2 チートジョブ【上位存在】に覚醒
『【上位存在】は文字通り、あらゆる存在の上に立つ究極のジョブです』
『その力は、あらゆる生命体に干渉することが可能です』
『ジョブの習熟度に応じ、対象の思考、感情、肉体、魔力、魂、やがては存在そのものを支配し、しもべにすることが可能です』
『このジョブに逆らうことは、理論上不可能です』
「……どういうことだ?」
俺は説明を聞きながら、信じられない思いだった。
体に得体のしれない力が満ちているような感覚がある。
精神が高揚し、万能感に包まれている。
今の俺はなんでもできる。
まるで全知全能の神になったような――そんな気分だった。
俺は体を起こす。
……傷一つない。
『人間としてのあなたはすでに死亡し、その体は修復不可能なまでに損壊しています』
『今の体は【上位存在】として生まれ変わったあなたの、新たな体です』
『現在のスキルは【上位存在】の第一段階に到達しています』
『射程範囲内の生命体に対し、命令言語が届き次第――【実効支配】を成立させます』
『新たな人生をご堪能下さい』
『良き人生を。超越者よ』
「超越者……だと」
俺は自分の体をあらためて見下ろした。
特に今までと外見に変化はなさそう。くたびれたオッサンの体。
が、何かが違う。
体が異様に軽いし、関節の痛みなどもない。
と、そのとき――。
ずし……ん。
足音が聞こえた。
見れば、前方には巨大な【タロス】の姿がある。
その足元に大きな血だまりが見えた。
おそらく、俺を踏み潰したときのものだろう。
「やっぱり……俺は一度死んだのか……?」
そして、この体に生まれ変わった……?
俺はまだ信じられない思いながらも、少しずつ現実を受け入れ始めていた。
ずしん、ずしん……。
【タロス】がゆっくりと近づいてくる。
勇者パーティですら退けた圧倒的な戦闘力を持つモンスター。
なのに、こうして対峙していても恐怖心が湧いてこないことに、俺は不思議な気持ちを感じる。
妙に冷静で、妙に醒めた気持ちだった。
そう、さっきの声はこう言っていた。
『現在のスキルは【上位存在】の第一段階に到達しています』
『射程範囲内の生命体に対し、命令言語が届き次第――【実効支配】を成立させます』
「お前は――」
俺は【タロス】に語り掛ける。
「俺に、従え」
シンプルに、命令を伝えた。すると、
うおおおおお……んっ。
悲鳴のような作動音。
次の瞬間、【タロス】はその場にゆっくりと膝をつき、頭を下げる。
まるで俺を主人と認め、服従するかのように。
「俺の命令が届けば、生命体はそれに従う――本当にすべてを従える力なのか……?」
俺は己に傅くモンスターを呆然と見つめた。
「こいつ……どうすればいいかな」
俺は思案する。
こんな巨大なモンスターを地上に連れていくことはできないし、大騒ぎになるだろう。
「……悪いけど、ここにいてもらった方が良さそうだ」
ヴンッ。
俺の言葉にうなずくように眼光を瞬かせる【タロス】。
「もしここに誰かが訪れても、むやみに襲ったり殺さないって約束してくれるか」
ヴンッ。
また眼光を瞬かせる。
了承してくれたようだ。
「よし、じゃあ俺は行くよ」
自分を殺した相手に挨拶をするのも変な気分だと思いつつ、俺は地上へ向かった。
道中、モンスターが襲ってきても、俺が軽くにらむだけで服従した。
ただし、罠に関しては別だ。
試しに落とし穴があった場所に『塞がれ』と命令してみたが、何も起こらなかった。
「無機物に対しては効果がないのか……」
やはり今のところ俺が従えられるのは生命体だけのようだ。
罠には気を付けて進もう。
とはいえ、幸いにも遺跡内に罠は多くなく、障害といえるものはモンスターだけだった。
それらは俺の命令によって一瞬で無力化する。
さらに、そいつらを従えて護衛代わりにすることで、罠も事前に潰せたし、危なげなく元来た道を戻り、地上に生還することができた。
「ふうっ」
陽光を浴びた俺は大きく伸びをする。
「また生きて帰ってこられた――」
感慨にふけった。
「さて、これからどうしようかな」
俺はあらためて思案する。
当然、勇者パーティにはもう戻れない。
これからどうやって生活していくか……。
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