14 【上位存在】VS魔将軍、決着
俺はフィオの前に立ち、魔将軍ザラディーザと向かい合った。
【雷鳴六閃】がまだ三体残っていたはずだが、姿が見えない。
状況から見て、フィオが倒したのだろうか?
彼の左腕は黄金の輝きを放つそれに変化している。
さっきここに来る直前に見えたが、右腕も同様の変化をしていた。
フィオがなんらかの能力を秘めていたのか、それとも――?
いや、今は目の前の戦いに集中するべき時だ。
俺はあらためて魔将軍を見据える。
「また貴様か、人間。先ほどはよくもやってくれたな」
その声には、『格下』である人間に不意を突かれ、魔法を撃ち消されたことへの苛立ちが色濃くにじんでいた。
「ザック、あいつ、さっきより強くなってるよ」
かたわらでツクヨミが警告した。
「魔力が桁違いに上がってる」
俺は魔術師じゃないから相手の魔力の強弱を察知するような真似はできない。
ただ、ザラディーザの全身から漂う威圧感が異常に増大していることは分かった。
おそらく、さっき俺と対峙したときはまだ様子見だったんだろう。
そして今のこいつは本気の状態――。
「問題ないさ」
俺はニヤリと笑った。
そう、相手がどれだけ強大でも俺には関係ない。
俺は――奴よりも上位の存在なのだから。
「ふん、一瞬で消し去ってやるぞ、人間。格の違いを思い知らせてやろう」
ザラディーザが両手を天に掲げた。
「――いや、思い知る時間すら与えず、消し去ってやる」
ごごごごご……。
さっきまで晴れていた空が突然曇天に変わり、雷鳴が響く。
こいつの本気の魔力は天候すら変えるのか――。
「我が雷で消え去るがいい――【聖滅黒雷覇】!」
天から無数の稲妻が降り注いだ。
おそらくは、都市そのものを消し飛ばせるほどの破壊力だろう。
閃光で周囲が真っ白に染まる。
稲妻が着弾して、大爆発が――。
起こらなかった。
「な……に……!?」
ザラディーザは呆然としている。
自分の魔法が『不発』に終わったことに。
「ど、どういうことだ……? 俺が、魔法を失敗するなどあり得ぬ……!?」
「『失敗させた』のさ。俺の意思で」
ザラディーザに語る俺。
「お前の魔法は俺に危害を加えられない。周囲にもいっさいの被害を出すことはできない。すべての魔法は発動前にキャンセルする――」
俺はザラディーザにニヤリと笑いかけた。
「これがお前に対する命令だ」
「命令だと! ふざけるな!」
ザラディーザが絶叫する。
「ならば絶対に失敗しない低ランクの魔法を連発するまでだ! そら、消し飛べ!」
どどどどどどどっ!
無数の魔力弾が放たれる。
それらは四方から俺に迫り――、
「無駄だと言ったろ」
しかし、空中で止まった魔力弾は、そのままザラディーザの元に戻っていった。
ごうんっ!
自ら放った魔力弾の群れを自分自身に受け、よろめくザラディーザ。
「ぐ……お、おのれ……」
「最初から勝負はついている。お前は俺を傷つけられない。対して――俺はお前をいつでも滅ぼすことができる」
「馬鹿な……馬鹿な……」
「その前に、フィオを傷つけた罰を与える」
俺はザラディーザをにらんだ。
「まず、その自慢の翼だ。自分の手でひきちぎれ」
「な、何を……! うっ、ううっ……こ、これは手が勝手に――」
ザラディーザの両手は自らの意思に反し、俺の命令に従ってその翼に伸びていく。
ばきっ!
ばりばりばりぃっ!
そのまま左右の翼を付け根から引きちぎり、放り捨ててしまった。
「ぐあああああああああっ……」
鮮血が盛大に噴き出し、ザラディーザは苦鳴を上げる。
「角もだ。地面に頭を打ち付けて砕け。角が完全に砕け散るまで、打ち付け続けろ」
俺は次の命令を下す。
「ば、馬鹿な、また体が勝手に――う、うわぁぁぁぁぁっ!?」
ザラディーザは俺の命令通り、地面に頭を打ち付ける。
何十、何百、何千、何万――。
とうとう立派な角は砕け散り、ザラディーザは顔中が血まみれになりながら、苦鳴をもらしていた。
「うぐぐぐ……」
その顔は蒼白で、俺に対して恐怖の表情を浮かべている。
既に先ほどまでの威勢も、威圧感も、完全に消え去っていた。
「さあ、最後の命令だ」
俺はザラディーザを冷ややかに見つめた。
「滅びろ」
「ひ、ひいいいい……」
俺の【上位存在】の力は、俺自身を強化したり、超絶の身体能力や魔力を与えてくれるわけじゃない。
つまり、俺自身の戦闘能力は何も変わらない。
一般人と大差ないものだ。
だから、強大な敵を倒すためには――そいつ自身の力を利して、自ら滅んでもらえばいい。
「自らの魔力で自分自身を消し去れ、ザラディーザ。跡形もなく、な」
「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」
魔将軍の、絶望の絶叫が響き渡った。
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