∮灰魔女の気紛れ 共通①
善と悪、白と黒、魔法使いの里であっても私には合わない。
良いも悪いも決めることができない。
私はどちらにも属さない灰の魔女。
何が正しくて、何が悪いの。
私は何が好きで何が嫌いなの。
わからないからはっきり決めない。
「ここにあるのを一つずつ、全部種類もらうわ」
「ありがとうございます!」
私はカラフルな香水を見ていた。
どれも魅力的、だけど突出していない。
特に好きな匂いも嫌いなのもない。
だから全て買うことにした。
逆に全部嫌いなら全てをあきらめていた。
私は欲深く、そして欲がない。
「香水キツイね…鼻が曲がりそう」
失礼なことを言ってきたのは灰色の髪、奇抜な服で首にチョーカーをした男。
「まだつけていないのに…」
匂いなどわかるわけがない。
「まあ、いいけどね」
「貴方は何者なの」
「知りたい?君が名乗ったら教えてもいいよ」
「私の名前が知りたいの?
教えてあげてもいいけどどうしようかしら」
気分的に自分から名乗るのは嫌だったので、同じことを返してやる。
「へぇ…オレのことを先に聞いたのは君のほうなのにね」
「名前なんて最初から聞いていないわ」
貴方は何者、と聞いただけで、貴方の名前とは聞いていない。
「負けたよ…オレの名前はチェスカー
存在は、人のようで人ではない半端な存在」
「教えてくれたから私も教えてあげる
私はグレーラ、黒でも白でもない中立の灰魔女よ」
「ふーん…?またね」
それだけを言って、去って行った。
「すいませーん」
「誰よ」
ここは人間界なのだから、人間だろうけど、そして彼はいかにもザ人間の男。
「あっあなた魔女さんですよね!?」
「だから何よ?」
私が魔女かなんて灰色のトンガリ帽子を見ればわかるだろ。と言ってやりたい。
「はい、自分ノーマっていうんです!自分は取り柄とか存在感とか皆無な人生でした!
だから魔女さん!自分を魔女してくださいっす!!」
「…男は魔女にはなれないわよ」
面白いやつ。
「えっとあの!弟子にしてください!!」
「弟子はとらない主義だから」
どっちつかずの私みたいになったら彼は生き辛くなる。
「存在感がないのも存在感になっているわ
スパイとか向いてるんじゃない?」
存在感がないのでは個性のカタマリである魔法使いには向かない。
彼には諦めてもらおう。