第27話《名前なき戦争》
1.開戦の合図
午前4時。アカデミー上空に、観測者本部の無人戦闘機群が姿を現した。
「識別信号、なし。これは……宣戦布告だ」
イグチがモニターを見つめながら呟く。神堂理事長は即座に決断を下した。
「迎撃態勢、全面発動。全教官、戦闘配置」
「学生は──?」
「前線に出すな。だが、一部の例外は除く」
その“例外”の一人が、九条レンだった。
2.再び戦場へ
屋上にて、レンはセナと別れの挨拶を交わしていた。
「ここからは、俺一人でいい」
「……嘘。あなた、独りで戦うつもりなの?」
「俺は“名前を持たない”兵士だ。誰かに守られる資格なんて、ない」
セナはレンの手を握った。
「でも、私は“記録官”よ。あなたを見届けるのが、私の戦い」
その一言が、レンの中の何かを揺るがせた。
3.激突
地上では、観測者の機動部隊と、アカデミー教官たちが激突していた。
堂嶋教官のライフルが、空からの侵入者を次々と撃ち落としていく。
「俺の記録は、銃弾とともに在る」
戦場は、地と空とを巻き込んだ総力戦となった。
レンはその最中、敵の主力格である“記録処理官”サレムと遭遇する。
「ようやく見つけた、“記録改ざん者”リヒト」
「……なら、ここで記録ごと吹き飛ばしてやる」
両者の間に、火花が散る。
4.記録の意味
戦いの中で、レンはサレムから真実を聞かされる。
「お前の“本名”は、国家機密だ。抹消された記録が示すのは、君が“記録兵器”であること」
「……俺は、兵器じゃない」
「だが、お前の存在そのものが、世界の整合性を乱す。だから記録官が生まれた」
「記録官は、俺を殺すための役割なのか」
「そうだ。そしてお前は、その“殺されるべき物語”を拒否した」
サレムの目が鋭く光る。
「だから、ここで終わる」
5.記録を超えて
だが、サレムの刃がレンに届く直前──
白い光が割り込んだ。
「……させない」
現れたのは、セナだった。
「記録官エル、貴様──!」
セナは記録端末をかざし、サレムの存在自体を“封印”する。
「私は彼の名前を知ってる。だから、記録なんて超えられる」
封印されたサレムが崩れ落ちる。
「レン……私があなたの記録になる」
レンは、黙って頷いた。
6.終戦の夜明け
戦いは終わった。
アカデミーは半壊したが、生き残った者たちが集い、瓦礫の中で再建を誓っていた。
神堂は遠くを見つめながら呟いた。
「記録に抗う戦争──だが、これが始まりに過ぎん」
レンは夜明けの空を見上げながら、心の中でつぶやく。
「……俺の名前を、もう一度探しに行こう」
──次回、第28話《記録なき英雄》




