第25話《反撃の狼煙》
1.開戦前夜
ヨルを退けた夜から、まだ24時間も経っていなかった。
だが、アカデミー本部ではすでに“戦時モード”が敷かれていた。
神堂蓮司は、地下戦略会議室に全教官を集める。
「観測者の直接介入が確認された。もはや、ここは“戦場”と見なす」
誰も口を開かなかった。
静かな怒りと緊張が、空間を支配していた。
「この戦いは──“記録を取り戻す戦争”だ」
神堂の言葉に、イグチがうなずく。
「レンは、その最前線に立っている。だからこそ、我々は……奴らに奪わせない」
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2.分断工作
その頃、観測者側では異変が起きていた。
「《ヨル》が消失?」
観測者評議会。
中央機構に直属する“記録監理官”たちが、ざわついていた。
「想定外の“記録更新”……記録官ELの干渉か?」
「やはり、記録官は危険すぎる」
「対策部隊“灰”を使え。アカデミーと交戦を開始する」
「だが、情報操作は必要だ。日本国内での作戦行動を隠蔽せよ」
「構わん。記録はどうとでも“書き換え”られる」
闇の決定が、静かに下された。
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3.レンの覚悟
夜明け前。
屋上で風に吹かれていたレンの隣に、セナが現れる。
「……もう、戻れないね」
「最初から戻る場所なんて、無かった」
「それでも、ここがあるじゃない」
レンは目を伏せ、微かに笑う。
「……守るって、こういうことかもな」
「うん」
静かな、けれど強い絆がそこにあった。
「戦うよ。あいつらの“記録”が正義を名乗るなら──俺は、間違ってていい」
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4.出撃準備
本部地下・格納庫。
教官の堂嶋とイグチが、傭兵仕様の戦闘装備を調整していた。
「お前ら生徒も出すのか?」
「最低限の自衛装備は与える。だが、戦うのは我々だ」
「……レンは?」
「奴は最前線だ。奴の存在そのものが“宣戦布告”なんだからな」
その言葉の重みを、教官たちは痛感していた。
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5.襲撃の予兆
午後。
市街地近郊に、未登録のヘリ部隊が接近。
「観測者軍──“灰の部隊”来たぞ!」
アカデミー外周センサーが反応。
「全生徒、避難シェルターへ! 教官は防衛線を展開!」
緊急放送が鳴り響く。
その中で、レンは静かにライフルを構えていた。
「……始まるぞ」
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6.交戦
観測者部隊が降下。
装備は先進的で、人間の反応速度を超えていた。
だが、アカデミーの教官陣も負けてはいなかった。
堂嶋が狙撃。
イグチが正面からの突破を阻む。
そしてレンは、孤立した観測兵を瞬時に制圧していく。
「やっぱり、お前は──“兵器”なんかじゃない」
セナのモニター越しに、そう呟いた者がいた。
「守ってるんだ、人を」
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7.灰の将校
敵部隊の中心。
異様なオーラを纏う将校がいた。
「コードネーム《クラウス》。反逆因子“リヒト”の抹殺に来た」
──レンのかつての“仲間”だった男。
クラウスは静かにヘルメットを外す。
「久しぶりだな、リヒト。いや──今は“レン”か」
レンの顔から、わずかに色が失せた。
「……お前が、来るとは思ってなかった」
「お前を“終わらせる”のが、俺の役目になったんだよ」
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8.夜明けの前
戦いは、まだ終わらない。
だが、アカデミーの地に“意志”が根付いていた。
「記録に抗う、ただの人間たち」
その存在が、世界の“観測”を揺さぶり始めていた。
──次回、《裏切りと同胞》。




