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余章

●余章 ―トゥルーエンド―


―共同領地―


国王「カイン…いや、エーデルワイスよ。美しいぞ…この姿、エイベルにも見せてやりたっかった」


エレル「国王さま…こんなめでたい席で、辛気臭い事を言わないでくれませんか?」

帝王「そー言うなよ、娘を嫁にやる父親が居ない分、爺さんにくらい言わせてやれっての」


ヤス「あぁ、お二人ともとても素晴らしいッス。こんな世紀の瞬間に立ち会えるなんてあっしは…!」

帝王&エーデルワイス「「いや、お前は大袈裟過ぎる」」


あの後…マオウシステムとの決着を終えた世界は、新しい時代へと踏み込んで行った。


まずはここ…俺が治めていた領地は、王国の領土から各国の共同領地になり……

教会を立てたり、各国との交流のために大規模な道や橋を作ったりと、様々な改装が行われた。


そして今日は………記念すべき、王国と帝国の合併の日。

即ち、帝王エイジとカイン…もとい、エーデルワイス姫との結婚式の日だ。



エレナ「そう言えばカインちゃん…もとい、エーデルちゃんの偽名って…元はエイベル様が帝国で名乗ってた名前なんだよね」

勇者「あぁ、それは聞いた。だが…何でカインなんだ」


カライモン「それは私めの口から説明させて頂きましょう」

戦士「うぉっ、驚いた。いきなり出てくるな」


カライモン「そう…あれはエイベル様と私めとの初戦が原因」

カライモン「いつも通り勇者の力量を測りつつ、生き延びさせる……そんな日課となっていた戦闘が終わった後の事で御座います」

カライモン「傷付いたエイベル様が迷い込んだ先は、帝国領。身体は瀕死、息も切れ切れ。そんな所に現れたのが、帝国の姫君…」

カライモン「姫君はエイベル様の名前を問うも…エイベル様の頭の中は、先の戦闘の事が詰まって居たご様子」



姫『お名前は?』

エイベル『(おのれ……)カ……(ラ)イ…(モ)…………ン』


勇者「…………」

エレナ「…………」

勇者「そんなまさか―――」

カライモン「エイベルさまの記憶から直々に得た情報でございます」


勇者「………」

エレナ「………」


カライモン「かく言う私も、実は…ア」


勇者「あっ」


勇者「そうだ、エイベル様と言えば…エレナ、頼んでおいた物は出来上がっているか?」

エレナ「うん、出来てるよ。でも、肝心の…」

勇者「大丈夫だ。カライモン、ちょっと体の一部を分けてくれないか?」

カライモン「それは構いませんが…一体何を?」


勇者「カライモンの特性上、エイベル様の魔力を失っても記憶を残しているかも知れない…と思ってな」

カライモン「成る程…確かにその通りで御座います。どうぞ、私の身体で良ければご自由にお使い下さい」


その言葉に甘えて、俺はカライモンの外殻を指先分程拝借する。


エレナから受け取った指輪に、カライモンの身体の一部を嵌める。

すると指輪から、エイベルの様の姿が映し出され……


国王「おぉ…エイベル」

エイベル「父上…それに、まさか……エーデル、エーデルワイスなのか?」


エレナ「感動の再会って所だねえ。あ、そう言えば……些細な事だけど、今回は勇者くんが勇者になったのって、前回よりも6年遅かったんだよね?」

勇者「ん?………あぁ、余り気にはして居なかったんだが、その通りだ。それが一体……あぁ、そうか」

エレナ「エイベルさまの死が前回よりも遅れた…って事になるよね。どうしてだろう?」


勇者「前回とは違う事…つよくてニューゲームは、俺が勇者になってからしか変化が無い筈だから……それ以前の変化は…そうか」


 ナビ…あいつか


エレナ「あぁ、成る程………ナビちゃんか」


どういう因果か…ナビが人間の姿を取った事でエイベル様の寿命が延びたらしい



カライモン「6年前となりますと…恐らくはあの時の事で御座いましょう」

勇者「心当たりがあるのか?」

カライモン「はい。本来ならばエイベル様と私の決着が付く筈だった戦いの折…エイベル様は突如、混乱をお召しになられたのです」


エイベル「あの時は、その。直前まで聞こえて居た筈の天の声…ナビさんの声が突然聞こえなくなり…お恥ずかしながら取り乱してしまったんです」


感動の再会を終えたのか、会話に加わるエイベル様。


エイベル「そして…突然の不測の事態を飲み込む事が出来なかった僕は、無様にもその場から逃げ出し………」


カライモン「その後に待ち受けて居たのは、葛藤と迷走の日々で御座いました。勇者としての自分に疑問を抱き、それでも自分に出来る事を探し…」

