メリハリ! クラシック理論
どうもー、一年近く経っての投稿となりましたが電式です。
突然ですが、クラシック音楽を聞いたことはありますか?
「なにを急に言い出すんだチミは!」とか「音楽の授業とか、テレビやラジオで聞いたことあるよー」とか、これを読む方の年齢層を想像すると、そんな声が多いんじゃないかなーと思います。
そうですね、私はクラシックで言えば、【ご想像ください】が好きですね。
――冗談はさておき、「クラシック音楽と小説には何の関係があるのさ?」という声が聞こえてきそうです。
これは私個人の考え方ですが、小説の構成はクラシック音楽をイメージして作るといいんじゃないかなと考えています。
クラシック音楽というのは、その他のジャンルと比べて、音量の変化が激しいジャンルです。
「小説の構成の盛り上がりを、クラシック音楽の音量の変化に例えて考える」
と言えば、勘の良い方ならもう私の言いたいことに気がつくのではないでしょうか。
結論:物語の構成はメリハリをつけることが大事!
「起承転結」や「序破急」を意識しよう、と言い換えることもできますね。
これらを意識して作品を書くと、一体どんなメリットがあるのでしょうか。
まず、逆にメリハリを意識しない作品はどんな世界なのか、ちょっと想像してみましょう。
ここでは、ファンタジー系の架空のバトル作品で考えてみます。
*例1*
・設定
主人公である彼は、VRMMOプレーヤーである。
彼は仲間と共に、人間やモンスターと戦いながらゲームの攻略を進めていく。
・構成
始まり:主人公と仲間の出会い
初バトル
バトル
バトル
バトル
バトル
バトル
:
-----
(強いモンスター)を倒した僕達の元に、以前助けた少女プレイヤーが、息を上げて走ってきた。
「なにが起きたんだ?」
泥と傷だらけになった彼女に事情を聞くと、どうやら以前から警戒視されていたモンスターの群れが俺達の国に向け大移動を開始したらしい。
既にモンスターはこの街に向けて進軍を開始。モンスターを討伐するため、上位プレーヤーは戦力をかき集め、二日前に敵の進軍方向に向け出立したそうだ。
それを僕達に伝えるためだけに、彼女は遥々ここまで傷だらけになりながら走ってきたのだ。
「ちくしょう、呑気にレベル上げしてる場合じゃなかったぜ!」
「俺らって見事に乗り遅れちゃった感じ?」
「それな」
「ていうか、今倒した(強いモンスター)は最強格のモンスターだったはずじゃ……!?」
僕達が今狩ったモンスターは、それを狩ることができれば一流として認められるほどの強さを持った――(略)
街に残っているのは商工系のプレイヤーや、まだ戦力になるには不安のある初心者や中級初心者ばかりだった。
「俺達も装備を整え次第追いかけよう」
「僕は、近くの街までこの娘を連れて行くよ。傷だらけのまま一人で返すわけにはいかない」
「おう。後で追いついてこいよ!」
「任せなって!」
-----
*
んー、意外といいんじゃないでしょうか。
途中で能書きに中略が入るなど、今回も内容は色々やっつけ感満載ですが、場面としては悪くないです。
(例えにそこまで設定を凝らせる必要はない……ですよね?)
展開は悪くないと思います。
ひと息つこうとしたら、タイミング良く(悪く)次の撃破目標が現れる。現実でもあり得ることです。
ただ、この展開を「何度も連続させる」ことはちょっと考えものです。
例えバトルがメインだからといっても、バトルシーンが好きで書きやすいといっても、延々とバトルシーンを連続して続けてしまうのは良くないのではないでしょうか。
そう考える私の理由は、「人間の『適応』する」習性です。
人間は相対的に物事を判断していることが多いです。
例えば「あの時の辛さに比べれば――」なんて考え方も、現状と、過去にあった辛いことと較べています。
乗り物に長時間乗った後に降りて歩くと、歩く速度が普段より遅く感じてしまう。
そんな現象も、多分乗り物の速さに慣れてしまったことから起きる現象でしょう。
もうちょっと例を挙げるならば、非常にうるさいパチンコやゲームセンター。
最初こそ「うるさい」と感じるでしょう。しかし、次第にその音量に慣れてしまい、その場にいることが苦痛でなくなってしまいます(あるいはある程度軽減されるでしょう)。
映画館で大迫力の作品を見た後、映画館を出て人と話をすると、自分たちの話す声がいつもより小さく聞こえたり、映画館の外が異様に静かに聞こえたりしてしまう現象も、素人考えですが、映画の大音量に慣れた状態の耳で、いつもの音量を聞くからだと思います。
小説も同じように、いつも手に汗握る展開が続けば、読者も作者もその状況に慣れてしまい、刺激が足りなくなってきてしまいます。
すると、慣れてしまう前に感じたようなフレッシュな刺激を求めて、色々対策を考えることになります。
もしかしたら、戦闘力のハイパーインフレや、新キャラの大量投入も、最初のフレッシュな刺激を求めた結果の一つなのかもしれません。
この無意識の「慣れ」が、「一本調子だなぁ」という印象を受けたり、あるいは漠然と「飽きてきてしまったなぁ」と感じてしまう原因になるならば、これは作者側で対策できるなら対策しておきたいところですね。
では、読者に「慣れさせない」ようにするには、どう対策したらいいでしょうか。
そうですね。読者が「普通のレベル」と感じる点を、作者がコントロールしてみたらどうでしょうか。
「でも、どうやって?」
そこで、クラシック理論の登場です!
