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第一章

打倒マオウシステムのため、つよくてニューゲームを行った勇者


だが、そこに立ちはだかったのはナビゲーションシステムだったはずの少女『ナビ』だった


ナビから容赦無く繰り出される、ボケの数々

その猛攻は、勇者の力を以ってしてもツッコミが追い付か無い程に激しく…


勇者は、成す術無く叩き伏せられてしまうのだった。


●第一章 ―新たな冒険のやり直し―


―勇者の自室―


ナビ「さて…まずはどこから手を付けて行く?」


勇者「そうだな…まずは勇者として覚醒した事を、国王様に報告しに行くべきか」

ナビ「それで問題は無いと思われる。国王から勇者の認定を受けた方が、色々と行動を起こし易い」

勇者「あぁ、そうだな。それもあった」


ナビに言われて思い出す勇者認定…確かにそれも大事だが、俺には他にも思惑があった


ナビ「ただ、注意して欲しい点が一つ」

勇者「何だ?」

ナビ「言うまでも無い事だが、前回の勇者の記憶は今の世界では本来あり得ない物。下手に口を滑らせれば、思わぬ方向に流れが変わり兼ねない」


勇者「判っている。軽はずみな言動は控え、打ち明ける時は慎重を期す」



―謁見の間―


国王「おぬしが此度の勇者か」

勇者「はい」

国王「後ろの少女は何者だ?」


勇者「妹です」


国王「………」

勇者「………」


国王「では…勇者の使命について、やるべき事の説明を改めてさせて貰う」

勇者「いえ、存じておりますので必要ありません」

国王「む?…そうか。では次に、軍資金として」


勇者「それも必要ありません」

国王「………ふむ、大した自信のようだな。では、何か他に聞きたい事は……」

勇者「あります」

国王「では何を聞きたい?」


勇者「憎しみの象徴として魔王を作り出し、勇者にそれを継がせるか贄にすると言う……この仕組みについて」


国王「なっ…………!!!?」

ナビ「な――――――っ!?」



国王「お主…何故それを!?魔王か?魔王が先に干渉を…いや、そんな筈が無い。まさか、システムが暴走して勇者に暴露を…」

ナビ「いやいやいやいや、それは違う。暴露したのは私ではない」


勇者「国王様、続きを話すにあたり、人払いをお願いしたいのですが」

国王「いや…良い。今この場に居る者は皆、その仕組みの事を知っている」

勇者「それは知っています。人払いをお願いしたい理由はそこではありません」


国王「……よかろう。皆の者、ここは下がれ」


国王様の合図により下がる側近達。その際…見える位置には居ないがエレルの気配も感じられた。

…この時点でも既に潜り込んでいたのか


勇者「あ、エレルだけは残ってくれ。どうせ聞き耳は立てているんだろうが、一緒に居た方が話し易い」

エレル「………何で勇者さまが私の名前を知っているんですか…と言うか、何か性格まで把握されてる気がするんですけど…」


と言って、何も無い空間から現れるエレル。フードを深く被っていて顔は見えないが、声は間違いなくエレルだ


勇者「それも後々ついでに話す。さて、話を戻しても良いだろうか?」

エレル「はーい…」

勇者「ではまず二人に説明を。簡単に言うと…俺は未来から来た」


国王「………なにっ…?」

エレル「…はぁっ!?何言ってるんですか?未来から過去への干渉なんて、そんな事できる筈が無いでしょう!!」

勇者「だから簡単に言うと言ったんだ。実際はもう少し複雑な事情がある」


エレル「いやだからですね………いえ、このまま話の腰を折ってもいけないので続けて下さい」

勇者「すまない。では続きだが…俺の経験した世界は―――」


こうして俺は、二人に前回の出来事を話した



二人とも最初は納得する事が出来ないようだったが…俺の話に信憑性を見出してからは、それに聞き入っていた


