失敗しにくい物語の作り方
世界観、キャラクターの設定が終わったら、いよいよ物語を作る作業に入ります。
しかし、すぐに物語を始めてしまうのは危険だと私は思います。
もちろん、100人いれば100通りの作り方、1万人いれば1万人の作り方があるわけで、
そこをやいやい言うつもりはありません。
あくまでもここに書いてあるのはその一通りに過ぎません。
ここに来てくださっている方は、
「物語の始め方が分からなくて不安」
「物語が詰まってしまった」
「とりあえず見てみるか」
「ヒマだからテキトーに見ておくか」
大きく分けてこの4つに分けられる思います。
まさかこれを読まないと殺されるなんて方はいないでしょうし……
今回も結論から言いましょう。
結論:物語の予定表つくろう!
小説を書きだすということは、帆船に乗って大海原を航海するようなものだと思います。
はじめは「こういう方向で進んでいこう」と舵を切ったのに、いつまで経っても目的地に着かない。
ここでいう「目的地」は、作者が「こんなのやりたい!」と思うシーンや、物語の結末のことです。
私は目的地に着かない、いわゆる失敗する状況を3パターン考えました。
1.物語の書き出し――…‥・・行方不明
2.物語の書き出し――――――――書きたいシーン――…‥・・行方不明
(書きたいシーンまで辿りつけない場合も含む)
3.物語の書き出し――――――――書きたいシーン――――…‥・・結末に辿りつけない
作品が止まってしまった原因は、この3つのタイプに当てはまるのではないでしょうか。
もっとも、作品執筆経験の浅い私ですから、未知の原因がないとも限りませんが……
こういうことになる原因は、「目的地まで行くまでの自由度が高すぎる」ことにあると思います。
1.物語の書き出し――――行方不明
まず、物語の世界観とキャラクター設定しかない状態、つまり1番の状態で物語を始めた場合。
これはかなり厄介です。
そもそも物語のあらすじすらないのですから、行方不明になるのも無理はありません。
お話がなくて、何をもって物語と言うのでしょうか…………
船で例えるなら、地図も方位磁針の用意もなしに手漕ぎボートに生身一つで乗り込んで大海原に出航するようなものです。
私が推測するに、作者側の心理は、
「物語とか思いつかん」←思いつかないと書けませんよ……
「キャラクターたちに性格とか色々設定しているし、適当に動いてくれれば物語になるんじゃない?」
「感動モノの人間ドラマが現実に起きてるんだから、物語でも起きないはずはない」
などという考えのもとで始めたのではないでしょうか。
神風に吹かれるまま流されて、エンディングまでイケちゃったYO!
こんなラッキーな方もいるかもしれません。
しかしよく考えてみてください。それはあなたの望んだ結末でしたでしょうか。
他の方の物語と比べて、クオリティーはどうでしょうか。
物語の伏線の張りと回収はできているでしょうか。
そうやって行き先不明で物語を進めること、
つまりあなたが純粋にキャラクターを信頼していることはいいことです。
しかし、キャラクターに背負わせる荷物が重すぎるのではないでしょうか。
物語の神様であるあなたが手持ちぶさたでいいのでしょうか。
2.物語の書き出し――――――――書きたいシーン――――行方不明
(書きたいシーンまで辿りつけない場合も含む)
これは結構多いと思います。このシーンが書きたいから物語を始めたけれど、
いざ始めてそのシーンを書いてしまうと、ネタ切れになってしまった。
もしくは、シーンまで辿りつくまでの構成がうまくできていなかった。
これは、半分物語を作り上げている状況だと思います。
「ここまでの物語は思いついたけど、あとは天に任せる」状態です。
この状態も、結局は豪華客船で航海している途中で、
食糧なしに救命ボートに生身一つで乗り込んで大海原に飛び出すようなものです。
書きたいシーンを書いてしまったら、そこで力尽きて作品終了、というのもこの場合に含まれます。
3.物語の書き出し――――――――書きたいシーン――――…‥・・結末に辿りつけない
これは惜しいと思います。
書いている途中で物語に矛盾があることに気づいて、
それを修正するために新たに物語を書いたけど、物語がややこしくなって……
とりあえず気合いで物語を完結させようと思ったけど――
などのパターンですね。
例
*
主人公とキャラクターA、B、Cの4人で物語が進んで、結末も4人で迎えるはずだった。
だけど、キャラクターDを加えたくなったので加えた。
でもどうしても物語の結末はもとの4人で迎えたい。
そうするためにはキャラクターDをどこかで消さなくてはいけない。
物語の改変が必要だ。
いい物語が思い浮かばない。
*
このように、小説を完結させるのは難しいです。
そこで、このような事態に陥らないために、もあらかじめ予防しておくといいと思います。
それが、予定表です。
話は変わりますが、工事現場で工事の工程表を柵に貼りつけているのを見たことがあるでしょうか?
