○残酷な白魔女 共通①
「ピュイアさんありがとう!」
私は皆の病を治す、心優しい白魔法使い、白魔女ピュイアだ。
「お陰で治ったよ!」
皆から慕われ、好かれ、にこにこと愛想を振り撒く。
そして誰もいなくなって、独りの時間。
「…消えろゴミ共」
生まれたときから白魔法を使って、いい子を演じるのはもう疲れた。
魔女が尊敬する魔女がマデェールなんて、決めつけないでもらいたい。
「弟子その1」
「はっ!ドビュエ様!」
私が尊敬するドビュエ様には娘がいる。
でも、その娘はこんなに素晴らしいお方の弟子ではない。
私は病を癒す白魔女にして、悪名高い黒魔女ドビュエの最初で最後、唯一の弟子だ。
「ピュイアさん!」
どんくさいが顔はいいことで有名なクリルノード。
話したことはないが名前と顔だけは知っていた。
そして背後にいる知らない眼鏡。
息を切らしてどうしたのだろう。
診察時間はとっくに過ぎているのに迷惑だな。
「どこを怪我したんですか~?」
若干笑顔がひきつりつつ、優しくむかえる。
「えっと…オレじゃなくて、こいつなんだ」
「だから…僕はいいと言っているだろう
診察時間は過ぎているのだから診てもらえるはずがない」
(わきまえているじゃないの)
「怪我の程度によりますけど~」
「腕を擦りむいただけだ…こいつに見てもらえと強引に連れてこられた」
クリルノードはお人よしそうだから、大方堅物そうなこいつを見かけて放っておけずに連れて来たようだ。
安易に想像がつく。
それはある意味幸運だったかもしれない。
擦りむいた腕に後発生の毒がついている。
「じゃあ消毒しますねー」
面倒だが追い返すと私の立場が悪くなる。
すぐには毒が回らないが、次の日の朝には永眠していただろう。
「だってオレ怪我なんて全然しないから…白魔女のピュイアさんに会ってみたかったんだよ」
こいつはなんて馬鹿なの、怪我はしないほうがいいだろう。
「会いたければわざわざ俺をついでにしなくても一人で行けばよかっただろ」
来なくていいがたしかにその通りである。
「だって怪我もしてないのに来ても迷惑だろ?」
(意外と悟いじゃない)
「えっと…(こいつ誰よ)」
「エグリーだ擦り傷くらいで手間をかけてすまない」
エグリーという完全初対面の眼鏡は帰ろうとした。
「だめですよ貴方の腕の傷に毒がついていましたから」
もし消毒がうまくいかずに経過が悪くなったら近くで白魔法をかけるしかない。
勝手に帰宅して死なれると私の評判に傷がつくのだ。
「じゃあ、エグリーオレ帰るから」
クリルノードは毒に気づいて、いたのだろうか。
そんなはずはないとエグリーの治療の支度をした。