国王「成る程…にわかには信じ難いが……しかし…」

エレル「可能性としては十分で、逆に否定しきる事は出来ない内容ですね…しかし勇者さま、それを私達に話してどうするお積りなんですか?」

国王「うむ…その話の真偽に関わらず、儂は国王としての義務を果たす他は無いぞ」

勇者「協力して貰えるのでしたらそれに越した事はありませんが…今はただ、この事を知っておいて貰いたかっただけです」


ナビ「!?」


何も考え無しに不用意な発言をしたのか!? と言わんばかりの視線が突き刺さる


エレル「あ、じゃぁ国王さま、勇者の剣にかけてある裏技だけでも解除しておきませんか?それとも、そんな物は無いってしらを切ります?」

国王「勇者の剣に仕掛けはある…だが、それを解く訳には行かぬ」

エレル「ぇー……」


国王「全てを聞いた今となっても、この勇者の言葉が真実であるという保障はどこにも無い。そして、真実であったとしても…」

エレル「しても?」

国王「あの仕掛けは、勇者が気を違えた際の防衛線。解く訳には行かぬ」


エレル「強情ですねー…あ、私なら解除方法を編み出せるんですよね?やっておきましょうか?」

勇者「いや、良い。国王さまの言葉も心情も尤もだからな。解いて貰うにしても、そこに国王様の意思が無ければ意味が無い」


俺が勇者として覚醒したという事…それは即ち、先代の勇者エイベル様の死を意味する。

ご子息を亡くした国王様が…陥っている、その悲しみを考えれば…勇者とは言え、赤の他人の俺を信用する方が難しいだろう。


国王「…………」

エレル「甘々ですねー……」



勇者「さて、引き続き…別件で国王様にお願いがあるのですが」

国王「…何だ、申してみよ」

勇者「帝国との国境にある領地…あそこは現時点では領主不在のはずですね?」


国王「うむ、その通りだが…まさか」

勇者「はい、あの領地を私にお売り頂きたいのです。売却が無理でしたら、寄付金と任命という形式で構いません」


エレル「………勇者さま、何を考えてるんですか?」

ナビ「………現時点では判らない。勇者の意図が読めない」


勇者「あぁ、そうだエレル」

エレル「あ、はい。何でしょう?」


勇者「一つ―――頼み事をしておいても良いか?」



―エレナの家―


エレナ「聞いたよ勇者くん、勇者就任おめでとう。ナビちゃんも久しぶりだね、元気してた?」


言葉とは裏腹に、あまりそれを良く思っていない様子のエレナ。この辺りは前回と何ら変わりが無いのだが…それよりも


ナビ「うん、元気だったよ。エレナお姉ちゃんも元気だった?」


覚醒の朝に起こされた時もそうだが、ナビのこの豹変ぶりにはどうしても馴れない。



エレナ「それで勇者くん、今日はどうしたの?あ、もしかして…勇者くんのパーティーに私を誘いに来たとか?」


安堵半分不安半分で問いかけるエレナ…前回はエレナをパーティーに迎えたが…


勇者「いや、そういう訳では無いんだ。ただ…胸騒ぎがしてな」


今回はそれを断る。そして…

此処へ来た本当の理由の方へ、意識を配る


村人A「魔族だ!!魔族が攻めて来たぞーーー!!!」


家の外から上がる声。鳴り響く鐘の音。

前回は、あと一歩の所で間に合う事が出来なかった…魔族の襲撃。


勇者「やはり来たか…」



―戦場となった村―


カライモン「グルル……ガァ!!…ァ……ミナ…ゴ…ロシ!!スベテ…コ……コロ…ス!!」


村を襲うのは、カライモン率いる魔王親衛隊。

要である筈の魔王は不在ながらも…奴等は、村人達に恐怖を与えるには十分過ぎる程の力を持っていた。


家屋は焼け崩れ、人々は逃げ惑う…

そんな中、予想外の事が起きた。


エレナ「させない………私が生まれ育ったこの村を、魔族なんかに!」


他者の命…いや、己の命に対してさえ冷めた視野を持っていた前回のエレナ…

だが、今思えば昔の彼女はもっと感情的だった。


ならば、何故…何が彼女を変えたのか?

