表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
23/30

第23話《記録を殺す者》

1.揺れる中庭


日曜の午後、アカデミーの中庭は静かだった。

樹々の葉が揺れ、噴水の音だけが響いている。


そこに立つ二人の影──


九条レンと、クラウス・ハルト。


「ようやく会えたな、リヒト」


クラウスは笑っていた。

懐かしさと、皮肉と、哀しみが混じった笑みだった。


レンは答えない。

だが、その拳は、わずかに震えていた。


「君が“記録を殺した男”だってこと、あいつはまだ知らない」


「……俺は、記録なんて知らない」


「そうやって逃げ続けてたな。名前も、過去も、全部」


クラウスの声には、かつて戦場を共に駆け抜けた者だけが持つ熱があった。



2.記録官の選択


セナは、地下資料室の端末の前で立ち尽くしていた。


記録官・エルとしての意識が目覚めつつある中で、彼女はひとつの記録を再生する。


──記録名《V-09-L》


それは、リヒト──九条レンが、ある村を“消した”記録。


子供だった。

震える手で、銃を撃っていた。


その映像の終わり、誰かの声が入っていた。


「この子は、誰よりも生きたいと願っただけだ」


セナは涙を流していた。


「リヒト……あなた、記録を守ってたんだ」



3.殺意の試練


中庭。

クラウスが銃を抜いた。


「観測者たちは君を恐れてる。なぜだかわかるか?」


「……俺が、歪んでるからだろ」


「違う。君は、“記録に抗った”唯一の存在だからだ」


次の瞬間、銃声。


レンは避けない。

代わりに、風を裂くように一歩踏み込んだ。


──銃弾を掴むような軌道で、クラウスの手首を打ち払う。


「……俺はもう、誰も殺したくない」


クラウスは満足そうに笑った。


「その言葉を……ずっと待ってた」



4.再会


その夜、屋上にて。

セナはレンに声をかけた。


「あなたの記録、全部見たわ」


レンは沈黙する。


「でも──あなたが人を殺しても、私の中には“殺されなかった記録”もあった」


「……俺は、もう誰かの“記録”になりたくない」


セナは微笑んだ。


「だったら、私が“あなたの記録官”になる」


「……記録しない、って意味か?」


「いいえ。あなたがあなたを、忘れそうになったときのために」



5.決戦の予兆


翌朝。

クラウスは姿を消していた。


その代わり、アカデミーに届いたのは観測者本部からの通達だった。


《Project VESSEL》、本格始動。


対象──九条レン。

指令──抹殺。


そして、新たな“抹殺者”が派遣されるという報。


彼の名は、ヨル。


“記録を殺す者”の最後の刺客だった。


物語は、最終局面へと向かい始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