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サヨナラ  作者: 823
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後編

 俺は物心がつく前から“幽霊”が見えていた。電柱の陰、歩道、公園とかに老若男女の人や犬猫などがいた。あいつらは俺にさびしい。苦しい。憎いと様々思いをぶつけてきたり、一緒に行こうと何処かへ連れて行こうした。その度に母さんや叔父が祓ってくれた。俺が四才の時に二人から“幽霊あいつらから身を守る練習をしよう”と言われた。それから小学校に上がる前まで叔父の所で修業をした。内容は秘密だ。

 入学してから小四ぐらいまではそれなりに友達がいたが、それから中学卒業するまでは友達はできなかった。何故かというと、小二の終わり頃突然イジメが始まった。二年は、ノート隠しに教科書に落書き程度だったが、三年に上がったとたんに暴力が加わった。暴力といっても蹴られたり頭を叩かれたりするぐらいだ。先生は、止めなかったかって?あいつらは見えないとこでやってたから気づかなかったんじゃないか?

イジメは三年の秋頃に終わった。あいつらが突然怪我などをしたからだ。それから回りは避けだした。中には好奇心で一緒にいたりするのもいたが長くは続かなかった。先生達もどこか腫れ物にさわるように接してきた。元々俺には噂とかがあったからなだから高校は俺のことを知らない他の県の学校にした。母さんは叔父の家の近くにある学校はどうと聞かれたが、叔父が神主をやっている神社は地元とかで有名なのでその学校に行ったら面倒なことになると思いやめた。そこで、父さんが俺が通ってた所はどうだと聞いてきた。私立だが入学金や授業料が安く寮もあると言われそこにした。それが私立山城学園だった。




「これからお前を除霊する。」

「…えっ。何言ってんの頭大丈夫?」

大丈夫だと言うと本当にという目を向けてきた。ここで俺が反論したら話がそれそうになるのでやめた。俺はコイツと違って空気が読めるからな。俺は数珠を右手首に巻きけ左手にお経を持った。

「二週間前のこと覚えてるか」

「二週間前のこと?」

「そうだ」

「えっと~。いつも通り学校に行って授業受けて昼に一馬とお弁当食べながらゲームの話して午後の授業受けて適当に掃除してHR 終わっていつも通り帰ったんじゃないかな」

 それがどうしたのと不思議そうな少し困惑した顔をする。

「大体はあってる」

「...大体は?」

「帰りはどういう風に帰ったんだ?思い出せ」

「どうって、いつもど」

「思い出せ!」

「?!わっわかった...」

 俺が大声を出したらビクッと肩を震わした。普段大声を出したりしないからな。それから朱鳥は額に右手を当ててうーん、うーんと唸りながら思い出そうとしていた。一、二分程唸っていたが額に当てていた右手を下ろし、にっこりと笑いながら。

