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傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
18/30

第18話《双子の夜》

1.仮面の裏


市街訓練区を撤収した仮面の人物は、監視棟の奥で装束を脱いだ。

姿を現したのは、切れ長の目を持つ若い女だった。


「……やはり“目覚め”つつある」


彼女の声は、冷静でありながら、どこか哀しみに濡れていた。


部屋の隅、無線端末が点滅する。


『次の観測は“彼女”のほうだ。コード名《セナ=エル》──“対”が揃えば、器は完成する』


女はゆっくりと、血のついた手袋を外した。


「双子の夜、ね……」



2.目覚め


セナは医務室で目を覚ました。

しかし、レンと再会したとき──その瞳の色が違っていた。


「君……誰だ?」


「コードネーム《エル》。君とは以前、会っている」


その口調は、今までのセナとは明らかに異なる。

レンは一瞬、視線を逸らしかけたが、すぐに睨み返す。


「何者だ、お前は」


「“セナ”の人格は一時的に眠っている。私は、観測者によって造られた片割れ。もう一人の彼女──

記録に干渉する存在」


レンの中で、かすかな記憶が疼く。


──あの砂漠の夜。

──命令に背いて救った少女。

──瞳の奥で泣いていた“誰か”。


(まさか……)



3.隠された過去


神堂の執務室。


風見監査官が映像データを持ち込んでいた。


「理事長。コード《セナ=エル》の存在、国家記録には存在しません」


「当然だ。“記録に干渉する”存在を、公にはできん」


「……レンと彼女が“同時期”に中東戦域で接触していた記録も」


神堂は無言で頷いた。


「“再会”させるために、我々は舞台を用意した。それだけの話だ」



4.実験体の邂逅


医務棟の個室。


レンは椅子に座ったまま、ベッドのセナ(エル)と向き合っていた。


「君は……覚えてるのか?あの時、俺がお前を──」


「救ってくれた。あれが、私にとって最初の“記録の破綻”だった」


エルはうっすらと微笑んだ。

それは、どこかセナにも似ていた。


「記録にない行動が、私の中に“心”を生んだ。だから、今こうしてあなたに会いに来た」


「セナは──」


「眠ってるだけ。でも、すぐ戻る。あなたが、彼女を呼べば」


レンは息をのんだ。

まるで告白のようなその言葉に、胸の奥が妙に熱くなる。



5.眼差し


数時間後、再び目を覚ましたセナは、普段どおりの彼女に戻っていた。

ただ、その目にはどこか“名残”のようなものがあった。


「……レンくん、私、なんか変な夢を見た気がする」


「……そうか」


彼は微笑みながらも、その眼差しの奥で何かを確かめていた。


“同じ瞳だ”



6.観測者たちの会議


その夜。


観測者たちの会議が開かれていた。


「器の覚醒、第二段階に入った。人格統合は進行中」


「次の段階では、セナを“囮”にしてレンの最深部に干渉する」


「このまま進めば、《双子の器》は完成する」


誰かが言った。


「その時、少年は“人”をやめるだろう」



7.雨音の中で


レンは夜の校庭で一人、ベンチに座っていた。


(あいつは、本当に……)


自分が何を守ろうとしているのか、まだわからない。

だが、確かに今、何かを守りたいと思っている自分がいる。


それが、希望の始まりかもしれなかった。

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