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終章

魔王との決戦を終え、束の間の安らぎを得た…かのように見えた勇者一行。

しかし時の流れは其れを許さず、また…新たに始まる激動。


七天の支柱…その中心部へと降り立つナビ。


ナビを追う勇者

そしてそこで語られるナビの真意…残りのマオウシステムを構成する人間の抹消。

勇者はそれを否定し、己の道を進むが…マオウシステムが自らの意思を持ち、勇者達に襲い来る。


マオウシステム…宿敵に対して勇者は、自らを覇者…二本の剣を覇者の剣へと変え立ち向かうのだが―――


●終章 ―ユウシャシステム―


―七天の支柱 最深部―


ナビ「想定外……しかし、勇者の行動故にもう驚きはしない」

マオウシステム「ソレガ…ワレヲ…ケシサル…イシ カ………ダガ、ワレハキエヌ…」

覇者「言った筈だ……俺は俺の道を進ませて貰うと」


マオウシステム「……サセヌ!!」


マオウシステムの脈動…それと共に周囲に走る、不可解な感覚。


ナビ「―――!?これは……逆行干渉!?」

覇者「マオウシステム自らが逆行干渉だと?自滅する気か!?」


ナビ「否定。これは……恐らく非常に危険な状態。逆行干渉による目的は、恐らく……」

勇者「一体…何をする気だ?」

マオウシステム「ワガコンゲンヨ…メザメヨ」


マオウシステムの声と共に響く重圧。それは覇者となってた今でも防ぎきる事が出来ず、容赦無く俺に襲い掛かって来る。

だが…それに屈する事無く、俺は足を進める。



―決戦の地―


帝王「おいおいおいおい、何だってんだよこりゃぁ」

エレナ「デミ・マオウシステム…だね。各国から集められた精鋭とは言え、心が強いかどうかと言えば別問題…」

魔王「まぁ…今の私達ならばどうにか出来ない相手でも無い訳だけど。問題は………」


エレル「その規模…でしょうねえ。ざっと観測しただけでも、世界中でデミ・マオウシステム化した人間が大量発生しているようです」

戦士「不味いな…デミ・マオウシステムが恐怖や絶望を生めば、恐らく…それによってまた人間に悪意が生まれる」

僧侶「………あんな物、他の誰にも味わわせたくは無いのに」


皇女「では………今私達が行うべき事は決まっていますわね」

魔王「あぁ…そうだね」

帝王「ま、丁度あのドラゴンから貰った力もある事だし………一丁暴れてやるか!!」



エレナ「え…帝王さんがドラゴンに変身した!? 魔法…?違う、何かの特殊能力?」

カイン「ま、あれを使って変わるのはエイジだけじゃないんだけどね」

エレル「あれれ?お姫様も何か恰好が…」

カイン「姫って言うな!これは確か…竜の花嫁の力………とか言ってた筈」


魔王「ふむ………これは私も負けてはいられないね」

エレル「今度は魔王さままで………何ですかそれ、右手に光りの剣、左手に闇の剣って…」

魔王「折角魔王の身で勇者特性を得たんだ、両方使った方がお得だし、恰好良いだろう?」

エレル「………」


カライモン「それでは、僭越ながら私も…取り戻した全盛期の力をお見せしましょう。まずは軽く足止めですが…ワームホール形成…サモン・メテオ!」

エレナ「召還魔法!?そんな…失われた筈の技術を……」

カライモン「驚かれるのはまだ早いかと。お次は、重力場発生……MBH発動!」

エレル「一点に重力を集中させる事で、絶対的重力を発生させて……ってこれ、まさか…イベントホライズン!?」

カライモン「先程の勇者様と魔王様の戦いの折り、使える事を思い出しました。はい」


戦士「何と言うか………物凄い光景だな」

僧侶「そうね……。このメンバーなら全く負ける気がしないわ」


エレナ「うん……確かにこの戦力なら当面は敗北を懸念する事も無けれど…でも」

僧侶「でも…?」

戦士「さっきも言った通り…デミ・マオウシステムが恐怖や絶望を生めば、連鎖的に新たなデミ・マオウシステムが生まれる」

エレナ「そして、私達にはデミ・マオウシステムを消滅させる手段は無いから…このままだと埒があかないんだよ」



