第29話《記録者の帰還》
1.侵入者アダム
アカデミー南棟、未修復区域。
静まり返った夜の施設に、黒ずくめの男が立っていた。
「変わらないな……この空気」
──アダム・シュバルツ。
元《観測者本部》の記録者にして、レン=リヒトの“創造主”。
廃棄された旧実験室の扉に手を触れながら、アダムは呟いた。
「帰ってきたよ、リヒト」
2.封印されていた記録
地下保管庫──コードロックを解除して、アダムは一枚の記録カードを取り出す。
《EX-099|試作記録兵器:リヒト》
「抹消したつもりか……だが、“記録者”の手から完全に消すことはできない」
彼は端末にカードを挿入し、過去の戦闘データを再現し始める。
モニターに映る少年兵。
殺意、精度、反応速度──どれも人間の限界を超えていた。
「君は“兵器”だった。それは変わらない」
3.セナの葛藤
一方その頃。
学園の図書室で、セナは自らの記録帳を前に悩んでいた。
「私が……彼の記録を消してしまった。それは……救いだったのか?」
自問に答えられぬまま、彼女は気づく。
“誰かが、封印されたはずの記録にアクセスしている”
「……まさか、観測者の残党が……」
彼女は走り出した。レンに、伝えなければならないことがある。
4.“創造主”との対話
アカデミー中庭。レンが訓練を終えた頃、アダムが姿を現す。
「よく育ったな、リヒト」
レンは銃を構えた。
「その名で呼ぶな」
「だが、それが君の“本当の名前”だ」
「違う。俺は──“レン”だ」
二人の間に沈黙が走る。
「じゃあ見せてくれ、“レン”という人間が、どこまで俺の作った兵器に抗えるか」
アダムは右手を掲げ、異様なコード銃を展開した。
5.コード銃 VS 人間の意志
旧訓練場。
人工知能を搭載したコード銃が、レンに襲いかかる。
思考を読み、癖を記録し、反応速度を逆計算する──“記録者の兵器”。
それに対し、レンはかつてないまでに研ぎ澄まされた感覚で応戦する。
「記録なんかに、俺は縛られない!」
コード銃が弾き飛ばされる。
アダムの目に、一瞬だけ驚愕が走った。
6.記録の意味
「お前は、記録を超えた……か」
「違う。超えたんじゃない。俺が選んだ道が、記録に追いつけなかっただけだ」
レンは銃を下ろす。
「もう、お前に用はない」
アダムは、静かに笑った。
「なるほど。やっぱり……“人間”になったな、君は」
そして、その場から姿を消した。
7.再起動
翌朝。
セナが学園の中庭で待っていた。
「アダムが来ていた……“抹消された記録”が再起動されたの」
レンは頷いた。
「もう、俺たちだけの戦いじゃない。記録に抗う者と、記録を利用する者の戦争だ」
彼はゆっくりと立ち上がった。
「──始めよう。人としての未来のために」




