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第六話 儚き夢と、翻弄される僕

ようやく、主な登場人物が出揃いました。

そして、これまたようやくラストまでのおおまかな流れも決まりました。

これからは怒濤の勢いで書けるぞ!(多分)

 ―――冷たいけれど優しい感触を感じる。




 『マサキは、天使みたいだなあ……』


 僕にそう言ってくれたひとがいた。


 僕はそのとき、二つ年上の従姉と並んで座って、そのひとの横顔を見つめていた。


 僕はあのとき、今はもう思い出せないその声に、何と答えたのだっけ……。


 いつものように首に抱きついたのかもしれない。それとも、にぱっと満面の笑みを浮かべて、ありがとうと言ったのかな。


 よく覚えていないから、今もこうして画面がはたりと停止する。


 終わって欲しくないつかの間の夢は、止まった思考に応じるように突如として世界に侵入してきた光とともに、容赦なく消えていった――――――。




          ********************




 「マサキ。おーい、マサキー。起きろー」


 ふっと白い光の中に放り出され、コウジの声が聞こえてきた。

 同時に、それまで感じていた不思議な感触がふわりと離れていったのを感じ、思わず、追いかけるように目を開ける。


 白い天井が視界に飛び込んできた。嫌な色だ。視線ををそらす。


 久しぶりにあの夢を見た。その前に見た、やけに生々しいおかしな夢が引き金だろう、おそらく。


 「ずいぶんぐっすりと寝てたなあ。もう六時限目もホームルームも終わって、あとは下校するだけだぞー」


 「マサキが保健室で休むなんて、本当に疲れてたんだね。コウジから聞いたけど……」


 コウジの太めの声に続いて、変声期が未だ訪れていないことに対して日々悩んでいるハルトの高い声が、心配するように僕にかけられる。


 ―――うん? 保健室……?


 そう、保健室だ。なぜ僕はここで横になっているんだ?


 そういえば、確か、一つ前のいやにはっきりとした夢の中で……。


 まさか。いや、やめてくれ。あれは、というか、あれも、夢だ!


 あわてて、視線を、こちらを向いている二人の友人の間にすべらせた。


 その瞬間、心臓が跳ね上がり、息を呑んだ。


 天使が。


 白いローブに身を包み、肩まである灰色の髪を小さな指でくるくるといじりながら、ふーん……、とつぶやく、天使が、ふよふよと浮いている。


 「おい、マサキ。どうした?」


 いぶかる声に我に返った。


 上半身を起こし、右手で目元を覆う。


 「……いや、うん。ええと、今、目が覚めた」


 すると、ハルトがくすくすと笑いだした。


 「ひどいなあ、マサキ。ぼくたちの顔を見てショックを受けて頭がはっきりするなんて。そんなに変な表情してた?」


 ショックを受けたのはお前たちの顔にではなくてそこに実在している小さな天使のせいだ。

 とは言えず、苦い表情で布団から抜け出した。


 「もう大丈夫かい? 生真面目少年」


 寝台に腰かけて上履きを履いていると、くるりと椅子を回してアヤ先生が問いかけてきた。


 「……何なんですかその呼び方は」


 渋面を作る僕に対して、アヤ先生はどこまでも澄み切った表情と声で平然と返す。


 「うん? 君を一言で表したぴったりな呼び名だと思うけど? なに、名前で呼んで欲しいの? 生真面目少年くん」


 「確かに、ぴったりだ」


 「アヤ先生ナイスです」


 にやにやしているアヤ先生に、友人であるはずのコウジとハルトが噴き出しながら同意している。


 こっちこそ、ひどいと言わせてもらいたい。仮にも友人関係にある者なら、もっと違う対応をするべきなのではないだろうか。


 「たしかに、マサキくんって生真面目だよね☆ これからはボクもそう呼ぼうかな……」


 天使よ、おまえもか! そんなことを真剣に検討するんじゃない! もしそう呼んだら絶対に返事をしないからな。


 えー、と不満げでいて明るく愉快げな反応に内心で憤慨の声を上げながら、表面上は黙ったまま立ち上がり、壁に掛かっている時計を見上げる。コウジの言ったとおり、もう下校時刻だ。

 鞄を取りに教室に戻る必要があるな。…………誰も残っていませんように。


 ひとに変なあだ名を付けてくださった(うるわ)しの保健医に声をかける必要は無いだろうとそのまま扉に向かった僕の腕を、コウジがあわてて掴んだ。


 いぶかって半眼でコウジの顔を見ると、反対側からハルトが僕の肩をつついてきた。


 今度はなんだと思いながら首を反対方向に向けると、ハルトが笑いを抑えながらあるものを掲げて見せた。


 そ、それは、僕の……。


 「気づかなかったんだね、マサキ。ぼくたち優しいからマサキの鞄もついでに持ってきてあげたんだよ。」


 さあ礼を言いたまえ、と言わんばかりの表情で、コウジが僕の腕を離した。なんだか訳も無く(しゃく)に障る。


 それでもこれはさすがに礼を言わねばなるまい。まだ生徒が残っているであろうあの教室に戻らなくて済んだことは本当にありがたい。


 小さく、助かった、と述べて鞄を受け取ると、僕の両側に立つ二人の友人は顔いっぱいに笑みを浮かべて自分たちの鞄を肩にかけた。

いつも拙作を読んでくださってありがとうございます。


はい、また短くなってしまいました。

はやく何か投稿したかった、というのも、どうしてもここで切りたかった、というのもただの言い訳でございます。

次はもう少し長めにできるように努力します……。


読者の皆様がくださる感想や評価が執筆の活力となっております!

手厳しいご意見でも何でも書いていただけると嬉しいです。



9/12 内容を一部追加しました。

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