その答えが今、目の前にあった。

魔王親衛隊に村を滅ぼされ、勇者パーティーに加入してその仇を討とうとしていたんだ。


………にも関わらず、彼女は俺のために命を擲った。

…そう


勇者「だからこそ。今回は………そんな未来にしてはいけないよな」



エレナ…そして村人達と魔王親衛隊の間に割って入る俺。


エレナ「駄目………勇者くんじゃ敵わない。勇者くんは此処で…こんな所で死んじゃいけないよ!!」


カライモン「ユウ………シャ……!!? コロ……ス…ユウシャハ…!!!」

魔王親衛隊員アスモウデス「勇者か……まさかこんな所で新たな勇者に出くわすとは、魔王様に良い土産が出来たぞ」


皆が皆、勝手な事を口走る中…俺は、魔法『凍結の息吹』を使って家屋に回った火を消し去る


魔王親衛隊員ガープ「なっ……これは上級魔法!?なり立ての勇者が使えるような物じゃないぞ!?」


実際になり立てでは無いからな、まぁ驚くだろう。

………だが驚くのはこれからだ。


魔王親衛隊員セーレ「な…何だこれは!?身体が……身体が地面…いや、影に…飲まれ……」

魔王親衛隊員アスモウデス「ぬ、抜け出せな……っ」

魔王親衛隊員ガープ「くっ…空を飛んでも…駄目なのかっ………」

魔王親衛隊員アスモウデス「これはまさか…魔王様の………!?」


その通り。正確には先代魔王からノーブルさまが受け継いだ『貪欲なる影【アングリー・シャッテン】』というスキルらしい。

これにより親衛隊達は一掃され、残るは………カライモン一人。


エレナ「え………嘘っ…こんな高度な魔法を扱うなんて…本当に……勇者くん…なの?」


見ただけでこれが高度だと判るエレナも相当な物だろう。


勇者「その辺りの説明は後でする。今は村人達を守る事に専念してくれ」

エレナ「あ…うん、判った!」


そして俺は、再びカライモンに視線を戻す。

カライモンの様子は、前回俺が初めて対峙した時と同様の物

そう……エイベル様の魔力と記憶を食らい、身も心も狂気に支配された姿だった。


勇者「待っていろ…今開放してやるからな」


そうして………思いのほか苦戦を強いられた後

無事生き残った村人達と共に迎える、勝利の夜明け。


村人達は、疲労困憊ながらもそれに挫ける事無く村の復旧に取り掛かり…

俺は、カライモンの遺体を村外れの倉に運んでいた。



―村外れの倉―


勇者「さて…そろそろ蘇っている頃じゃないのか?それともこう言うか?そろそろ正気に戻っている頃…と」


カライモン「ふむ………これは一体どういう事でしょう?不可解な程に私の事情をご存知のようですが」

勇者「やっといつものカライモンに戻ったか。その調子に馴れてしまったせいか、あっちの方に違和感を感じてしまったぞ」

カライモン「はて…その言葉の意図を掴む事ができませぬが………こうして私を連れて来た以上、何かしらの情報…あるいは交渉を望まれているのでしょうか…」


勇者「話が早くて助かる。では早速本題に入るんだが――――」


俺は、カライモンに掻い摘んで事情を説明した



カライモン「ふむ……むむ、とても信じ難い内容では御座いますが…それ以上になまじ心当たりがある分、否定の方が難しい話で御座いますね」

エレナ「本当…そんな話を聞いて、いきなり全部信じるなんて事はできないよね。まぁ………まだ開発中の魔法『凍結の息吹』を使われちゃった以上、それも信じざるを得ないんだけど…」