クラシック音楽のように、小さく、繊細で落ち着いた部分と、大きく、大胆で荒々しい部分をしっかり「メリハリ」をつけて分けることで、読者に相対的に大きな変化を与えることができます。
イメージ1 メリハリを付けない
↑ ■■
刺| ■ ■■■■
激| ■■ ■■■ ■■■■■■■■
※| ■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■
|■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
始まり→ 完結
イメージ2 メリハリを付ける
↑ ■■
刺| ■■■■
激| ■ ■ ■ ■■■■
※| ■■ ■ ■■■■■■■■■■■
|■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
始まり→ 完結
※始まりの状態を基準に考えます
物語の完結直前はだいたい一番盛り上がるところと相場が決まってますから(←)それに対応する感じで盛り上がりを描いてみました。
作品構成によっては、もしかしたらそうじゃない作品もあるかもしれませんが、今回はこの例で行ってみましょう。
イメージ1は、メリハリを付けない状態です。
作品中盤で、5段階中3の状態で上下を繰り返しています。
この「3」の状態を普通と感じてしまうと、作者はさらなる刺激のために、より刺激の強い(新鮮な)展開を考えなくてはいけません。
例えば、グロ系描写が頻繁に出る作品の場合、そのグロさが(その作品世界の中で)普通になってしまうのは、代替するものを用意していない場合、非常事態でしょう。
イメージ2は、メリハリを付けた状態です。
盛り上がるところ、そうでないところを区別することで、5段階中1~2の状態を普通と感じるように抑えようとしています。
普通のレベルと、盛り上がるレベルの幅を持たせることで、インパクトと新鮮さをある程度維持し、表現に余裕を持たせることも、もしかしたらできるかもしれません。
例えば恋愛小説で、両想いな二人が、互いになかなか一歩を踏み出せない状態が続いたとき。
ちょっとしたきっかけを与えて、キャラクターの動作や感情にこれまでにない変化を「ひと時だけ」起こせば、それは十分「盛り上がり」になるでしょう。
(そこから、その変化を日常的に与えるのか、特別なものとしてまたお預けにするのかは作者さん次第ですね!)
「じゃあメリハリをつければ、未来永劫飽きることはないのか!」
というと、これもちょっと限界があります(^^;
メリハリがある状態を「普通」と感じてしまって、やっぱりさらに強い刺激を求めてしまう可能性があります。
けれども、作品寿命を延ばすための予防手段として、作者のモチベーション維持の一環として、メリハリを意識して書いてみるのも、悪くないんじゃないかな、と私は思います。
どうせ書くなら、楽しい物語を書きたいじゃないですか!
***まとめ***
作品は、常に盛り上がったままでは、読者はそれに慣れて飽きてしまうかも。
クラシック音楽の指揮者になった気分で、メリハリをつけてみよう!
盛り上がるところ、そうでないところを分けて、読者が盛り上がりに対して「耐性」を持たないように構成を考えてみよう。
メリハリの効いた作品は、必ずしもいつまでも感覚的な新鮮さを保ち続けられるとは限らない。
なので、メリハリを効かせて今の手法の延命をしつつ、新要素を入れていくこともまた手段の一つ。
**********
普段よりも短めですが、長々と書けばいいモノでもないので、今回はここまでです。ありがとうございました。
……このエッセイに慣れてしまって、飽きてきた方もいるのではないでしょうか(笑)
これは元々私向けの文章ですOrz
ひっそりと公開しているはずなのに、こんなに評価を頂いて、目ん玉が顔から飛び出て元に戻りません (; Д ) ゜ ゜