16 勇者セラ、破滅の序曲(セラ視点)
りいいいいいいんっ。
突然、宿場町全体に警鐘の音が鳴り響いた。
魔王軍が襲来してからは、世界中で使用されている警鐘の音。
それはつまり――。
「この街に魔王軍が攻めこんできた!?」
セラはハッと立ち上がった。
「行きましょう」
マリンも同じく立ち上がる。
ザックに関する相談はいったん中断だ。
セラたちは勇者としての使命を果たすべく部屋を出た。
外に出ると同時に、爆音が響き渡った。
二度、三度、四度――。
それに合わせて破砕音が聞こえ、町の外壁の一部が壊れるのが見えた。
「魔族が町に入ってくる――」
「マリン、飛行魔法をお願い!」
セラが叫んだ。
マリンはうなずき、自分自身とセラに飛行魔法をかける。
二人は空中をかけ、外壁の破損部分まで一気に飛んだ。
「――どうやら中級魔族の部隊みたいだね」
外壁に空いた穴から入ってくる魔族たちを見て、セラはそう判断した。
彼らから漂う魔力の質や威圧感、そして姿かたちからおおよそのランクは判別できる。
彼らは魔力弾を放ちながら町を破壊していく。
「させるか!」
セラは地面に降り立った。
聖剣を抜き放ち、叫ぶ。
「あたしたちは勇者パーティ【花蓮の姫】!」
名乗って、魔族を次々と斬り伏せていく。
高揚感が胸の中に広がっていった。
自分は勇者なのだという誇りが湧いてくる。
これが、セラが戦う理由だった。
人々を、守りたい――。
ただそれだけの気持ちで、ただの村娘だった彼女は聖剣に選ばれ、勇者となり、そして命懸けの戦いを続けた。
ザックを犠牲にしようとしたことは、言い訳ができない。
すべてはセラの心の弱さが招いたこと。
だからこそ、償いたい。
「セラさん!」
「セラ!」
「セラ……」
と、聖女エルザ、武闘家ユウナ、戦士シーリスもやってきた。
これで勇者パーティせいぞろいだ。
「さあ、行くわよ――この町を守るために!」
セラが聖剣を掲げて、高らかに叫ぶ。
そして、この世界を守るために。
使命を胸に秘め、セラは中級魔族たちの群れに突っこんでいった。
マリンの攻撃魔法やエルザの支援魔法、ユウナの格闘にシーリスの防御……パーティメンバーの援護もあり、セラは次々と魔族を斬り伏せていく。
「いける――!」
魔王軍といっても、しょせんは中級魔族。
セラたちが連携すれば敵ではない。
「――えっ!?」
その時、セラは聖剣に違和感を覚えた。
剣の輝きが、いつもより鈍い。
刀身に宿る聖なる光が澱んでいるように見えた。
「どうなってるの……!?」
不審に思いつつ、セラは目の前の敵に聖剣を振り下ろす。
ぴしり……。
その瞬間、刀身に亀裂が走った。
「なっ……!?」
勇者の象徴であり、世界最強の武器である聖剣が。
たかが中級魔族を相手に、砕けようとしている――?
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