勇者「エレナ!?何故ここに!?」


いつの間にか…いつから聞いていたのか、扉の向こう側から聞こえるエレナの声


エレナ「何故も何も…勇者くんが一人でその魔族の亡骸を倉に運んでく姿なんて、どこからどう見たって怪しいんだもの」


そう言って倉の扉を開くエレナ。そしてその背後にはナビの姿もあった。


ナビ「エレナが様子を見て来る…という形で、辛うじて村人を達を納得させて来た…そうでなければ恐らく村人全員がここに来て居た」

カライモン「!!!?」


そして…ナビの姿を捉えると共に、今まで無い程の驚愕の表情を見せるカライモン


カライモン「貴方は…やはり……成る程。此度はそういった役割を担っておられましたか……それでは勇者様の言葉を全面的に信用する他ありませぬな」


え?何がどうなってる?いや…納得して貰えたならそれで良いのだが…どうも、自分が蚊帳の外に置かれている気がしてならない。



エレナ「それで…勇者くん?」


勇者「な、何だ?」

エレナ「その前回の事を引き摺って、私を置いて行こうとした訳だよね?」


図星だ、相変わらずエレナは鋭い。だから…なるべくエレナにはこの話を聞かせたくなかったのだが…


ナビ「………」


ほら見た事か、人の忠告を聞かずに軽口を叩くからそうなるのだ と言わんばかりのドヤ顔をナビが向けて来る


エレナ「本当は留守番のつもりだったんだけど…こんな話をお聞いちゃった以上、自分だけ見て見ぬ振りはできないよね」


あぁやっぱり…これは不味い、止めても絶対に止まらない。無理にでもついて来る。


勇者「判った……だが、少しでも危険を感じたら退く事。これが条件だ」

エレナ「オッケー。さすがは勇者くん、物分りが良いねぇー」


前回は、散々周囲から察しが悪いと言われまくったがな。


勇者「そう言えばナビ。誰かをパーティーに加えるには、どうすれば良いんだ?」

ナビ「一度目を閉じて、仲間の一覧を思い浮かべる。そしてその状態で目を開き、対象を仲間だと認識すれば完了」


と説明を受け、その通りに実行した


エレナ「え………うわっ、何これ!?凄い魔力を感じる…と言うか、魔力以外も何か凄い事になってる感じ……」


どうやら加入成功のようだ。スキル『盟友の絆』の効果も現れているらしい


カライモン「これはまた………ふむ、まるで全盛期に戻ったかのような昂ぶりで御座います」


あ、ついカライモンもパーティーに加えてしまったらしい。

まぁ前回の最後で一緒のパーティーだったのだから仕方ないし、問題も無いか。


ナビ「盟友の絆の効果…確認した」


お前もか



カライモン「しかし…私はこれからどう行動致しましょう?このまま勇者様のパーティーに寝返るのも構いませんが…」

勇者「いや、カライモンにはこのまま魔王城に帰還して貰おうと思っている」

カライモン「ふむ…では、そこから先は?」


勇者「魔王…ノーブル様に、今聞いたありのままの事を話して貰えればそれで良い。あぁ、そうだ…それと―――――」



―領主の館―


勇者「…という訳で。皆様、本日はこの館に集まって頂きありがとうございます」

帝王「んな堅苦しい挨拶は良いってーの。前回はタメ口聞いてたんだろ?ってか、名前呼びで構わねぇよ」

勇者「すまないエイジ」

ヤスカル「んなっ…いきなり……」


国王「儂に対しても敬語は不要だ。今この場所で行われるのは、国と国の問題ではなくこの世界全体の問題なのだろう?」

勇者「はい…ではそのお言葉に甘えます」


国王「それで帝王よ…お主はどこまで知っておった?本来ならば前帝王が伝えておる筈なのだが…」

帝王「聞く前に倒れられちまった。んでも安心しろ。勇者から話は聞かせて貰ったからよ」

国王「ふむ…ならば取り敢えずはよしとしておこう。ではそろそろ本題に…」


勇者「あ、いや…もう少しだけ待って欲しい。あと二人程来る予定なんだ」


国王とエレル…帝王とヤスカル…エレナとナビが席に着き、俺は進行役を勤めている。

そして残り二つの空いた席に、皆の視線が集まった…丁度その時


??「すまない、途中で嵐に巻き込まれてね」


扉をノックする音、そして外から響く声と共に現れる来訪者。

俺はその声の主を招き入れるべく扉を開く。

そしてその先には…黒いフードを被った二人組の姿。


