いわく付きブレスレット「滑路の連珠」
以下は私、ナツロウが持つ、このブレスレットに関する実話だ。
1.入手の経緯
この天然石ビーズのブレスレットは十年ほど前、地元のフリーマーケットで見つけた。出店していた女性は「一目惚れして買ったけれど、結局数回しかつけなくて、緑青が出て状態も悪いし」と言い、安く手放そうとしていた。私は古着も古道具も平気な性分で、緑青の浮いた金具も、むしろ味があると感じて買った。値段はコーヒー一杯より少し高いくらいだった。
2.曰く一:カーブ転倒
それを左手に着けていたある日、バイクに乗っていると通り慣れたカーブで、何もないのにリアタイヤが突然滑った。速度は出ていなかったが、バイクごと路面を滑り転倒した。
直後、背後でタイヤが焦げるような音がした。音の方向を見ると、真後ろを走っていた軽トラックが急停止して止まっていた。そのフロントタイヤは地面に横たわった私の頭の先、およそ五十センチの位置まで迫っていた。
3.曰く二:林道転落
数週間後、夜中に山の林道を4ストミニで走行し遊んでいた。よく暇な深夜に走っている林道だ。舗装されていない砂利道で、ライトに照らされた白い粉塵の奥に木々が浮かぶ。緩やかな右カーブを抜けるとき、ハンドルが妙に軽くなった。気づけば前輪が崖側へ滑り、そのままバイクごと落ちた。
幸いそれほど高くはなかったもののバイクのタンクは凹み、腕には傷痕が残った。そのときも、左手首には同じブレスレットがあった。
4.その後、現在までの経緯
偶然と言えなくもないが、それまでバイクで転倒事故すら起こしたこともなかったため、私はブレスレットを着けるのをやめ米軍のアンモボックスにしまった。それきり、いつしか存在自体を忘れていった。以降、事故は一度も起きていない。
十年ぶりに思い出し取り出したブレスレットは、金属の緑青は少し増え、天然石ビーズは乾いて軽くなっているような気がした。