大きな建造物を造るために、細かく予定を立てています。
建物の作業で予定外のことをやって、元の設計と全く違うものが出来るようではいけません。
可能な限り予定内で完成するように、という試行錯誤の末に今の形になったのでしょうね。
工程表(内容はむちゃくちゃですが、こんなものです)
○月 △月
――――――――――――――
← 基礎固め →
←杭打ち →
← 休日 →
それと同じようなことを小説でやれば、物語を完結に導ける可能性が高まります。
別に工事の工程表と同じ書式である必要はありません。
要は、最初から最後までの物語を、書く前に決めてしまうのです。
更に突き詰めて言えば、キャラクター達がどういう目的を持って進む物語なのか、
そしてその結果迎える結末を最初に考えるんです。
最初に結末を考えることで、伏線張りと回収がやりやすくなります。
それでは具体的にどういうふうに作っていけばいいのか、という話になります。
私は結構なめんどくさがりなので、
2011年7月16日(土)公開の私の活動報告より、このことについて書いてある文章を持って来ました。
ソース(http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/76285/blogkey/223413/)
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現在連載中の小説は、スタートからゴールまでの「あらすじ」を先に作り、
それから物語を書き始めるようにしました。
私は、あらすじは作品の一部という考えですので、
データーの盗難、紛失をしてしまわないよう、
携帯型PDA端末、通称「黒い弁当箱」に作成、保存しています。
物理的に完全オフラインのクローズド環境なのでウィルスの心配もなし、
ファイルの閲覧にセキュリティーをかけて自分しか閲覧できないようにしています。
(どーでもいい話、通信インターフェイスはIrDA1.0かASKかオプションポート15か電話線……
ええ、ネットが各家庭に普及する前の1996年製です。テレビで言えばショムニとか古畑任三郎第2シーズンあたりの時代)
本当はそこまでするのは人に見せるのが恥ずかしいので、見せたくないからなのですが……
今回は、連載小説を失敗しない方法の一例として、今回は思い切って公開します!
今回公開するのは初期構想なので、
後で変更・追加・削除された部分がかなりあります。
(例:拙作 マジで俺を巻き込むな!!第3話プロットより抜粋)
第3話構想
T終業式~ ←Timeを略してT
Pステージ25 ←Place(場所)を略してP
C通常メンバー+new妹(小二)←Characterを略してC
後に小一に設定変更、木下匠を追加
流れ
自転車で空港まで走る主人公の回想
↓
両親の長期旅行が決まり、実家の妹をコウに預ける
↓
(空港から)妹を連れて帰宅
↓
通常メンバーのうち一人からのメール
夏休み中(盆直前)に開催される
音楽祭の強制参加決定通知
↓
音楽の練習と妹の世話の苦しむ主人公
↓
そんな状況下でも無駄に頑張る主人公
(潰れかけの遊園地or水族館or動物園に連れて行く)←削除。第4話に持っていく
↓
(音楽祭)本番当日、ジョーが欠席。
メンバー不足をパフォーマンス(神業)的演奏で何とか乗り切る。
↓
終わり
見ても訳わかんないと思いますので、掲載時との相違点を←で記しました。
あー……恥ずかしい
とりあえず、こんな感じで物語を作ります。
とにかく書き始めたいという衝動を抑えて、まずはこれです。
これ抜きに書き始めてしまうと、私の場合、
これを作るのが後回し後回しになって、結局収拾がつかなくなりそうなので。
この構想は大ざっぱではありますが、話のスタートとゴール以外に、
チェックポイントのようにイベントや状態が入ってきます。
チェックポイントを通過して物語を作れば、一応の物語はできるわけです。
「絶対これをやりたい!!」という優先度の1番高いものは、
あらかじめこの構想の中に入れておきます。
そして、この構想だけでは物語は面白くないので、
ここにどんどん肉付けしていっちゃうわけです。
書いている途中で、「あっ、こんなのもやりたい」というものが入れば、
それをこの構想の中に入れることができるかを考え、
できるならば次にどの場所に入れるかを考えます。
入れる場所が決まったら、最後に辻褄合わせです。
辻褄合わせは、嘘をつく感じでやります。
嘘は自然につかないとばれてしまいますよね?
