中途社員
営業の仕事をして、二年が経っても、僕は、父親のアドバイスを実行していた。
その頃、僕のいる営業部に、中途で社員が入った。
「田原 光弘」といい、新婚な男だった。以前の会社でも営業経験のある彼は、不器用ながらも仕事をこなしていき、僕と、いつしか、仕事をチームでするようになった。
ある時、会社の新商品を御得意様に宣伝する仕事を一緒にすることになった。
もう僕と、田原は気心が知れた仲になっていた。
田原が、言った。
「田村、どの会社から、回る?」
僕は、答えた。
「あの、一番、ウチと取り引きのない会社にしよう、ミッチー!」
「いや、あそこは、最後にしようぜ。いつも、あそこは、まともに俺達に対応してくれないだろ」
「だから、行くのさ、ミッチー!」
田原は、首をかしげながらも、僕の言うとおりに、その会社に車を走らせる。
その会社に着いて、二人で満面の笑みで、挨拶をして新商品の説明をしたが、皆、忙しいと、まともに相手をしてくれなかった。
テンションが下がり、会社を出る二人。
車に乗り込むと、田原が、言った。
「田村、こうなるのは、分かっていたろ。俺、初っぱなから、このテンションだと、次に行く、やる気萎えたわ」
「そうだな・・いや、行きづらい所から行くのが、俺の父親のアドバイスでな。確かに、毎回、こんなことになってから、俺の普段の営業は、始まるんだよ」
「親父さんのアドバイスねぇ・・田村、この新商品を二人で回る時は、とりあえず、『行きやすい』御得意様から、回ろうぜ」
田村の要望に、僕は、素直に応じた。