―七天の支柱 最深部―


ナビ「最悪の想定が現実の物となった…マオウシステムは逆行干渉を行い、自らを構成する人間をデミマオウシステムへと変えた。この状態では…」

勇者「この状態では?」


ナビ「ロードを行う事が出来ない…どの時点に戻っても、事態は悪化の一途を辿るしか無い」

勇者「何だ、そんな事か」

ナビ「えっ」


勇者「だったらロードに頼らなければ良い。そもそも、ここに来てからセーブ自体して居ないしな」

ナビ「………」


勇者「それより、デミ・マオウシステムになった人々は…今どうなっている?」

ナビ「…………勇者パーティー及び、各国の戦力が応戦に当たっている。しかし…当然ながら、殲滅が追い付いてはいない」

覇者「無事なのか?」

ナビ「今の所、どの国の戦力にも死者は出て居ない…しかし、それも時間の問題」


覇者「いや…勿論そちらもだが、デミ・マオウシステムになってしまった人々は無事なのか?」

ナビ「………性質上、与えられた攻撃により一時的に無力化されては居るが、核となる人間の生命に別状は無い」


覇者「そうか……だったら…」


俺はマオウシステムににじり寄りる。

そうそう…今回、覇者になって気付いた事だが…覇者になると、仲間のスキルも使えるようになるようだ。

マオウシステム「キサマ…ナニヲカンガエテイル。キサマノチカラデハ、イマノワレヲタオスコトナド………」


覇者「ナビ………世界中の戦場を映し出す事は出来るか?」

ナビ「………可能」

そうして映し出される世界の光景…デミ・マオウシステムに変貌した人々と、それに立ち向かう人々。

俺はその人達を見据え……



―王国―


騎士A「怯むな!我等王国騎士団の力を見せてやれ!」

騎士B「おーーーー!!!……おぉ?」

騎士C「な………何だこれ!?」

騎士D「な…まさか、お前まであの化け物に!?」


騎士C「いや…違う………これは」

騎士D「何……え、お、俺も何か変だぞ!?」

騎士A「これは………力が溢れ出して来る!?」



―皇国―


団長「お前等!旦那からこの国を任された以上一歩も退くんじゃねぇぞ!!紅旅団の底力見せてやれ!」

団員A「お頭!」

団長「どうした!?」

団員B「何か俺達――――」



―公国―


提督「むぅぅぅぅ!何だこの溢れ出す力は!!えぇい、チマチマと砲撃なんぞしていられるか!!」



―合衆国―


国民A「え?何これ?」

国民B「俺…どうなったんだ?」

国民C「これなら……俺達でも戦えるんじゃないか?」



―帝国―


兵士A「負ける気がしねぇ!!!」

兵士B「一気に畳みかけるぞーーー!!」

兵士C「よっしゃぁーーー!!!!」



―七天の支柱 最深部―


マオウシステム「ソンナ……バカナ…………」


ナビ「………理解。息をするように奇跡を起こす勇者の行動を、想定する事は無意味だった。まさか人類全てをパーティーに加えるとは……」

覇者「この一手は、奇跡ではなくむしろ奇策だがな。さて、ここからが本番だ」


俺はマオウシステム本体に手を沿え、目を閉じる。


マオウシステム「キサマ…ナニヲ…………マサカ…?!!」


そう、そのまさか…逆行干渉だ。

と…簡単に言ってはみた物の、色々な意味で中々に厳しいなこれは


自らの意思と覇者の力を魔力その物に乗せ……と、この時点で失いそうな程に意識を持って行かれる。

そしてその魔力でマオウシステムに干渉を行い、マオウシステムを形成する人間へのリンクを作り出すのだが…

当然ながら、マオウシステムも黙っている訳が無い。


まず、魔力に乗せた俺の意思には…防衛本能の投影と思われる、干渉の手を伸ばし………


無防備に残された肉体にも………繭から顕現した刃を、容赦無く突き立てて来る。


ナビ「―――!?」

マオウシステム「キエヨ…キエヨ!!!」

何度も…何度も、手を緩める事無く、俺の身体を貫くその刃。

だが、俺も干渉の手を緩めない。むしろ攻撃が肉体へと向いているその隙を突き………