国王「ふん…相変わらずだな」


国王様がそう言うか否か…フードを取って、その姿を皆の前に晒す二人組。

一人はカライモン…そして、もう一人は…


一同「…………」


ノーブル・グランティーニ………本来ならば人類全ての敵とされている、魔王である。



帝王「話しにゃぁ聞いてたが……成る程、本当に勇者ノーブルが魔王だったんだな……」

ヤス「あ、あれ?何ですかこのメンバー。あっしが、こんな場所に居て良いんッスか!?」


今回のヤスは、口調が素に戻るのが早いな。


エレナ「………」

国王「…………」


魔王「やぁ、久しぶりだね。兄さん」

国王「…儂からすれば、お前の姿は記憶と一切変わらん。時の流れを感じる余地さえ無いわ」


勇者「えっ」


いや、さりげなく新事実を明かさないでくれ。ノーブル様が国王様の弟?そんな事、前回は聞いて………あぁ、そもそも二人が顔を合わせる事が無かったんだった


魔王「未来から来た勇者君でも、さすがにこの事は知らなかったようだね」


看破されている


国王「儂の…王家の本筋以外の血族は、その身分を伏せねばならぬ仕来りだったからな。それより、これで揃ったのならば話を進めては貰えぬか?」

勇者「あ…はい。それでは聞いて貰いたいと思う…俺の…打倒マオウシステムの計画を――――」



帝王「人間の集団深層意識…マオウシステムの打倒……か。可能性が無い訳でも無いのは聞いてて判ったが、それを成功させられる確率はどのくらいなんだ?」

勇者「まだ判らない」

帝王「んじゃ、帝国は全面的な協力をする訳にゃぁいかねぇな。ってーかそもそもよぉ…マオウシステムってのは、危険を冒してでも倒さなけりゃいけねぇのか?」


魔王「私も帝王…エイジくんの意見に賛成だね。魔族とは言え一国の主である以上、軽はずみにリスクは侵せない」

国王「その通り…誰かが勇者となり、その勇者が犠牲になる事は儂も遺憾に思う…が、それは勇者のみに限られた事では無い」

帝王「そう………国を抱えて行く以上、誰かを生かすために誰かを犠牲にするってのは避けて通れねぇ道なんだ」

カライモン「私個人…いえ、個魔としては勇者様の計画に賛同致したいのですが…やはり魔王様の意思に反する事は出来ませぬ故…」


エレル「私は勇者さまの計画に賛同ですねー。そのシステム自体が気に入りません」

エレナ「私も勇者くんに賛同だね。各国の王様達から見れば無責任かも知れ無いけど…やっぱり勇者くんを犠牲にするのは間違ってると思うから」


ナビ「…こうなる事は判っていた」


ふと…唐突にナビが口を開く


ナビ「今の人類は、マオウシステムに依存し切っている……それは何故か?その方が楽だから、その方が都合が良いから」

ナビ「国民を盾にして反論を遮り…自分が本当にやりたい事さえも偽って、無理矢理に納得させているだけ」


ナビ「………お前達は……ただの臆病者だ!!」


普段のナビからは想像も出来ない程に感情的な声。

その場に居た誰もがその様相に釘付けになる。


帝王「ん…………のっ!!!手前ぇに何が判る!!」

魔王「私は否定しないよ…私は臆病だからこそ魔王になってしまったんだ。けれど…君達にならそれだけの勇気があるのかい?」


ナビ「ある」


魔王「面白いね…ならば証明して貰おう。猶予は…そうだね、三ヶ月。もしそれまでに証明できなければ…マオウシステムの有用性を再確認する事も兼ねて……」

国王「…まさか…!」

魔王「そう…魔族による人類の大虐殺を行う。勿論滅ぼしはしないけど…どれだけの命が失われるか判らないね」


帝王「んの……っ…!!」

魔王「さて、では私達はこのタイミングで退散させて頂くとしよう。………カライモン」

カライモン「はっ…畏まりました」


そう言い残し、影の中へと消えるノーブル様とカライモン。

あの魔法…貪欲な影は転移魔法ではなく単なる潜航魔法…足止めする事も可能だが…今それをした所でどうしようも無い


くっ…非常に不味い…ノーブル様の宣告により、事態は険悪を通り越して一触即発…予断を許さない緊張感に包まれてしまった。



ナビ「大丈夫、問題は無い」


そんな中、沈黙を破ったのはナビだった


ナビ「条件付きながらも、魔王は協力を申し出てくれた」

帝王「…………はぁっ!?手前ぇは何を言ってんだ!?どこをどう………」


