第二話 「動き出す歯車」
電話の相手は親友の健人だった。
「良かった…繋がった…健人大丈夫か?」
大丈夫な訳ない。こんな状況で普通になれる方がおかしい。
「一応、大丈夫…。」相手に聞こえるかどうか不安なくらい小さい声だった。
「えっと…まずは合流するか。」そう健人は言った。
健人は昔からそうだ。何があっても冷静でとても数え切れないくらい良い所がたくさんある。
「どこに合流する?」誰でもいいから誰かと会いたかった。それは健人も同じであろう。
「拓海の家でいい?」健人はそう言った。
健人が俺の家に来るのはいつぶりだろう。思い出そうとしても、思い出せなかった。
俺と健人の家はそう遠くはない。歩いて5分や10分で着くだろう。
「分かった。」そう俺が言ったら電話が切れた。
俺はとても不安でしょうがなかった。
5分や10分で会えるというのにそれがとても長く長く感じた。
そうしていると俺が住んでいるアパートのインターホンが鳴った。
そこに映し出されていたのは久しぶりに見る健人の顔と、なぜか俺の幼なじみの綾香と、どこかで見たことがある長身の男が立っていた。
「今、開けるわ。」そう言ってドアを開けると、綾香が今にも泣き出しそうな顔で飛びついてきた。
「おお…大丈夫か?」大丈夫な訳ないのにやはり言ってしまうのは何故だろうか…未だに分からない。
「久しぶり!」健人が笑って俺に言ってきた。その顔は中途半端な笑顔で満ち溢れていた。
「久しぶりだけど…その後ろの人は?」
とても気になっていてしょうがなかった後ろの人は健人が説明するには健人の先輩らしい、俺も何回かは遊んだことがあるらしいが覚えていない。健人の先輩は今は先生をしていて僕達のひとつ上の先輩である。
「よろしく。」先輩はとても不安そうにそう言った。
まずは3人をソファーに座らせて、急いでドアを閉めて鍵をかけた。