嘘がばれないようにするために、嘘にウソを重ねます。
そうやって逆算して、今現在書いている場所から、
「どの人物に何をさせれば、自分が書きたい場面を作れるか」を計算して、
物語の続きをはじめるのです。
例えば、受験生の主人公Aが、家で勉強をしているシーンを書いていたとしましょう。
今回の「あ、これもやりたい」テーマは、恋愛テーマ、≪電車の中で一目惚れ≫です。
ここからは、考え方の流れを書いていきます。
主人公が電車に乗り合わせた人物Bに一目惚れするシーンを書きたい
↓
そのためにはどうする?
↓
主人公を外出させる必要がある
↓
どんな理由で外出させようか?
↓
主人公は受験生だから、映画などの重要度の低い理由はつけにくい
↓
重要度の高い理由を探そう
↓
「母親が遠出した先で、財布を無くして帰れなくなった」ことにしよう
↓
母親の外出の理由はどうしよう?
↓
知人に会いに行くことにしよう
↓
よし、書き始めよう
(サザエさんかよ、というツッコミは重々承知です)
このような感じで作り、実際にそのようになるように書き始めます。
【俺が部屋にこもって勉強をしていると、母親が知人に会いに遠出する、と言って家を出て行った。
……中略……
家の電話が鳴った。俺が受話器を受け取り、はいと返事をする。
受話器から聞こえてきたのは、母の焦った声であった――】
こんな感じです。
文章が全く面白くないのはスルーの方向でお願いします。
こうすれば、話が自然とうまくかみ合って、楽に物語を進めることができます。
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だいたいのイメージは掴めたでしょうか?
もちろん、これは自分用の構想なので、自分が読んで理解出来るだけの情報量で十分です。
ただし、忘れそうなら必ず記録しておきましょう。
この説明で出てきた、「マジで俺を巻き込むな!!」は、
複数の1話がまとまって、一つの大きな物語になっています。
上記の説明では、この第3話の構想を例にした作品の作り方です。
電車を考えるといいかもしれませんね。
地方で走る1両編成の電車ではなく、複数両編成の電車です。
「1話 出会い」→「2話 ○○」→「3話 △△」…………「最終話 ☆☆」
|←――――この話の集合で大きな一つの物語、という構造です――――→|
小説づくりに慣れない方は、このような複数話の集合で大きな一つの物語、という構造をお勧めします。
物語の最初と結末を練って、それまでに続く物語をモジュール化するのです。
細かい1話の中でも、始めと終わりを計画を練るので作品作りの練習になります。
また、何より目標が小さいので達成感が味わえますし、
物語が部品化してあるので、改稿をする時もどこまで改稿すべきかという目印ができます。
とにかく作成と管理が楽なのです。もちろん、楽かどうかは人それぞれですが。
物語の作成を始めるときの注意点
物語の初めは、1~3人から始めた方がいいでしょう。
読者はいきなり大量の人数が出てくると、誰が誰なんだか見分けがつかなくなってしまいます。
キャラクター一人に絞っても、名前や体格、性格や言動のクセなど、
最初読者が覚えるべきことがたくさんあります。
それでまた、読者が苦痛を感じて去っていってしまう原因の一つになりかねません。
物語をロケットスタートしたくなる気持ちはわかりますが、
読者のことを考え、ソフトランディングで慌てずにいきましょう。
長編となると、登場人物も徐々に増えていくと思います。
少しづつ人数が増えていくので読者の負担も軽いですが、
物語が分かりやすくするためにも、無用心に人数を増やさないほうがいいと思います。
自分の中で、キャラクターの重要度をランクづけすると後で便利かもしれません。
また、1人称小説での登場人物の視点の頻繁な入れ替えは混乱のもとになるので、
視点を切り替えるときは区切りのいい場所でやるほうがいいと思います。
主人公がいるなら、その主人公の視点をメインに進んでいくべきです。
主人公視点のみだと得られる情報は減りますが、
それをうまく活用すれば読者があっと驚くような作品になり得ます。
視点切り替えは控えめに。
*まとめ*
物語は最初から最後まであらかじめ作っておく。
作品の要所要所に「チェックポイント」を作成し、不用意にルートから外れないように注意する。
小説内でやりたいイベントが増えたら、それらをうまくチェックポイントの中に組み込む。
できない場合は後回しにするか、諦める。
組み込む時は嘘を付く感じで「つじつま合わせ」
物語の初めは少人数から始める。多すぎは読者の負担。