ヤス「あ…っ」


帝王「ん?…そうか……つまり…逆を言えば、三ヶ月以内に勇気を証明できりゃぁ、勇者に賛同してくれるってー事か?」

ナビ「肯定する」


国王「ふん…馬鹿馬鹿しい。儂はそんな危ない道を渡る事は出来ぬ、最悪の事態に備えるのみだ」

エレル「星天の柱を使う気ですね…」

国王「お前は反対のようだな」


エレル「いえ、とりあえず星天の柱を起動させる所までは賛成しておきますよ。第一あれは、勇者でなければ―――」

国王「そこまでだ。協力するのならば共に来い」

エレル「はーい…それじゃ転移しますから、身を屈めて下さいねー。あ、勇者さま、今日の所はこれでー…」


そう言いながら転移により消え去る国王様とエレル。

残されたメンバーの視線は自然と、残った王…帝王エイジの元へと集まり


ヤス「帝王様…乗せられちゃったみたいッスね…」

帝王「はぁ!?」


ナビ「計画通り」


帝王「なっ…一体どーいう…」

勇者「何と言うか…」

エレナ「帝王さんって…本当、勇者くんの話しで聞いた通りの人なんだね。えっと、私から説明しようか?」


帝王「くっ……頼む」



エレナ「まずあの場の状況から。一見すると王様達全員が難色を見せていたように感じたよね?」

帝王「そりゃそうだ。ってーか、実際渋ってたぞ」

エレナ「そこでナビちゃんが王様達を叱咤罵倒…痛い所を突かれた王様達は、そこで逆上…したように見えたでしょ?」


帝王「見えたじゃなくて、実際に俺は逆上してたぞ。図星を突かれりゃぁ、誰だってそうなるっての」


エレナ「帝王さんはね。ただ、図星を突かれたって事は…本心では勇者くんの助けになりたかったって事なんだよね。ありがとう」

帝王「るせぇ…いいから話を戻せや…」


エレナ「そこで、魔王さまは一芝居……あ、違うかな。この場合は…一博打、打つ事にしたんだよ」


帝王「何でそこで言い間違えんだよ。全然違う事だろ」

エレナ「どっちでもある状況だったからね。魔王さまは魔王さまでこのシステムの事は何とかしたかった筈だし、言ってた事も間違いじゃないよ」

帝王「んじゃあ、何でそれが俺が乗せられたって事になんだよ」

エレナ「大虐殺を止めるため、勇者くんに協力するでしょ?」


帝王「そりゃぁ勿論……ぁー…………」


勇者「エイジは…目の前の戦いから決して逃げ出さない」

ナビ「加えて、敵の敵は味方として受け入れるだけの寛容さも持ち合わせている」

エレナ「そして…勇者くんの話からそれを知っていた魔王さまは、帝王さんの性格を読んだ上であんな宣告を行った…という事なんだよ」


勇者「マオウシステムを倒そうという問題で、マオウシステムのような流れに乗るのは癪だがな」


帝王「くそっ…褒められんのか貶されてんかどっちだよ」

ヤス「褒められてると思っておいた方がお得ッスよ……」


帝王「あー…くそっ!こうなったらとことんやってやろうじゃねぇか!手前ぇら、俺を引き込んだからには半端は許さねぇぞ!」



エレナ「途中で結構ヒヤヒヤしたけど、何とかなったね…」

勇者「あぁ…皆のお陰だ」

ナビ「とは言え…まだ問題は残っている。三ヶ月以内に勇気の証明を行わねば、人類の大虐殺が起こる事…そして、残る公国…皇国…合衆国の説得」


勇者「そうだな…各国からの協力についてはこれから向かうとして…勇気の証明に関しては大丈夫なんだろうな?」


ナビ「何を言っている?」

勇者「えっ……いや、あれだけ自信たっぷりに啖呵を切っていたじゃないか。あれは…」

ナビ「任せた」


勇者「えっ」


…………何も考えていなかったのか。それとも、考える必要も無い程に信頼さえれていたのか…まぁ、ともかく


勇者「雲を掴むような話だが…やるしか無いか。証明する方法が見付からないだけで、勇気ならば持っているからな」


そう言い切り、決心をしたその瞬間……館中に奇声が響き渡った


帝王「なんじゃぁこりゃぁぁぁぁ!?!!?」

ヤスカル「あ、あっしも…えぇぇ、何っすかこれ!?」


…どうやらエイジとヤスカルも、いつの間にかパーティーに加えてしまっていたらしい。



●第二章 ―あの人は今― に続く

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