「覚えてない!」

「......」

「だっだって二週間前のことだよ。なんか大事とかイベントとかないと覚えてるわけないでしょう普通」

朱鳥は、最初は言い訳をしたが、最後は私は悪くないみたいなことを言った。

「...はぁ」

「溜息つかないでよ」

「雰囲気読めよ」

「私が雰囲気読めて無いみたいに言うのやめて!」

「二週間前に」

「いきなり話し戻すのもやめてよね!!」

「……続けるぞ」

「ハイ、オネガイシマス」

 俺は、左手を握りしめ朱鳥の頭に一発やってやった。朱鳥は、頭をおさえしゃがみこんで俺を下からにらんだ。

「おもっいっきりやんなくてもいいじゃない」

「うるさいから叩いただけだ。続きを話すぞ」

俺は右膝をたてて地面に座った。朱鳥も地面に体操座りに座った。

「二週間前。帰り道に俺とお前は通り魔に刺されたんだ。」

「通り…魔?」

「あぁ。さいわいにして駅の近くだったから犯人は交番のお巡り捕まったし救急車も早く来た」

「じゃぁ何で私が死んだの」

「病院まで運ばれたけど刺され所が悪くて着いたときには駄目だったそうだ。俺も脇刺されて気ぃ失って病院に運ばれたんだと」

「そっそうなんだ...」

 朱鳥は、頭を下げ顔を膝で隠した。

「俺が目を覚ましたのは事件から二日後で、お前が死んだと知ったのはもう一日後だった」

「...」

「犯人に刺されたのは俺達の他に地元の中学生が二人に通りがかったおばさんの三人で中学生の一人が重症だ」

「......」

「犯人の動機は仕事がクビになり自暴自棄になりやったそうだ」

「......フフッ」

「...朱鳥?」

「フフッフッ...アッハッハッハハハハ」

 朱鳥は、肩を震わせていたが下げていた顔を上げ笑いだした。そのまま顔をこちらに向け。

「じょっ冗談でしょ?プッ一馬って冗談とか言うんだね」

「まだ信じて無いのかよ」

「当たり前でしょう。だって一馬、私に“触れる”じゃない。幽霊って普通“触れない”んでしょ?」

 このぐらい知ってるよとまた笑いながら言った。俺は溜め息を一つ吐き、鞄からコイツの好きな飴を一つだした。

「あっイチゴ飴!しかも私の好きなのじゃん!!ちょうだい!」

「ホラよ」

「投げんな!」

俺は飴を投げた。朱鳥は取ろうと手を伸ばしたが飴は、朱鳥の手をすり抜け地面に落ちた。

「う...そ...なんで」

「理解したか?お前が死んだって」

「嘘よ。何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!!...何で取れないのよ?!」

朱鳥は、地面に落ちた飴を拾おうと何度も手を伸ばすが取れず、手を握りしめ地面を叩き地面にうつ伏せた。俺は立ち上がり朱鳥に近寄りしゃがみこんみ背中に手を添えた。

「幽霊の中には自分が死んだと気づかないのがたまにいるそれが浮遊霊だ」

「それが私もだって言うの」

「そうだ」

「...一馬は、何で幽霊に触れるの?」

「さぁな。霊感が強いからじゃないか。だけど俺みたいのは滅多にいることじゃない...と思う」

「...」

「それとお前が浮遊霊で良かったよ」

「何で」

「地縛霊だと場所によるけど人前で除霊しないとだろ」

「...プッ理由が恥ずかしいからって一馬って以外と恥ずかしがり屋なんだ」

「うるさい」

「アッハハハハ」

朱鳥は、また笑い始めた。さっきより大きな声で。笑い終わった朱鳥は、うつ伏せた体勢から起き上がった。

「ハァ~ァ。一馬の以外な一面を知れて良かったよ」

「俺的には屈辱的だけどな」

「...除霊するんでしょ?早く始めようよ」

「もういいのか」

「なんかスッキリしちゃった。」

「本当にいいのか」

「そのためにここに来たくせに今さらそんなこと言う」

「そうだな」

俺は、朱鳥から距離をとり、お経を地面に広げ両手を合わせた。

「始めるぞ」

「痛くしないでよ」

「...」

「無視すんな!」

「......」

「......」

「じゃぁな。次は長生きしろよ」

「言われなくっても百歳ぐらい生きるわ!!」

俺はお経を唱え始めた。最初は、あまり変化はなかったがだんだんと朱鳥の姿が消え始めた。そして、朱鳥は最後に。

「短い間だったけどありがとうね。」

消える間際にそう言い残した。他にも色々と言うことがあるだろうと思いながら俺は涙を流した。


 それからしばらくして母に電話した。

「今終わったよ。」

「そう。早く帰ってきなさいよ」

「わかった」

 電話をきってから立ち上がり数珠やお経を鞄に入れて歩きだした。

今度は花と飴を沢山持って墓参りしよう。


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