6 モモは生い立ちと翼
私の地元では8月7日が七夕らしいです。
メーティリアが翼狩りについて、教えてくれた
「翼狩りとは、名の通り翼族の翼を取り持ち去ること、理由は分からないけど…一時期減ってたんだけど最近また増えてるらしい」
モモは目に涙を浮かべながら翼について語る
「モモにとって翼は普通の翼族より特別なものだったのです。モモは1年前エーグル家が経営する孤児院から里親に引き取られ、最初の頃は嬉しくてとても大切にされていました。
ですが、だんだん本性が見えてきたのです。ある日家に帰る途中急に雨が降ってきて全身びしょ濡れで帰ると、顔を引っ叩かれしばらく部屋から出してもらえない事があり部屋の扉に耳を傾けると里親夫婦が
(あの子の翼目当てで仕方がなく連れてきたんだから)と話しているのが聞こえて確信したんです…」
メーティリアが
「もしかして、街で年に1回あるコンテスト?」
「はい、モモはそのコンテストの賞金目当てで引き取られただけでモモ自体に価値は無かった…翼が無くなった今、モモは何もないただの人です。本当に美しかったんですよモモの翼…」
この言葉はメーティリア スィロワ 姫藍それぞれ違う意味で3人の胸に刺さる
「メーティリアさんスィロワさん、モモちゃんをパボーネ家に連れていけませんか?お願いします。このままじゃ…」
「私もその気持ち、スィロワは?」
スィロワは顔を曇らせたまま、ため息をする。
「好きにすれば…姫藍とモモは早く乗れ」
スィロワは少し渋っていたが、乗せてくれた。
モモは嬉しそうに
「皆さん感謝します。この御恩、いつか倍にしてお返ししてみせます!!」
その言葉を聞いてスィロワは飛び立つ寸前、小声でポロッと言葉をこぼす
「懐かし…」
メーティリアは黒曜の色の翼を広げ、スィロワも翼を大きく広げ紫陽花色の空へ飛び立つ。
30分するとパボーネ家が管理している町の手前に降りる。
姫藍は疑問思う
「なんで手前でわざわざ降りるんですか、町の中に直接降りた方が早くないですか?」
姫藍にルールを説明しようとしたメーティリアだったが、途中からモモが説明をし始めた。
「それはルールで決まっていて……」
「町から飛び立つのは良いが、降りるのは昔からのルールで禁止されています。違反したら高い罰金取られますよ姫藍ちゃん、翼族の常識です」
「私の代わりに説明ありがとう、モモちゃん物知りなのね……」
4人は町の中を通ってパボーネ家へ向かう。
パン屋の前を通り
「さっきモモちゃんが食べた蒸しパンはここで買ったんだよ、スィロワが」
「そっ、パボーネ家御用達のパン屋」
花屋さんを通り
メーティリアはクスクス笑いながら
「スィロワはこう見えて意外と可愛い趣味があってね」
言って欲しくないこと言われそうなスィロワは、メーティリアの口を押さえる、暴れるメーティリアであった…
パボーネ邸に着くのもあと少し、パボーネ邸が見えてきた。
スィロワはメーティリアの荷物を持ったまま、モモを抱き走って先にパボーネ邸に入って行った。
スィロワは早く帰りたかったんだろう。
残されたメーティリアと姫藍は、パボーネ邸の門の前を掃除をしている用務員のお兄さん声をかけられる。
「メーティリア帰ってきたんだ、お疲れ様」
「本当に疲れた〜あっ!!こっちは新しくパボーネ家で働く姫藍」
メーティリアは用務員のお兄さんに姫藍を紹介した。
「へ〜新人ちゃん、よろしくね」
「宜しくお願いします。もしかしてメーティリアさんの彼氏さんですか?」
メーティリアは笑いながら
「違う違う、同期だよ」
用務員のお兄さんも
「そうそう、同期ってそんな話ししてる場合じゃなくてメーティリア。ポムが寂しがってた、早く会いに行って」
「確かに!!じゃあまたお祭りで」
用務員のお兄さんと離れ遂にパボーネ家に着いた姫藍。
用務員のお兄さんはメーティリアと姫藍がパボーネ邸に入った後に若い男性に話しかけられる。
???「用務員さん、久しぶり」
顔見知りらしい
「あっ、パ……じゃなくてライくん珍しい」
???「さっき話してた人は誰なんだい?」
「あ〜俺の同期と新人ちゃん」
怪しさ満点の若い男は姫藍の後ろ姿を見つめていた
???「新人ちゃんねーじゃあまた」
パボーネ邸の敷地に入った姫藍だが、パボーネ邸が広く姫藍は歩きながら
「町の中にある小さな町があるみたいに広いくて、建物の外壁が宝石みたいにキラキラして華やか〜」
「この建物は前当主が建てたもので、使用人も沢山居るし寮も沢山あるから、その表現当たってるよ。今日は7月7日で国全体のお祭りがあって貴族は自分の敷地内で開催して使用人や家族と楽しむ事が多いかな?だから、いつもより2割増しで飾り付けされてる。疲れたし休みたいけどポムがね……」
「あれっ?………さっき用務員のお兄さんと話してましたね。ポムって誰ですか?」
(昨日も7月7日だったのに今日も…?時差か…)
「会った時に自己紹介させる、まずはここの当主に挨拶しないと」
メーティリアと姫藍はパボーネ邸の迷路のような廊下をひたすら歩き、孔雀の模様をしたステンドグラスの扉があった。
扉の向こうは暖かそうな日が照っていてメーティリアはその扉を開けようとした。その時扉が開いてスィロワとモモが出てきた。
「メーティリア遅い、自分からモモの件はラトナさんに伝えといたから。モモを春花寮に送って自分はポムを迎えに行って先に寮に戻る」
パボーネ家は14歳から働けるので、モモと当主ラトナは話し合い、モモは侍女見習いとして働く事になって東にある春花寮に住むことになった。
パボーネ邸の寮は3つあって
春花寮は東にあり、新人や見習いの人が多い。シェアハウス型でお風呂やトイレは共有
夏海寮は南にあり、中堅や家族がいる人最大4人が暮らせるアパートのような感じ。
冬雪寮は北にあり、主にベテランて1人を好む人が住む。
スィロワとメーティリアは夏海寮に住んでいる
「ポムのお迎え助かる!!お願いします」
(これでビジューに合わなくて済む、良かった…)
「姫藍ちゃんここからは気を引き締めて、パボーネ家で一番偉いラトナ様に挨拶しに行くよ!!」
姫藍は緊張で胸が高鳴る。
読んでいただきありがとうございます。
遂に職場に到着した姫藍、次回は当主への挨拶!!