エイベル「そこからは………まぁ、省略しますが」

カライモン「6年後、改めて決戦を行い…その結果。今の勇者様が覚醒を行われたと言う訳で御座います」


6年間………決して短くは無いその時間を、道標の無いまま勇者として過ごしたエイベル様。

行き付いた先が同じ場所だった事は、カライモンの様子からも伺えたのだが……


幼女「あ、あの時のお兄ちゃん」

勇者「ん?エイベル様と会った事があるのか?」

幼女「うん。部族の皆が攫われそうになった時、私とお父さんとお母さんを助けてくれた人」


そんな事があったのか…


皇女「私も…まだ幼い頃、刺客に襲われた際に…エイベル様に助けて頂いた事があります。勇者様の事情を知ったのは、その後の事なのですが…」

カライモン「と言った風に、他にも…今回の世界の事情に関わる事の幾つかに関わって来られたようです。その辺りの差異は勇者様が実感された事かと」


勇者「成る程……エイベル様は、さしずめ今回の影の立役者だったと言う事か」


運命…いや、因果とは不思議な所で絡み合っているようだ。



そうこうしている内に始まる、結婚式…

帝王エイジとエーデルワイス姫の…誓いの言葉と口付け。


拍手喝采と賛美歌の祝福が周囲を包み込み……

教会の外へと続く通路を二人が歩み出す。


エレナ「ナビちゃんと言えば…ナビちゃんと戦士くんと僧侶ちゃんはどうしてるの?」

勇者「ん?何故その三人の名前が一括りになっているんだ?」

エレナ「………やっぱり気付いてなかったんだね」

勇者「どういう事だ?」


エレナ「ナビちゃんは、戦士くんと僧侶ちゃんの子供なんだよ」


勇者「………はっ?」

エレナ「正確には。前回の戦士ちゃんと僧侶ちゃんの…生まれて来る筈だった子供」

ナビ「肯定する」


勇者「…説明を頼む」


エレナ「まず…つよくてニューゲームの直後、勇者くんが覚醒したその時にはもうナビちゃんが今の姿で居たんだよね?」

勇者「その通りだ」


エレナ「その時点で、大きく分けて二つの可能性…勇者くんの覚醒に合わせて存在をでっち上げたか、更に過去に戻って生まれたか…って事になるんだけど」

ナビ「私はあくまで導き手。無からの創造を行う力を所持しては居ない」

エレナ「っていう事らしいから、前者は除外して…じゃぁどうやって過去に生まれたかって事になるんだけど」


勇者「そうか。あぁ……何となくだが判ってきたぞ」

エレナ「強くてニューゲームに伴って、時間を巻き戻す際に…その途中で、生まれて来る筈だった子供の肉体を使わせて貰ったんだよね」

ナビ「肯定」


エレナ「で、説明が逆になっちゃうけど…問題はその子供が一体誰なのか。まぁ…ナビちゃんと戦士くん達のやりとりから、ある程度は予想できたよね」



勇者「そうか…戦士と僧侶が前回の記憶を持ち、ナビの事を知っていた理由は……」

エレナ「うん…巻き戻らないマオウシステムと同じく、ナビゲーションシステムの影響を直接受けたからだろうね」

勇者「そういう事になるよな…」


エレナ「そして、6年前……命を落とす筈だったエイベル様が、世界の事情に干渉し始めたのは…ナビちゃんの声が聞こえなくなってから」

勇者「その時点から、ナビは人間としてこの世に存在していた…と」

ナビ「肯定。その時点で今回の私の存在が確立し…その結果勇者の両親に拾われ、現在に到る」


勇者「しかし、それ以降のセーブとロードではナビも除外されずに巻き戻って………あぁ、そうか」

ナビ「そう…それは勇者にセーブとロードを委譲した後の事。故に記憶面でもセーブとロードの影響を受けるようになった」


エレル「そもそも、何でナビちゃんは勇者さまにセーブとロードを委譲したんですか?」

勇者「マオウシステムを倒すために、自分は消滅する気だったみたいだからな。その尻拭いをさせるためだろう」

ナビ「…人聞きが悪い」


勇者「全然悪く無い、事実だろう。それに…何が『何かしらの不具合が起きているかも知れない』だ、確信犯じゃないか」

ナビ「………~♪」


口笛で誤魔化すな


カライモン「因みに…私もナビゲーションシステムの変異には気付いておりました」

勇者「そう言えば、最初に顔を合わせた時にも意味深な事を言っていたな…」


エレナ「で、戦士くんと僧侶ちゃんが落ち着いた今…どうなってるのかなって思ったんだけど…」

ナビ「あの後…勇者の両親に、本当の両親…戦士と僧侶との再会を知らせ…その上で勇者の両親に預けてられている形となっている」


いや待て、そんな事俺は一言も聞いて居ないぞ?

そもそも、俺の身近に居るのに両親に預けている事になるのか?