遂に、マオウシステムを形成している人々の下へと辿り着く。



―王国―


デミ・マオウシステム『クルシイ…ニクイ……ナンデオレバカリ…』

覇者『そうじゃない…苦しんでいるのはお前だけじゃないんだ』

騎士A「何だ…一体何が起きている?化け物の様子が…」



―皇国―


デミ・マオウシステム『ナンデアタシガコンナメニ!!!アタシハタダ…アタシハタダ!!ホカノダレヨリモトクベツニナリタカッタダケナノニ!!』

覇者『それはお前が気付いていないだけだ。お前も…皆も、誰もが本当は特別な存在なんだ。それを確かめたいのなら―――』

団長「化け物…偽アリスが……」



―公国―


デミ・マオウシステム『オレガワルインジャナイ…マワリノヤツラガ…オレヨリモユウシュウナノガ………』

覇者『だからと言って、他人のせいにするだけでは解決にはならない。それなら―――』



―合衆国ー


デミ・マオウシステム『ナニガセイキコクミンダ!!ヤツラノソンザイガ、オレタチヒセイキコクミンヲ……!!』

覇者『ならばお前も変えれば良い。本当に皆が平等に暮らせる国に―――』



―帝国―


デミ・マオウシステム『オノレ…オノレオノレオノレ!ヤツサエアラワレナケレバ、ワタシハ…』

覇者『敗者となった事で他人を妬んでも仕方が無いだろう。それよりも、自らがそれまでに培った物で何を出来るかを―――』



―決戦の地―


帝王「デミ・マオウシステムが…消えて行く?」

ヤス「いえ、これは………元の人間に戻ってるんじゃ無いッスか?」

エレル「その通りです。そして、世界中でも同じ事が起きてるみたいですね。でも………」


帝王「でも…どうしたってんだ?勿体付けんなよ」


エレル「消えているのはデミ・マオウシステムだけじゃなくて…」

魔王「うん………勇者特性…勇者の力も―――」



―七天の支柱 最深部―


マオウシステム「アリエヌ……ワレヲ、コウセイスル…モノタチガ……」

ナビ「逆行干渉………それも構成者の消去では無く、自らの意思を乗せての説得と核の破壊など…覇者と言えど無茶が過ぎる」


勇者「無茶は承知の上だ。だが…出来る事がある以上は、最善の策を取らなければ………な」

とは言った物の…無茶の代償はそう安くは無いようだ。

覇者の力を通り越し…勇者の力すら、俺の中に感じる事が出来ない。


枯渇しても尚絞り出し、その果てに俺の中から消滅した魔力…

癒す事すら儘ならない、マオウシステムに貫かれた傷…


逆行干渉で全ての力を使い切った俺は……

その場に…崩れ落ちるように倒れ込んだ


ナビ「勇者!!」


マオウシステム「アリエヌ…アリエヌ……ワレガ…ココマデ、キュウチニタタサレルトハ!ダガ……ダガ、ツメガアマイ」

ナビ「そう……確かに勇者は詰めが甘い…あと少しでマオウシステムを倒せると言う所で、力尽きてしまうのだから」

マオウシステム「ソノトオリ………ソシテ、ソノアマサユエニ…ホンカイヲ、トゲルコトガ…デキナカッタ!」


ナビ「否定。それは違う」

マオウシステム「ナ…ニ…?」


ナビ「勇者は詰めが甘い…性格も甘い、甘すぎる。しかし、その甘さの分だけ…それを代わりに詰めるだけの仲間が居る」


ナビ「詰め込んで詰め込んで……溢れ出すくらいの力をくれる仲間が居る」



―???―


戦士「そうだな…思い返せば初めて一緒に戦ったあの日…モンスターに止めを刺すのも躊躇ってたっけな」

僧侶「そう…敵だって言うのに、それでも…」


エレル「まったく…勇者さまのへ手助けは毎回毎回無理難題ばかりでした。ま、私くらいになればそれはそれで楽しめるから良いんですけどね」

ノーブル「そうそう…危なっかしい後輩を見守る楽しさと言うのかな、これは」

カライモン「詰めが甘い…逆を申し上げれば、詰めまでに全力を注いでおられるのですよ」


帝王「ま、そういう甘ちゃんな所も個性って事で良いんじゃねぇか?」

ヤス「ッスね」

カイン「ボクとしては詰めが甘くても全然良いよ。美味しい所を掻っ攫う事が出来るしね」


