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傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
26/30

第26話《裏切りと同胞》

1.戦友の銃口


夜の帳が下り、戦場は一瞬の静寂に包まれていた。


格納庫裏の廃ビル群。その屋上に、レンとクラウスが対峙していた。


「変わらないな、お前は……いや、変わったか。あの頃よりも」


クラウスが手にするのは、かつてレンが愛用していたカスタムハンドガン。


「……その銃、まだ持ってたのか」


「お前が置いていった。最期まで“兵士”だった証としてな」


レンは微かに目を細めた。


「何が目的だ。お前が俺を殺す理由はない」


「あるさ、“記録”の正しさを示すために──“リヒト”を殺す」


クラウスはそう言い放ち、トリガーに指をかけた。


2.セナの焦り


その頃、司令室ではセナがレンのモニターから目を離せずにいた。


「レン……駄目、あの人……本気だ」


イグチが背後から声をかける。


「彼は、戦場で育った。理屈じゃない。“生き残るため”に引き金を引く」


「でも、クラウスって人……きっとレンの、大切な──」


「戦場に情は通じん。……だが、通じたなら、それは“未来”だ」


セナは目を閉じて祈るように唇を噛んだ。


「未来……見せて、レン」


3.破られた信頼


一方、アカデミーの研究棟。


観測者部隊の進行経路が、まるで“誰かに案内されている”ようだった。


神堂の隣で、イグチが唸る。


「これは──内部から情報が漏れている」


「内通者がいるな」


その瞬間、警報が鳴った。


「医療ブロックで爆発。警備主任、通信応答なし!」


神堂がすぐに命じた。


「全棟封鎖。内部工作を開始せよ」


誰が味方で、誰が敵か。

アカデミー内部で、疑心暗鬼が広がっていく。


4.戦場の選択


再び屋上──レンとクラウスの撃ち合いが始まる。


銃声は最小限。二人はまるでお互いの動きを知り尽くしているかのように回避し合う。


「何も変わっちゃいない。お前も、俺も!」


「違う! 俺はもう“殺すだけの兵士”じゃない!」


レンが叫ぶ。クラウスが動きを止めた。


「……そうか。なら、証明してみろ。“誰かを守る”っていう、お前の選択を」


クラウスが銃を捨てた。


「次に会うときは……敵同士だ」


そう言い残し、クラウスは闇に消えた。


5.密告


夜が明ける。


会議室に一人の生徒が呼び出された。


「君が……観測者と通じていたと、報告があった」


それは、レンと同じクラスの生徒、ミナトだった。


「何か誤解じゃ──」


だが机に置かれた通信機と、残されたメッセージログがすべてを証明していた。


「どうして……どうしてこんなことを」


「“本当の正義”を教えたかったんだよ。あいつらは、間違ってる」


ミナトは静かに語った。


6.新たな旗


その夜、レンはセナのいる部屋を訪れる。


「……俺は、この世界にとって“正義”じゃない」


「わかってる。でも、私にとっては“味方”だよ」


レンは言葉を失った。


「これから先、もっとひどい戦いになるかもしれない。それでも……ここにいるって、決めたから」


レンはゆっくりと頷く。


「なら、俺は──“ここ”を守る」


7.決起


教官棟に再び灯りが点る。


イグチが訓示を叫ぶ。


「この戦いは、“記録”に抗う戦争だ! だが──俺たちは“意志”で戦う!」


教官、生徒、全員が応じる。


「観測者を倒し、未来を取り戻す!」


レンが拳を握る。


「俺たちは“生きて”証明する──名前も、過去も、全部、自分で選べるって!」


──次回、第27話《名前のない戦争》。



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