エレナ「今回生まれてくる筈の、あの二人の間の子供はどうなるの?」

ナビ「万事問題無く誕生する予定。当然…私の妹として」


何故お前が胸を張って誇らしげに言う…



エレナ「そっかぁ…あの二人にまた子供かぁ。そう言えば、子供と言えば………勇者くんって」

勇者「ん?」

エレナ「前回は、エレルと致しちゃったんだよね?」


勇者「……………」


エレル「今回の勇者さまは、ナビちゃんとマオウちゃん。おまけにアリーツェ姫なんていうヒロインまではべらせちゃってますよね」

エレル「………ついでに言うと、今回の私は勇者さまにまだ何もしてもらって居ない訳なんですが…」

エレナ「前回の勇者くんは、私の事を恋人だって言ってくれたんだよね?」


マオウ「それはあくまで以前の事…今回もお前を恋人に選ぶなどと思い上がらぬ方が良いな。今までお前を恋人に選んだ割合など、丁度11.54%に過ぎぬわ」

ナビ「メイズ…否、マオウを恋人に選んだ割合は0%」


マオウ「我はヒロインとしては今回が初登場なのだから仕方が無かろう」

皇女「あの…私は正妻では無くとも…側室で構いませんが…」

ナビ「ちなみに…アリーツェの勝率は16.335%」


皇女「えっ…」



エレナ「………」

エレル「………」

アリーツェ「………」

ナビ「………」

マオウ「………」


エレナ「…じゃぁ、決まりだね」

エレル「……うん、決まりだね」


エレナ&エレル「誰にするのか…はっきりして貰おうか」


勇者「…………」

ナビ「勇者は逃げ出した」

マオウ「だが回り込まれてしまった」


皇女「…お恥ずかしながら…私もこの問題が少々気になってしまいました。それに…まだ勇者様から思い出を頂いておりませんので」

マオウ「我を選ぶ以外の選択など、許されると思うなよ」


勇者「――――誰か、助け…」


ナビ「勇者は仲間を呼んだ」

マオウ「しかし誰もあらわれなかった」

エレル「声がむなしくこだました」


エレナ「さぁ観念して貰おうか、周りは敵だらけだよ」


エーデルワイス「って言うかさキミ達…人の結婚式だってのに、主役を置いてきぼりにし過ぎじゃない?」


と、ここに来て思わぬ助け舟。


エーデルワイス「ブーケ…要らないの?」


と言って、エーデルワイス姫がブーケを空高く投げる


女性一同「――――――!?」



そしてブーケに視線を奪われる女性一同

千載一遇のチャンス…その隙を突き………


勇者「――――――!!」

エレナ「しまった!上!?」


俺は、飛翔魔法で一気に飛び上がる


マオウ「………だが、マオウからは逃げられぬ」


一瞬で魔獣を呼び出し、飛翔するマオウ


ナビ「そう…そしてナビも常に傍に居る」


いつの間にか俺の背中に乗っているナビ


アリーツェ「ご存知かも知れませんが………私…テイマーの才能があったらしく。勇者特性を失っても…その」


申し訳なさそうな表情をしながら、霊獣の背に乗って追いかけてくるアリーツェ


エレル「そもそも…転移魔法が使える私から逃げられると思ってます?」