皇女「その甘さも勇者様の魅力の一つかと思います。僭越ながら、私で良ければお力にならせて頂きますわ」

団長「当然、俺達一同も旦那のためなら力になりますぜ」

団員一同「いつでも呼んで下さいな!」


公国兵士「今の私達が居るのは、そんな勇者様のおかげですからね」

カーラ「はい、その通りです」

青年貴族「僕も同感です」

人魚「――――♪」


少年「お兄ちゃんが立ち上がれないなら、僕達が起こしてあげるよ!」

幼女「うん、私も手伝う!」

族長「我等部族一同も…」


部族一同「勿論!!」

騎兵A「俺達の事も忘れんなよ!」

傭兵一同「そうだそうだ!」


国王「勇者よ…お主のお陰で儂は新たな生き甲斐を見付ける事が出来た…」

皇帝「私としては…孫の顔を見るまで冥土に行くつもりも無いし、勇者にも行かれては困るとのだよ」

公爵「貴方の甘さがどこまで世界を変えるのか…その点にはとても興味があります」

大統領「その通り…この腐りきった世の中よりも甘く熟れた信念を見せてみたまえ」


魔王親衛隊員アスモウデス「敵に情けをかけられたこの屈辱…晴らすまでは死んでもらう訳にはいかぬ!」

魔王親衛隊員ガープ「そうそう、平和になったらまたリベンジするぜ。それまでに強くなって見せるからよ」

魔王親衛隊員セーレ「そうとも、勝ち逃げなど許されない」


女貴族「アンタにはこんな所で消えられたら困るのよ!絶対に復讐してやるんだから!」

衛兵達「そうだそうだ!」

王国大臣「そうですぞ!こうなったら私も貴方を見返してやりますとも!」

公国大臣「そうとも!負けたままでなどいられるものか!」

大富豪「こんな崖っぷちからでも不死鳥のように蘇る俺様を、見せてやるわぁぁ!!」


エレナ「まったく…皆、何だかんだ言って勇者くんの事を気にせずには居られないんだよね」


勇者「皆………」


エレナ「じゃ、皆…せーので行くよ。せーの………」


  「立ち上がれ………勇者!!」



―七天の支柱 最深部―


マオウシステム「…ナンダ…ナニガオキテイル……!?」

勇者「まったく………皆が皆、寄ってたかって人の事を好き放題言ってくれる……」


ナビ「勇者!!」


マオウシステム「ナゼタチアガレル……オマエハモウ、スベテノチカラヲ……ツカイハタシタハズ……!!」

勇者「確かに…俺は全ての力を使い果たした。ナビから見ればHP0とでも表示されているんだと思う」

マオウシテウム「ナラバ…ナゼ……」


勇者「だが……俺には残って居なくても、仲間の…世界中の皆の思いは残っている!!」

マオウシステム「ソンナ…アリエナイ…」

勇者「ありえるさ…第一お前がそれを否定する道理は無いだろう。人々の思いにより存在を保っているのはお前も…」


ナビ「…………まさか…」

勇者「そう……人々の思いにより存在している俺は、今のお前達と同じ………あえて名乗るなら、俺は…」



   「ユウシャシステムだ!!!!」


再びマオウシステムの前に立ちはだかる俺。

覇者の剣を自身に取り込み、その力を拳に込める。


ユウシャシステム「そしてこれが………」


ユウシャシステム「俺達が………思いの力で切り開く道だ!!」


マオウシステムに向けて放つ一撃…

俺の拳によりマオウシステムには大きな亀裂が走り、光りが溢れ出す


マオウシステム「コンナ…バカナ………ダガ…ワレハマオウシステム…ヒトノツクリダス、アクイソノモノ。タトエココデ、ワレヲタオソウトモ…」

ユウシャシステム「あぁ…判っている。倒してもそれで終わりでは無い」


ユウシャシステム「人間は強くなった………だが、その強さを失えばまたお前が現れる」

マオウシステム「ナラバ…ナニヲ、ナソウトイウノダ」

ユウシャシステム「そうだな…勇者としては、お前が復活する度に何度でも倒してみせる…と言うべきなんだろうが…」


ユウシャシステム「俺は…お前を倒さない」



ナビ「なっ……!?」

マオウシステム「ナ…ナニ?」

ユウシャシステム「前回の俺はそこが間違っていた。お前は倒すべき対象ではないんだ」


マオウシステム「………」


