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傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
20/30

第20話《青と灰の狭間》

1.残響の記憶


任務からの帰還から三日。

セナは寮の自室で静かに目を閉じていた。


──夢の中。


廃墟のような空間で、自分ではない自分が、銃を構えていた。


「動くな」

「……やめて、撃たないで」


声が、誰かのものと重なって聞こえる。


──パァン。


銃声とともに、世界が割れる。


セナは跳ね起きた。

額には汗。

そして、心臓が早鐘のように打っていた。


(……私、あれ、知ってる)

(あの子……“私”だった?)


ベッドサイドには、保護者欄に「九条レン」と書かれた登録端末。


「……行かなきゃ」



2.レンの疑問


同じ頃、レンは訓練場の一角にいた。

日課の射撃調整をしながら、ふと銃口を見つめる。


(あれは……選べた選択だったのか?)


殺さなかった。

だが、殺せば全てが終わっていた。

あの観測者は、生きている。


(いつか、また誰かが傷つくかもしれない)


引き金にかかる指先。


その瞬間、背後から声がした。


「……おはよう」


振り返ると、セナがそこにいた。


「少し……話せる?」


レンは頷いた。



3.過去と向き合う


セナとレンは中庭のベンチに腰掛けた。

木漏れ日が、静かに落ちる。


「夢を見たの。多分、昔の記憶」


セナはそう告げた。


「誰かに銃を向けて、撃とうとしてた。でも、その相手は──私だった」


レンは黙って聞いていた。


「もう一人の“私”が、何かを守ろうとしていた気がする。だけど……わからないの」


「じゃあ、わかるまで探せばいい」


レンの言葉は、単純で力強かった。


「誰に何をされたか、どう生きてきたか。それが自分を形作る」


セナは、わずかに目を伏せた。


「……ありがとう」



4.灰色の再会


その日の夕方。


本部棟裏の搬入口に、一人の青年が姿を現した。


灰色の軍服、銀のバッジ。


イグチが迎えに出る。


「久しいな、クラウス・ハルト」


「こちらこそ。アカデミーには……6年ぶりか」


「国家統合軍──灰の部隊にいたと聞いているが、今さら戻ってどうする」


クラウスは微笑んだ。


「“あいつ”がここにいると聞いた」


「九条か」


「──いや、“リヒト”だ」


イグチの目が細くなる。


「忘れた方が、幸せな名前だ」


「だとしても。あいつがどこまで変わったのか、確かめに来た」



5.観測者の動き


一方その頃、観測者たちは別の視点から事態を注視していた。


「灰の部隊が動いた」

「接触は避けられない」

「ならば──“連結”を開始する」


幾重にも重なった声が、廃棄ビルの中に響く。


その中央、浮かぶ無数の端末と映像。

そこには、レンの顔が鮮明に映っていた。


「“選び続ける者”は、どこに行き着くのか」


「この世界は、記録と選択の連鎖で出来ている」


「いずれ、彼は“記録の改ざん者”として──世界と対峙することになる」



6.次なる予兆


夜。寮の一室で、レンは久々に深く眠っていた。


だが、夢の中。


──また、あの戦場。

──また、あの名前。


「リヒト──!」


目を覚ました彼の目には、揺れる光と、もう一人の“自分”が映っていた。


(俺は──誰なんだ)

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