と言いながら目の前に転移してきて……そのまま落下しかけるエレル。俺は反射的にそれを抱き抱える。


エレナ「あ、エレルずるい!!それなら私も転移してくれば良かったかな…」


そして最後に、箒に乗って現れるエレナ。


いや、さすがに二人目を抱きかかえるには腕が足りない。



エレナ「それにしても…凄く高い所まで来ちゃったね」

アリーツェ「はい…ここからでしたら、皆様の国まで見渡す事ができますわね」

エレル「特等席から見下ろす世界も、中々乙ですねー」


エレナ「あそこが王国で…あっちが帝国で…」

アリーツェ「あちらが合衆国で、あちらが公国」

エレル「あっちが皇国で…あ、あれが天空山ですね」


アリーツェ「公国の人だかりは…お祭りでしょうか?」

エレル「そう言えば、王国と帝国の合併に乗じて何かするって言ってましたねー…」


エレナ「それにしても…一人一人では小さな点にしか見えないけど…あぁやって皆が集まってると、沢山の人がそこに居るって実感できるよね」

エレル「そして、その皆が活き活きしているのが伝わって来ますよねー」


マオウ「クククク…人がゴミのようだ」

ナビ「踊れ…我が掌の上で」


そこの二人、お前達が言うと冗談に聞こえない。


アリーツェ「これこそが、皆様が前を向いて進み始めた世界……」

エレナ「そしてこれが……勇者くんが築き上げた世界の姿なんだよね…」


世界を見下ろす仲間達。


勇者「いや、そうじゃない」


数々の冒険を共にした仲間達…

時には傷つけ合い、時には助け合い…

深まって行った…絆


勇者「この世界を築き上げたのは………」



今ここには居ないが、帝王にヤスカルにカインにノーブル様にカライモン…戦士に僧侶。

紅旅団の団長に、団員達…合衆国の少年と幼女。公国兵士にカーラ、青年貴族に人魚。そして各々の国を治める王達…

皆が居なければ今の俺は無く、今のこの世界も存在しない。


仲間が居たから、ここまで来れた………いや

これからも…仲間が居れば、どんな困難にも立ち向かう事が出来るだろう。


勇者「皆の…仲間の力………いや」


そして………その仲間が居るのは多分、俺が勇者という存在だからでは無い。

たまたま強い力を持って矢面に立ったと言うだけで、むしろ…俺と言う存在こそ、この仲間達の内の一人でしか無いだろう。


特別な存在で無くても良い。皆が…そう、今この時に生きる誰もが

勇気を出して誰かと繋がる事さえ出来れば………


そう……


誰かのせいにするでは無く


誰かに与えられるのでは無く


自らの意思で臨み、他の誰かと繋がる事が出来たのならば…



勇者「この世界に住む…全ての人々の絆の力だ!」



    その絆は、世界さえも変える事が出来る




        ―ユウシャシステム トゥルーエンド―




マオウ「だからその仲間に優劣を付ける事など出来ない…」

ナビ「あるいは、誰か一人を選ぶ事など出来ない…等と言った詭弁は許されない」


勇者「……………」

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