ユウシャシステム「お前も俺も、結局は人の意思が作り出した存在…たまたま強い力と形を持っただけで、元は同じ人間の意志だ」

ユウシャシステム「事実お前が居たお陰で、仮初とは言え平和を維持して来れた訳だしな」

ユウシャシステム「それを…自分にとって都合が悪い存在からと言って、切り棄てようとしたのは間違いだった」


ユウシャシステム「俺の目的は……魔王と勇者への依存を無くす事…」

ユウシャシステム「そして、今回の世界では念願叶って人間はマオウシステムという存在から自立する事が出来た」

ユウシャシステム「ついでにと言っては何だが、ナビシステムからも自立していたようだし…正直、当面はこれ以上の進展を望んで居る訳ではないんだ」


マオウシステム「ナラバ…オマエハ、ワレヲドウスル?」


ユウシャシステム「お前と一緒に生きて行く…いや、俺と…俺達と共に生きて行かせる」

ユウシャシステム「…と言っても、勿論お前の暴挙をただそのまま受け入れる訳じゃない」

ユウシャシステム「度が過ぎた事をすれば止めるし。また悲劇を起こさないように努力もするつもりだ」


マオウシステム「…ソンナコトガ、デキルト…ホンキデ…」


ユウシャシステム「できる…いや、やる。やってみせる!」

ユウシャシテウム「だからマオウシステムよ、俺達と共存しろ!!」


マオウシステム「……………」

ユウシャシステム「……………」


マオウシステム「…………」

ユウシャシステム「…………」


マオウシステム「ヨカロウ…」


亀裂からマオウシステム全体に皹が広がり、光りが溢れ出す。

そしてその光りが収まると…


俺の目の前に…少女へと姿を変えた、マオウシステムが現れた。



ナビ「メイズ………いや、マオウシステム?」

マオウシステム「我はそのどちらでも在る。久しいな………ナビゲーションシステム」


全ての力を…全ての絆を以って向かえた結末。

俺が考えうる全ての方法で、考えうる全ての結末の中から掴み取った結末。


メイズシステム…ナビの片割れまで少女だったのは予想外だったが、それは些細な事。

俺は、達成感に包まれながら………ゆっくりと目を閉じ―――


………ようと思った所で、それは遮られた。


マオウシステム「おい、何を一人で先に休もうとしている」

勇者「なっ………ど、どういう事だ?」

マオウシステム「生まれたばかりの淑女を、まさかこんな場所に置いたままにする訳ではあるまい?」


……………あぁ、何か嫌な予感がしてきた


マオウシステム「そうだな…こう言う場合はあれをするのだろう?お姫さま抱っこだ」

勇者「…………」

マオウシステム「さぁ…我に暴挙を働かれたく無ければ、その誠意を見せよ」


さっきの一撃で、ユウシャシステムの力も殆ど使い切ってしまったため…もう飛翔魔法を使う余力すら無し。

しかし反論の余地すらない勢いに圧され、俺はマオウシステムを抱き上げて…渋々ながら歩き出す。


いや………正直な所、歩く事すらも相当厳しいのだが……


マオウシステム「汝の紡ぎし言葉の数々、決して違えるな?」


そんな俺に構う事無く、不敵な笑みを浮べるマオウシステム。


ナビ「そう………一度口にした言葉は守るべき。見捨てはしないと宣言をされた」

そして更に背中に飛び乗るナビ。


俺の戦いは終わっては居なかった………

ここからは、マオウシステムとナビを介した自分との戦いらしい。


限界を超えて更に力を振り絞り、俺は脚を前に出す。

そしてその時…ふと、誰かの言葉が頭の中を過ぎる


帰還するまでが決戦だ………と


勇者「よし………やってやる。やってやるさ!お前達、勇者の底力をその目に焼き付けろ!!」


俺の叫びが、七天の支柱……地下の空洞に大きく響き渡った。


ナビ「こうして…勇者の終わり無き戦いは続く………」



だから不吉なナレーションは止めてくれ



―ユウシャシステム― 完


●余章 ―トゥルーエンド― に続く

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