も怖くない!退治されたら残された家族に大金を残せるぞ!」
‥考え込むなジジイ。退治される前提だが良いのか。
「そう、大金!我が社は危険手当、出張手当、改造手当を完備しており給料は一流企業にも引けを取らない!年齢制限等無く身体的な障害も不問だ!」
「なにが大金だ早く車道を開けろ!」
見ると一人の青年が街灯の上に立ち啖呵を切っている。よく上ったな。
「来たなハヤト。見るがいい中年諸君!やつは若く見えるがもう五十を超えた!我が社で怪人となったおかげで20年以上経った今でもあの運動能力を保っている!」
「勝手に改造しておいて自分から手術を受けたみたいに言うな!改造手術の跡が体中にあるせいで温泉にも入れねえし真夏でも長袖長ズボンしか着られないじゃねえか!」
「技術は進歩している!今では手術の痕跡など何一つ残らない上に日帰りも可能だ!」
‥民間の病院じゃ考えられないな。
「あああ人々を惑わせるな将軍!良いから失せろ!」
口で負けたハヤト氏は舌戦を打ち切るとバッタのような姿に変身し実力行使に訴えだした。固唾を飲んで見守っていた群衆が慌てて逃げ出す。修平は周りの人達に合わせて走りながら将軍の台詞を思い返していた。
「やっぱり会社だったんだ‥。」
民様の会社では人は足りていますか?
給料は上がらず人手も増やさないのに仕事は増える?いやぁお仲間ですな(^o^)。