表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
19/30

第19話《彼の選択》

1.再びの呼び出し


翌朝、レンは指導教官イグチに呼び出された。

場所は、本部棟地下の戦術研究室──普段は使用されていない極秘の区画だ。


「来たか、九条」


「……ここで何を?」


「任務だ。模擬ではない、本物の任務だ」


レンはわずかに表情を動かす。


「相手は?」


イグチは無言でタブレットを渡す。

映っていたのは、街中の監視映像。

──セナが誰かに連れ去られる瞬間だった。


「“実験”を仕掛けてきたな、観測者どもが」


「……なんで、彼女を?」


「“お前の選択”を測っている。国家も、あの連中も」


レンは無言でタブレットを見つめる。


その目が、鋼のように静かに冷えていった。



2.風見の警告


アカデミー近郊の監視センター。


風見は神堂に詰め寄っていた。


「理事長──これは明らかな越権行為です。未成年を“囮”に使うなど!」


「彼女は“記録改変体”。観測対象であり、同時に引き金でもある」


「九条レンが“超える”瞬間を仕掛けたというわけですか」


神堂は一度だけ頷いた。


「お前も見ただろう。あの少年には“選ばせる”しかない。

何を守り、何を壊すかを」


風見は唇を噛んだ。


「……彼が“人間”のまま帰ってくる保証はあるのか」


神堂の答えは、静かな沈黙だった。



3.選ばされた戦場


誘拐されたセナは、廃棄された実験場に拘束されていた。


暗闇の中、仮面の観測者が告げる。


「君の存在が“彼”を定義する。今から、その確認を行う」


──爆音とともに、建物の一角が吹き飛ぶ。


「……やっぱり、いたか」


瓦礫の中から、レンが現れる。


その背には武装装置。

そして、その手には──実弾仕様のカスタムM1911。


「返してもらおうか、俺の“大切なもの”を」


観測者は軽く笑った。


「自分のためか? それとも、彼女のためか?」


「関係ない。ただ──壊されたくないものがある、それだけだ」


その瞬間、引き金が引かれる。



4.抑えられた殺意


レンは、敵の急所を外して撃った。


銃弾は肩を貫き、観測者の仮面が砕ける。


「……甘いな。殺しに来たんじゃないのか」


「“殺せば勝ち”じゃない。俺は、俺のやり方で戦う」


セナを拘束していた機械装置を破壊し、レンは彼女を抱き起こす。


「……無事でよかった」


彼女は、まだ目を覚まさない。

だが、その胸は静かに上下している。


“あの時と同じだ”


──昔、炎の中から少女を救った。

──同じように、何も奪わせたくなかった。


(俺は……)


「もう誰も、失いたくない」



5.帰還と報告


任務から戻ったレンは、報告書の提出を求められた。


教官室で、それを受け取ったのは風見だった。


「……一人で、やったのか?」


「はい」


「殺しは?」


「していません」


「理由は?」


「殺さなくても、“守れた”からです」


風見は少しだけ口角を上げた。


「それなら──君は、まだ人間だ」



6.彼の選択


夜、レンは屋上にいた。


風が吹いている。


空を見上げて、レンはひとり呟いた。


「俺が何を選んだのかは、まだわからない。

でも、守りたいと思ったことだけは──嘘じゃない」


その時、背後から小さな声がした。


「……ありがとう」


振り返れば、そこにセナがいた。


「迎えに来てくれて、ありがとう」


彼女の笑顔が、すべてを救った気がした。


レンは目を伏せ、力なく笑った。


(もう一度、選んでよかったと思えるなら……)


「明日も、生きよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